文=編集部 / 撮影=阿部吉泰

旬グルメ弾丸トラベル! 氷見寒ブリを食べ尽くす

おいしいドライブ・北陸富山氷見寒ブリ編

氷見の寒ブリをおなかいっぱい食べてみたい……。以前取材で氷見の漁港に行ったときは夏だったので叶わず、それは密かな夢だった。毎年冬になると氷見漁港では「ひみ寒ぶり」宣言が出され、脂がのり、まるまると太った寒ブリが市場へ出回る。今シーズンはいつになるのだろう……。寒ブリ宣言を待ちながら、居ても立ってもいられず氷見市内にあるブリコース料理が食べられる「割烹 秀月」を予約した。 令和6年能登半島地震により被害を受けられました皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 一日も早く復興されますよう心からお祈り申し上げます。

目次
  • この取材は2023年12月末に行いました。

氷見寒ブリが食べたい! 北陸新幹線はくたかに乗って新高岡駅へ

高岡名物の高岡大仏

高岡名物の高岡大仏

朝8時すこし前、東京駅発の北陸新幹線に乗ってJR新高岡駅へと向かう。ブリのためなら早起きだって苦ではない。せっかく富山まで来たので、少し土地勘のある高岡と氷見を観光してみることにしよう。新高岡駅からレンタカーで市内を10分ほど走ると、町並みの中に忽然と青い大仏様が姿を現した。高岡大仏は、「鋳物の町高岡」の鋳造技術の粋を結集して生まれた街のシンボルだ。高さ16mのシュッとしたお顔の大仏様を見上げてお参りをした。

周囲を見回すと、境内の道を挟んだ向かい側にカフェができているではないか! キュートな笑顔の大仏カステラのポスターに誘われ、1つ購入。ベビーカステラの中におみくじが付いていて、2つに割ってみると「大仏吉」(大吉のさらに上)の文字が出た。不意打ちのラッキーに気分はほっこり。高岡銅器の焼き型で焼いたほかほかのカステラは、優しい甘みで幸せの味がした。

大仏カステラ

大仏の隣にあるカフェ「amida coffee」で販売する高岡大仏カステラつきおみくじ(100円)。カステラを割ると、おみくじが出てくる ●amida coffee/富山県 高岡市定塚町1238 ☏ 0766-75-8377 https://amidacoffee.com/

高岡の名物スイーツを逃さずゲットせよ!

高岡ラムネは季節ごとのおめでたいモチーフの木型に、富山産のコシヒカリと国産の素材を詰めて作られたラムネ菓子

高岡ラムネは季節ごとのおめでたいモチーフの木型に、富山産のコシヒカリと国産の素材を詰めて作られたラムネ菓子。「冬けしき」国産柚子味(540円)●大野屋木舟町本店/高岡市木舟町12 ☏0766-25-0215 http://ohno-ya.jp/

高岡は加賀藩2代目当主、前田利長が築いた高岡城の城下町として発展し、歴史と伝統を感じさせる街並みと食文化が守り、残されている。土蔵造りの立派な屋敷が立ち並ぶ「山町筋」の一角にある和菓子店、大野屋を訪ねた。天保9(1838)年創業の大野屋は、180年以上の歴史を持つ老舗だ。9代目店主の娘である大野 悠さんが友人とともに共同開発した高岡ラムネは、高岡土産の新定番として好評を博している。和菓子職人の技と現代的なセンスが融合して生まれた高岡ラムネは、持ち運びしやすいサイズで手土産にもぴったり。駅構内の売店でも販売しているので、チェック!

いちごのタルトとピーカンナッツのタルト

いちごのタルト(540円)とピーカンナッツのタルト(570円)●お菓子deguchi/高岡市宮田町14-1 ☏0766-60-8245

もう一軒行きたかったのは「お菓子deguchi」。週に2日だけ開店するケーキと焼き菓子のお店だ。古民家を改装した雰囲気のある店内に足を踏み入れ、ショーケースの中を覗くと本日分のケーキはすでにまばらに残るだけ。開店するとすぐにお客さんが次々にやってきて、1時間も経つ頃には売り切れてしまうものもあるのだとか。季節ごと、月ごとにラインナップが変わるので、いつ来ても違うケーキを選ぶ楽しみがある。近所にあったら通ってしまいそうだ。

富山の絶景を見るなら雨晴海岸へ行くべし

立山連峰と女岩が望める雨晴海岸

雨晴海岸。目の前には立山連峰と女岩が望める

高岡市街地を後にして、富山随一の景勝地、雨晴(あまはらし)海岸へとたどり着いた。目の前に広がる雨晴海岸と、雪化粧の標高3,000m級の立山連峰が生み出す絶景を眺める時間は、実に贅沢だ。雨晴海岸の向かい側にある「道の駅 雨晴」で休憩をする。雨晴という名前は、文治3年(1187年)、源義経の一行が奥州平泉を目指して頼朝の追っ手から逃れる途中、海岸の岩陰でにわか雨が止むのを待ったという伝説が起源とされている。この景色を見ていられるのなら、雨が止むのをじっくりと待つのも悪くない。

道の駅雨晴の展望デッキ

●道の駅雨晴/高岡市太田24-74 ☏0766-53-5661 https://michinoeki-amaharashi.jp/

獲れたてのブリやカニがずらりと並ぶひみ番屋街へ

ブリコースの予約まで時間があったので、氷見のお土産を探しに「氷見漁港場外市場ひみ番屋街」へ立ち寄ることにした。鮮魚直売所、干物やかまぼこなどの加工品がそろう土産物店、回転寿司や氷見ラーメン、氷見うどんのレストランもあり、ここへ来れば氷見のおいしいものがひと通り食べられる。鮮魚店の店先に並んだ獲れたてのブリを見て、その大きさとお値段にびっくりした! 実物のブリを見るとおなかが空いてくるものだ。お土産のかまぼこを手早く選んで購入し、割烹 秀月へと車を走らせた。

ひみ番屋街の鮮魚店

ひみ番屋街の鮮魚店で売られていた、氷見で水揚げされたブリ●氷見漁港場外市場ひみ番屋街/氷見市北大町25-5 ☏0766-72-3400 https://himi-banya.jp/

氷見のブリを丸ごと食べられるブリコースに大感激

寒ブリコース

割烹 秀月のブリづくしコース。ブリを堪能できる11品で11,000円(ブリのサイズにより価格は変動あり)

いよいよ秀月のブリコースのおでまし。前菜からブリのごまだれ漬け、かぶら寿司、ブリの白子、ブリの塩辛などの珍味、寒ブリの刺身、ブリ大根、焼きブリ、ブリしゃぶ、寿司、あら汁などなど、氷見漁港で水揚げされた最高級のブリを余すところなく料理したコースだ。ブリの大きさによってコースの値段が変わり、この日は10㎏以上の大きなブリを使ったとのこと。1人前でこのボリューム! テーブルにのりきらない。

前菜の「かぶら寿司」は北陸地方の伝統料理だという。「かぶら寿司は、かぶらに切り込みを入れてブリを挟んで発酵させた”なれずし”です。ブリは、昔はお殿様に献上するような高級品で、庶民は滅多に食べられませんでした。かぶら寿司は、かぶらに貴重なブリを挟んでお殿様に遠慮しながら隠して食べるという富山県民の奥ゆかしさが生み出した料理と言われています」とご主人の水口秀治さん。

寒ブリコースによろこぶ女性

「おいしそう!」と思わず歓声がこぼれる豪華なコース

ブリをしゃぶしゃぶする女性

昆布出汁の鍋でさっとくぐらせ、身の色がほんのり変わったら食べる

ブリしゃぶ用の刺身

10㎏以上の大きなブリを厳選して提供している

ブリのかま焼き

脂ののった立派なブリのかま焼き。身がぎっしりつまっている

出汁が煮えてきたのでブリしゃぶに箸を進める。ひと切れ15㎝くらいある特大サイズのブリの切り身を昆布出汁に浸してしゃぶしゃぶすると、溶け出したブリの脂がキラキラと細かな粒となって煮立った出汁の中に浮かぶ。半生状態のブリに野菜を挟み、ポン酢にくぐらせてから口へと運ぶ。弾力のある食感と脂の甘みが口の中で混ざり合ってとろける。

「寒ぶり宣言とは、富山湾の定置網にブリが数千匹入り、いつでも出荷できる状態が整ったときにブリの出荷を全国に向けて宣伝するために出しているものなのです。実際は11月初旬からこの地域の市場にブリは出回っていて、宣言前後で味、質が劣るわけではありません。富山湾で獲れるブリが特別においしいのは、『天然のいけす』と呼ばれる湾の地形的な特徴とブリの海遊ルートのため。ブリは九州の暖かい海で生まれ、対馬海流に乗って日本海を北海道まで北上し、産卵のため再び南下して故郷の海を目指します。氷見はちょうど産卵経路の途中にあたるので、長旅で身が引き締まり、餌をたっぷり食べて脂がのりきった状態のブリが獲れるのです」。

秀月の水口秀治さん

とやま食の匠に認定された店主の水口秀治さん。料理人として50年、富山の伝統料理を作り続けている

秀月外観

●割烹 秀月/氷見市幸町9⁻78 ☏0766-74-5941 https://www.shugetsu.jp/

小骨についた身まで残さずいただき寒ブリコースを完食した。どのブリ料理も甲乙つけがたくてとてもおいしく、一年分のブリを食べ尽くしたような満足感に包まれた。氷見寒ブリを食べ尽くす夢はついに叶ったのだ。

お店を出るとすっかりと日が暮れて、ブリのために1日がかりで氷見までやってきた現実にふと我に返る。日帰りじゃなくて、このまま温泉に泊まりたい……が、それは次の楽しみにとっておこう。

「また来るよ」と北陸新幹線の車窓から遠くなる富山の町並みを見つめながらそっと呟いて、これからもブリを推し続ける決意を新たにした。

この冬食べてみたいご当地鍋

熱々の鍋料理がおいしい季節、食いしん坊編集Tが次の旬グルメ弾丸トラベルで狙うご当地鍋を独断でピックアップ! おいしいもののためなら、全国どこでも駆けつけます。

あんこう鍋(茨城県郷土料理)

あんこう鍋(茨城県郷土料理)

せり鍋(宮城県郷土料理)

せり鍋(宮城県郷土料理)

寒鱈のみぞれ鍋(山形県郷土料理)

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カキの土手鍋(広島県郷土料理)

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旬グルメトラベル・氷見寒ブリ立ち寄りスポットガイド

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