まるで変形ロボ! 50種類のアタッチメントを操る万能重機、フランス製「マニトウMT930」の実力
【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
建設現場や災害現場、そして輸送の最前線など、人知れず活躍する特殊車両たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能も形状も、どれも常識を超えたものばかりだ。今回の「特車図鑑」では、1958年に創業したフランスの老舗メーカー「MANITOU(マニトウ)」のテレハンドラーを紹介。重機界の「十種競技のチャンピオン」とも言えるこの万能マシン、ビル3階に届く驚異の伸縮能力を秘めた注目モデル「MT930」を中心に、その実力に迫る。
9m上空へ3tを届ける! 狭小現場を救う「MT930」驚異のリーチ
2台そろってブームを最長まで展開。ビル3階相当に到達するMT930(左)と、軽快な俊敏性を誇るMT625(右)。背の低い車体から天高く伸びるブームは圧巻
今回メインで紹介する写真左側の「MT930」は存在感が際立っている。しかし驚くべきは、その「低さ」だ。最大積載量3000kgを誇るハイパワー機でありながら、車高はわずか1.99m。一般的な地下駐車場や仮設ゲートの「2m制限」をクリアするサイズに収まっている。
そして、この低い車体から繰り出される最大の武器が、最大揚程8.85mという圧巻の伸縮ブームだ。ビル3階相当の高所へ、3tの資材を一気に直接届けることができる。クレーンを組むスペースすらない都市部の狭小現場や、屋根のある建造物内において、この「低い姿勢から高く届く」MT930の能力は唯一無二の強みとなる。
50以上の顔を持つ万能重機が魅せる無限の可能性
通常であればクレーン車、フォークリフト、高所作業車など複数の重機を現場に手配しなければならない場面でも、テレハンドラーが1台あればアタッチメントの交換だけで対応できる。作業ごとに別の重機を借りるコストや手間を劇的に削減し、スペースの限られた現場に絶大なメリットをもたらしてくれる
マニトウのテレハンドラーが「重機界の十種競技チャンピオン」と呼ばれる理由は、その先端に装着するアタッチメントの多彩さにある。自社製・サードパーティー製を合わせるとその数は50種類以上。現場のニーズに合わせて数分で先端パーツを付け替えるだけで、まるで別の重機へと姿を変える。活躍する現場は建設現場、倉庫、港湾、産廃処理場、降雪地、不整地など多岐にわたる。
フランス流人間工学と特許の「JMSジョイスティック」
パソコンのマウスのように手になじむ特許の「JSMジョイスティック」は、一本で主要操作が完結。頭上の強固な安全ガラスとあわせ、作業員の疲労と事故を防ぐ工夫が凝らされている
武骨になりがちな重機の世界において、マニトウの作り込みは異彩を放つ。そこにあるのは、「オペレーターを疲弊(ひへい)させないことこそが、最大の安全につながる」というフランス流の人間工学(エルゴノミクス)思想だ。
操縦席に座ると、まず目に飛び込むのが特許取得済みの「JSM(ジョイスティック・スイッチ・アンド・ムーヴ)」である。パソコンのマウスのように手のひら全体をのせて操作する形状になっており、アームの伸縮や前後進の切り替え、油圧操作がすべて一本に集約されている。直感的かつ無駄な力を使わないため、長時間の作業でも疲労が蓄積しにくい。
3.35mの小回りと「絶対に倒れない」高度な自動安全制御
前後輪をコントロールする4WS機構。その場旋回はもちろん、前後輪を同じ向きにして斜めに走る「クラブ操舵(カニ歩き)」を使えば、狭い隙間への幅寄せも驚くほど簡単に行える
アームを9m近く伸ばして3tの重荷を上げるとなると、「車体がひっくり返らないのか?」という懸念が生じる。その疑問に対する答えが、マニトウが誇る高度な安全制御システム(LMI)だ。荷重と傾きをリアルタイムでセンサーが感知し、後輪が浮きそうになるとアームが自動で安全方向にしか動かなくなる安全制御が働く。また、最小回転半径はわずか3.35m。4輪操舵(4WS)によりその場で旋回ができるほか、カニのように斜めに走る「クラブ操舵」を使えば、狭い足場への幅寄せも容易に行える。
【MT930のディメンション】
【MT930の細部と特徴】
380/75R20サイズの力強い大径タイヤを装着。最低地上高350mmを確保した4WD構造と相まって、一般的なフォークリフトでは即座にスタックしてしまう泥濘地(でいねいち)や未舗装現場でも、圧倒的な走破性とグリップ力を発揮する
頭上まで大きく開口したキャビン構造により、8.85m上空へ伸ばしたアームの先も首を無理に曲げることなく自然な体勢で目視可能。強固な防護構造と格子状のサンルーフルーバーを備え、万が一の落石・落下物からオペレーターの身を徹底的に守る
クボタ製3.33Lディーゼルエンジン(54.6kW/75HP)。低回転から太いトルクを発生させ、泥濘地での走破や重荷の押し出しに威力を発揮する。側面カバーがガバッと開き、日々の点検作業にも配慮された設計だ
車体中央右側に格納されたブーム。油圧シリンダーと内蔵ケーブルの滑らかな連動により、最大揚程8850mmの上空へ3000kgの資材を直接届ける。クレーン不要のワンオペ作業を可能にする、MT930最大の武器だ
足元や頭上空間が広く確保され、オペレーターを包み込む開放的なコックピット。右手のJSMジョイスティックから見やすいデジタルメーター、頭上までつながる全面大型ガラスまで、長時間の作業でも疲れにくいフランス流の人間工学思想が凝縮されている
工具を必要としないスムーズな脱着システムを採用。フォークやバケットなど、豊富にそろった50種類以上のアタッチメントを瞬時に切り替えることで、狭い現場でも作業ごとの重機の入れ替えを不要にする
使用するアタッチメントに応じた講習や免許が必要
多彩な作業を一台でこなすMT930を操作するには、公道走行に必要な大型特殊自動車免許に加え、装着するアタッチメントに応じた免許や技能講習の修了が必要となる
【MANITOUテレハンドラーMT930】のスペック
●全長×全幅×全高:4670×1990×1990mm ●車両重量:6550kg ●最大揚程:8850mm ●最大作業リーチ:6050mm ●最大積載能力:3000kg ●駆動方式:4WD/4WS ●トランスミッション:HST(静油圧式) ●エンジン:クボタ V3307-CR-TE5B(ディーゼル) ●総排気量:3331cc ●最高出力:54.6 kW(75HP) ●最大トルク:263Nm/1400 rpm ●最小回転半径:3350mm ●標準タイヤサイズ:380/75R20
重機女子オペレーター Kaoriさんが語るMANITOUテレハンドラー MT930の魅力
可愛いのに超万能! テレハンドラーが教えてくれた建設業の面白い未来
今回「テレハンドラーMT930」を調べてみたら、「こんな建機もあるんだ!!」と素直に驚きました。赤いボディーカラーが目立って可愛い! 一見ラフタークレーンのようでありながら、より万能。日本ではまだ見かける機会が少ないですが、海外では当たり前のように活躍していると知ると、日本の建設現場にもまだまだ知らない可能性がたくさんあるのだと感じます。
普段バックホウに乗っている私だからこそ、違う建機に触れるたびに新しい発見があります。こうした出会いが現場の選択肢を広げ、建設業の未来をもっと面白くしてくれるのかもしれません。これからもさまざまな建機の魅力や可能性を発信していきたいですね。
重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)
親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、テレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。
●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs
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