スーパーカーより大衆車が好き! 1人で4台のダイハツ・シャレードを所有する理由
ちょっとレトロなガレージ探訪記/1977年に登場した初代ダイハツ・シャレード。4世代を所有するオーナーの旧車ライフをのぞいてみました昭和の時代に生まれた旧車をピックアップする「ちょっとレトロなガレージ探訪記」。当時の流行が反映されたデザインや装備類の他、トリビア的な要素も掘り下げつつ、オーナーこだわりのカーライフを紹介するコーナーです。
第7回目となる今回は、1970年代末期に起きたリッターカー(排気量1000ccのコンパクトカー)ブームの火付け役となったダイハツ・シャレードを所有する、徳島県のM・Nさんのガレージにお邪魔しました。
実用車が好きになったきっかけは
幼少期、母親の愛車だったシャレード
ひとくちにクルマ好きと言ってもスポーツカーやオフロード4駆、さらには大型トラックやバスなど、興味の対象は十人十色。そんななか、今回の主人公である徳島県在住のM・Nさんがハマっているのは、1977年11月に発売されたダイハツの小型車、シャレード。
「子供の頃、母親が乗っていたホンダ・ライフが車検切れになるタイミングで、シャレードがやって来ました。フロントグリルが初期の横線から四角い開口部になった中期型でしたが、買ってから3か月後にヘッドライトが角型に変わった後期型が発売されたのを見て、“角型にすればよかったのに!”とブツブツ文句を言っていたことを覚えています。自分がクルマ好きになったきっかけはよくわかりませんが、子供ってクルマとか飛行機とか、乗り物が好きじゃないですか。あの感覚が今もずっと続いている感じです」
それから時は流れ、M・Nさんも自動車運転免許を取得できる年齢に。取得後は嬉しさのあまり、当時家族で共有していたダイハツ・ミラを車庫から引っ張り出しては、夜な夜なドライブに出掛けていたとのこと。しかし若気の至りともいうべきか、運転の楽しさについ夢中になり、独り相撲の物損事故でミラは廃車に。幸い大きなけがはなかったものの、父親からは当面の運転禁止令が下される。
「とはいえ、仕事上クルマが必要になったので、父と共同所有という形でマイカーを探すこととなりました。最初はカリーナやレガシィといった1.6〜2リッタークラスが候補に上がりましたが、付き合いのあるダイハツのセールスさんから“今月の成績が厳しいので何とか助けてもらえないか”と連絡があり、4代目のシャレードを買うことになりました。母が乗っていた型と比べると車体が随分大柄になっていたけど、子供の頃から馴染みのある車名だったし、ミラを潰してしまった手前、黙って父の方針に従いました」
ちなみに購入した車両は、最廉価グレードのCS。不思議なことにM・Nさんはクルマ好きではあるものの、20代当時からハイパワーエンジンを搭載したスポーツカーや豪華装備の高級車には関心はなく、目が行くのはもっぱら大衆車クラスのスタンダードグレードだったという。初めての愛車となったシャレードはそれなりに気に入っていたが結婚や2人の子供の誕生など、生活環境の変化とともに所有車も他メーカーのワゴンやミニバンに移行。シャレードの名はいつしかM・Nさんの意識から消え去っていった。
M・Nさんの幼少期の写真。表情がどこか不機嫌そうに見えるのは、購入してすぐに角型ライトの後期型が発売されたためか? 左上の女性はお母様。紺色のスーツがお洒落です
20年余りのブランクを経て、焼け木杭に火が!
ふと気づけば4台のシャレードに囲まれた生活に
まさにシャレードのミニ博物館的な光景。日頃、各車は別々の場所に分散保管されているため、M・Nさん自身も全車が一堂に会した場面を見るのは久しぶりとのこと。複数台所有と聞くと「贅沢」と思う方もいるかも知れないが、M・Nさんは普通の会社員。メンテナンスはできるだけ自分で行い、パーツ類についてもシャレード仲間同士で融通し合うなど、おサイフに無理のない範囲での旧車ライフを送っている(撮影協力=観光乗馬クラブコルツ)
※観光乗馬クラブコルツの敷地内で許可の上撮影を行っています
ところが、そこから10年近い時間が経過したある日、ネットの中古車情報を何げなく眺めていると、一台のクルマが目に止まる。そのクルマとは言うまでもなく、初代シャレード。しかもかつてM・Nさんが母親に“角型ライトが出るまで待てばよかったのに!”と、泣いてせがんだ後期モデルだった。
「忘れていたつもりでも、心のどこかで初代シャレードの面影がチラついていたんです。画像を何度も見ているうちに懐かしいなぁ、という気持ちだけでは収まらず、できれば手に入れたいと思うようになりました。でもクルマ1台を増車するにはそれなりにお金がかかりますよネ。無理して買っても保管場所に困るし、駐車場を借りるにも雨ざらしだとクルマが傷んでしまう。何より、嫁サンが許してくれないだろうと、ネットをのぞいてはため息を繰り返す毎日でした」
そんなM・Nさんに対し、“ため息ばかりついてないで、試しに電話だけでもしてみれば”と、背中を押したのは他ならぬ奥様。100%反対されるだろうと思い込んでいたなかでの予期せぬ言葉に気持ちのスイッチが入ったM・Nさんは、早速関東の業者に連絡したところ、“まだ在庫しています”との回答が。
さらに詳しく話を聞くと整備記録もしっかり残され、前オーナーが長年手をかけていたクルマであることが判明し、購入を決断。こうしてほぼ30年ぶりに幼少期からの憧れを現実のものとしたM・Nさん。
シャレードの購入がきっかけとなり、ほぼ同時期に一軒家への引っ越しも決まり、めでたく屋根付きの駐車スペースも確保。その後はSNSやオフ会イベントなどを通じたシャレード仲間との交流も広がりを見せ、2023年に3代目モデルを、今年に入ってからは4代目のセダン版ソシアルに加え、2代目モデルの後期型を増車。ふと気づけば4世代のシャレードをそろえた一人博物館状態に。
「シャレードの出物があるヨ、という話を聞くと実車が見たくなるし、見るとやっぱり欲しくなっちゃうんです(笑)。置き場探しは大変ですが、このクルマがきっかけで知り合いになった方々から納屋や倉庫を貸していただけているおかげで、何とか現在の態勢が維持できています」
車体の四隅ギリギリに配置された12インチタイヤやスパッと切り落とされたテールエンドなど、約3.5mという全長内に最大限の居住空間を確保するための工夫が各所に見受けられるシャレードのフォルム。初代モデルの発売当初の広告コピーは「結晶。5㎡カー。」と、省スペース性を前面にアピールしていた
3代目モデルの保管場所は友人の納屋。左隣の耕運機と右側の壁との間隔は、コンパクトなシャレードの車体サイズでもギリギリ。「それでも置かせていただけるだけで感謝です。初代は自宅のカーポート内に部品取り車と一緒に置いています。嫁サンのクルマは雨ざらしなので、いつも申し訳ないと思っています」とM・Nさん
多少の小キズやヤレは気にせず
実用車とは実用車らしい付き合い方を
今回撮影場所として協力をいただいた徳島県那賀郡那賀町の乗馬クラブコルツの駐車場の一角にずらりと並んだ4台のシャレード。各車を眺めているとデザインやボディーサイズ、装備類など、1980年代から90年代にかけてのトレンドの変化が見て取れるが、この中でM・Nさんにとって一番のお気に入りは、やはり初代モデル。
「軽自動車より余裕があって、大排気量車のような維持費の負担が少ない1000ccという排気量設定が絶妙ですよね。日産マーチとかスバル・ジャスティ、ドミンゴなど、この時代に流行(はや)ったリッターカーはどれも好きです。バブル期には軽自動車から何から豪華志向が進んで、多くのメーカーがリッターカーに力を入れなくなったけど、シャレードは3代目まで1000ccエンジンを作り続けました。この必要十分なシンプルさこそ、自分が惹(ひ)かれている部分だと思います」
柔和な表情でシャレードへの思い入れを語るM・Nさんだが、写真からもわかるようにワインレッドの車体(純正色名:ファンシーワインメタリック)はお世辞にもピカピカとは言い難い状態。余計なお世話とは思いながらも、今後どこかのタイミングで全塗装などレストア的な作業を行う予定はないものか尋ねたところ、“特にないです”との返答が。
「う〜ん、どうなんでしょう。キレイに塗装し直して何か良くなることがあれば考えますが、私は特に必要性を感じていません。塗装のヤレや小キズは40年以上生き抜いてきた年輪みたいなモノだし、そもそもシャレードは日常の足として使ってナンボの実用車。あまり過保護になり過ぎない程度で、このままのんびりマイペースで楽しみたいと思っています」
ダイハツ・シャレードのトリビア的ポイント
【其の壱】
量産乗用車で世界初の1000cc 4サイクル3気筒エンジンを搭載
今日では軽自動車やコンパクトクラスの多くの車両に採用されている3気筒というシリンダー数設定を、量産乗用車として初めて実用化した初代シャレード。振動対策のためのバランスシャフト、軽量なアルミ合金製シリンダーヘッド、独自の燃焼室形状による排出ガスの低減など数々の新機構が盛り込まれていた。ちなみに広報資料によると、車体やエンジン部分に関する特許・実用新案の出願件数は300件以上に上るという。
【其の弐】
販売期間はわずか1年半だった、前期型シャレード・ソシアル
年式が新しめなこともあり(それでも31年落ちだが)、外観は他の3車と比べて一気に現代的にリファインされた印象を受けるソシアル。トリビアのポイントはフロントマスク。4代目シャレードのハッチバック車に対し1年4か月ほど遅れて1994年5月に登場したソシアルだが、翌95年11月にはハッチバックと同タイミングでツリ目のヘッドライトの後期型へとマイナーチェンジ。その販売期間の短さから、ソシアルの前期型はシャレードファンの間では希少な存在とされている。
一人で4世代のシャレードを保有するM・Nさん。クルマ探しはこれでコンプリートかと思いきや、「どこかで3代目モデルの5ドア車が出てきたら、気持ちがグラっときちゃうかも知れません(笑)」と密かな野望も。もしかするとこの先、さらなるラインアップの拡充が図られる日が来るかも知れません。
このコーナーではこれからも時代の流れに色褪せることなく、鮮やかな輝きを放ち続ける昭和世代のクルマたちとのカーライフを満喫されている方々を紹介していきます。
高橋陽介
幼少期からのクルマ好きが高じ、九州ローカルの自動車雑誌出版社の編集を経てフリーランスに。雑誌・ウェブを中心に4輪・2輪関連の記事を執筆中。クルマにまつわる映画にも目がない。自身の愛車遍歴はもっぱらマニュアルのスポーツカーだが、後輪駆動とアナログメーターが必須条件のため、購入候補車が年々減って行くのが悩みとなっている様子。
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