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水中探査装置から地中音響探知機まで最新装備を満載する人命救助に特化した最新レスキュー車|特集
人命救助に特化したさまざまな資機材を搭載した救助工作車Ⅲ型の外観写真
構成=グランマガジン社/協力=千葉市緑消防局/コメンテーター=Kaori(重機女子オペレーター)

消火しない消防車!? 人命救助に特化した最新レスキュー車「救助工作車Ⅲ型」の秘密と機能を紹介!

【特車図鑑】世の中を支える唯一無二の特殊な乗り物たち
コメンテーター=重機女子オペレーター Kaoriさん

建設現場や災害現場、そして輸送の最前線など、人知れず活躍する特殊車両たち。特別な作業のために開発されているだけに、その機能も形状も、どれも常識を超えたものばかりだ。今回紹介する救助工作車は直接的な消火活動は行わないが、火災や交通事故、地震、水難事故といったさまざまな災害現場で人命救助を行う特殊車両だ。

目次

救助工作車ってどんなことをするの?

荷室に満載されている資機材

以前の車両は電動式のシャッターを搭載していたが、新型はあえて手動式に変更。1分1秒を争う救助現場では、資機材を少しでも早く取り出す必要がある。電動シャッターの場合、ボタンを押してからモーターが作動し、完全に開くまでにどうしても数秒の「待ち時間」が発生してしまう。一方、手動シャッターであれば、隊員が手でつかんで一瞬で引き上げることができるため、現場到着直後の初動スピードにおいて手動のほうが圧倒的に有利なのだ

「レスキュー車」という呼び名でも広く知られる救助工作車。火災や交通事故、水難事故、地震など、人命に関わるあらゆる災害現場に駆けつける頼れる車両。状況に応じて使い分ける多種多様な装備や機材を搭載している。救助隊が運用する車両ではあるが、クレーン、梯子、ウインチ、照明などを備えるものの、ポンプ機能は搭載していないため、直接的な消火活動は行わず、あくまでも「救助活動」に特化した仕様となっている。

大型ボディー+4WDで最高峰の機動力を持つ「Ⅲ型」

救助工作車は、その規模や目的によってⅠ型からⅣ型の全4タイプが設定されている。Ⅰ型は2〜3トンクラス、Ⅱ型は5〜7トンクラス、Ⅲ型は7〜10トンクラス。そしてⅣ型は、大規模災害時の航空機輸送を前提としたコンパクトな2トントラックをベースとしている。今回取り上げる「Ⅲ型」は、大型ボディに4WDを組み合わせることで、圧倒的な積載性と機動力を両立。後述する最新機材を数多く積み込み、あらゆる過酷な災害現場で迅速かつ確実な救助活動を展開する。

【救助工作車Ⅲ型の外観と運転席&後部座席】

救助工作車Ⅲ型の外観

救助工作車Ⅲ型の外観

救助工作車Ⅲ型の外観

救助工作車Ⅲ型の外観

救助工作車Ⅲ型の運転席

救助工作車Ⅲ型の後部座席

ベースとなるのはダブルキャブの6人乗りで、4WD・MT仕様。2年前に行われた車両更新により、キャビンがハイルーフ化され居住性が大幅に向上した。さらに、後方左右の機材積載部のシャッターを従来の電動から手動へと変更したことで開閉スピードと確実性を引き上げ、機動力を強化している。フロントおよびリアに搭載されたウインチも、ワイヤーの乱巻き(偏り)が起こりにくい最新構造へと改善され、タフな現場を支えている

あらゆる災害に対応する主な機材

自動車事故で変形した車両を切断する「カッター」、隙間を押し広げる「スプレッダー、ラムシリンダー」、車両を持ち上げる「マット型空気ジャッキ」を配備。さらに、コンクリートや鉄筋を切断したり破砕する「ダイヤモンドブレード付ダブルブレードカッター、削岩機」、山林や崖地での滑落事故に対応する「クレーン、ロープ」、河川や湖での水難事故を想定した「救助ボート、潜水器具」など、想定されるあらゆる災害に対処可能な装備を常時ストックしている。

【救助工作車Ⅲ型に搭載されている主な資機材】

刃の大きさが違う金属カッターや油圧機器

事故で潰れた車両のキャビンなどを押し広げる特殊油圧機器「ラムシリンダー」は、シリンダーを延伸させることで狭まった隙間を拡張。足や胸が挟まれて脱出不能になった要救助者を迅速に解放する。他にも金属カッターなどを各種装備

バンパーに装備されているウインチをリモコン操作している写真

車両前方に搭載された強力な巻き取り機。60mのワイヤーを装備し、車外からリモコンで遠隔操作が可能。現場では、コンパクトな手動タイプの「チルホール」と併用されることも多い

車体後方に配備されているクレーンを操作している写真

4段アームを採用した伸縮式クレーン。目一杯伸ばすと最長8.9mに達する。最大吊り上げ力は2.93t(※アームを伸ばさない特定条件下)。最長状態での吊り上げ力は約320kgとなる

車体上部の中央部に設置された自動昇降式照明装置

強力なLEDライトを備えた発光部は角度調整ができる上、4パターンの発光モードを搭載。現場の状況に合わせた最適な夜間照明を提供する

エアマットを重ねて車体を持ち上げている写真

電動ポンプに接続して使用する重量物持ち上げ用マット。空気圧によって、大型タイプでは30tもの重量物を最大17cmリフトアップできる。接地が平面になるため安定性が高く、重ねての使用も可能だ

事故で潰れた車両のキャビンなどを押し広げる特殊油圧機器「ラムシリンダー」は、シリンダーを延伸させることで狭まった隙間を拡張。足や胸が挟まれて脱出不能になった要救助者を迅速に解放する。他にも金属カッターなどを各種装備

車両前方に搭載された強力な巻き取り機。60mのワイヤーを装備し、車外からリモコンで遠隔操作が可能。現場では、コンパクトな手動タイプの「チルホール」と併用されることも多い

4段アームを採用した伸縮式クレーン。目一杯伸ばすと最長8.9mに達する。最大吊り上げ力は2.93t(※アームを伸ばさない特定条件下)。最長状態での吊り上げ力は約320kgとなる

強力なLEDライトを備えた発光部は角度調整ができる上、4パターンの発光モードを搭載。現場の状況に合わせた最適な夜間照明を提供する

電動ポンプに接続して使用する重量物持ち上げ用マット。空気圧によって、大型タイプでは30tもの重量物を最大17cmリフトアップできる。接地が平面になるため安定性が高く、重ねての使用も可能だ

命を救うためのハイテク機器の数々

地震や土砂崩れの現場では、目視で要救助者を確認できないケースが多々ある。そのため、地中の微細な音を拾って位置を絞り込む「地中音響探知機(デルサーLD3)」や、狭い隙間に差し込んだポールの先から全方位のライブ映像を送る「画像探索機Ⅱ型(ファーストルック360)」、電磁波によって障害物の奥の状況をディスプレイに可視化する「電磁波探査装置(レスキューレーダー)」、ファイバースコープが狭所の奥を映し出す「画像探索機Ⅱ型(オリンパス)」など、最先端のハイテク機材が網羅されている。

【救助工作車Ⅲ型に搭載されているハイテク機器】

地中音響探知機

【地中音響探知機(デルサーLD3)】
最大6個のセンサーを接続し、地中の音から要救助者の位置を特定する装置。要救助者のかすかな振動をキャッチして探索エリアを絞り込める。スピーカーを接続すれば、地中への呼び掛けも可能

画像探索機Ⅱ型(ファーストルック360)

【画像検索Ⅱ型(ファーストルック360)】
ポールの先端にワイヤレスの360度全方位カメラを装着した機材。送信された高解像度画像は手元のタブレットで確認でき、音声付き動画や静止画での記録も可能。スピーカー搭載で双方向の会話も行える

電磁波探査装置

【電磁波探査装置(レスキューレーダー)】
電磁波を放射して障害物の向こうの要救助者を察知する。電磁波自体は深度30mまで届くが、精度を担保するため「直径10m・深度5m」の範囲で探るのがベスト。対象までの距離がリアルタイムに表示される

水中探査装置の写真

【水中探査装置(M2PRO)】
水中の様子を、有線接続されたスマートフォンでリアルタイムに確認できる。全方向へ移動可能な8スラスター仕様の機体に4Kカメラを搭載。ケーブル接続のため、電波の届かない水中でもクリアな映像を送れる

熱画像カメラを実操作している写真

【熱画像直視装置(ドレーゲルUFC9000)】
火災などの濃煙・危険環境下で使用。130℃の高温に耐え、熱や煙、散水の中でも人物の体温を検知してディスプレイに視覚化する。漏洩した危険な液体の範囲特定にも威力を発揮

早期地震警報システムの写真

【早期地震警告システム (FREQL-C)】
地震の初期微動(P波)を識別し、予想される本震が設定レベル(推定震度4以上など)を超える場合に大音量アラームとランプで警告。二次災害(余震による倒壊など)から活動中の隊員の命を守る

崩落監視システム

【崩落監視システム】
倒壊の危険がある建物などを遠隔で見守る安全機材。目に入っても安全なレーザー光を対象に照射し、わずかな変位(動き)も常時監視。異変を感知するとアラームで知らせる。最大50m先まで対応

潜水用スキューバ機材

【潜水用スキューバ機材】
あらゆる水難捜索に対応するため、ウエットスーツ、マスク、シュノーケル、フィン、タンク、レギュレーター、BC(浮力調整装置)などを完備。隊員は全員、潜水士の国家資格を保有している

チェーンソーや削岩機などの工作機

【各種工作機器】
コンクリートや鉄パイプなど、救助の障壁となる固い障害物を切断するため、ダイヤモンドチェーンソーやダイヤモンドブレード付きのダブルブレードカッターを配備。中央の削岩機は瓦礫を破壊する際に使用する

内視鏡のような機能を持つ画像探査機Ⅱ型

【画像探査機Ⅱ型(オリンパス)】
医療用の胃カメラに似た外観を持つファイバースコープ。非常に細いため、「ファーストルック360」では進入できない極小の隙間の奥まで、くまなく状況を映し出すことができる

【地中音響探知機(デルサーLD3)】最大6個のセンサーを接続し、地中の音から要救助者の位置を特定する装置。要救助者のかすかな振動をキャッチして探索エリアを絞り込める。スピーカーを接続すれば、地中への呼び掛けも可能

【画像探索機Ⅱ型(ファーストルック360)】ポールの先端にワイヤレスの360度全方位カメラを装着した機材。送信された高解像度画像は手元のタブレットで確認でき、音声付き動画や静止画での記録も可能。スピーカー搭載で双方向の会話も行える

【電磁波探査装置(レスキューレーダー)】電磁波を放射して障害物の向こうの要救助者を察知する。電磁波自体は深度30mまで届くが、精度を担保するため「直径10m・深度5m」の範囲で探るのがベスト。対象までの距離がリアルタイムに表示される

【水中探査装置(M2PRO)】水中の様子を、有線接続されたスマートフォンでリアルタイムに確認できる。全方向へ移動可能な8スラスター仕様の機体に4Kカメラを搭載。ケーブル接続のため、電波の届かない水中でもクリアな映像を送れる

【熱画像直視装置(ドレーゲルUFC9000)】火災などの濃煙・危険環境下で使用。130℃の高温に耐え、熱や煙、散水の中でも人物の体温を検知してディスプレイに視覚化する。漏洩した危険な液体の範囲特定にも威力を発揮

【早期地震警報システム(FREQL-C)】地震の初期微動(P波)を識別し、予想される本震が設定レベル(推定震度4以上など)を超える場合に大音量アラームとランプで警告。二次災害(余震による倒壊など)から活動中の隊員の命を守る

【崩落監視システム】倒壊の危険がある建物などを遠隔で見守る安全機材。目に入っても安全なレーザー光を対象に照射し、わずかな変位(動き)も常時監視。異変を感知するとアラームで知らせる。最大50m先まで対応

【潜水用スキューバ機材】あらゆる水難捜索に対応するため、ウエットスーツ、マスク、シュノーケル、フィン、タンク、レギュレーター、BC(浮力調整装置)などを完備。隊員は全員、潜水士の国家資格を保有している

【各種工作機器】コンクリートや鉄パイプなど、救助の障壁となる固い障害物を切断するため、ダイヤモンドチェーンソーやダイヤモンドブレード付きのダブルブレードカッターを配備。中央の削岩機は瓦礫を破壊する際に使用する

【画像探索機Ⅱ型(オリンパス)】医療用の胃カメラに似た外観を持つファイバースコープ。非常に細いため、「ファーストルック360」では進入できない極小の隙間の奥まで、くまなく状況を映し出すことができる

千葉市消防局 緑消防署の最精鋭部隊「特別高度救助隊」とは?

特別高度救助隊の訓練風景

実践さながらの緊迫感で行われる、建物崩落からの救出訓練。二次災害のリスクを極限まで減らすため、周囲の状況を常に監視しながら、負傷者を担架で慎重に救出する

消防の救助部隊は、1.救助隊、2.特別救助隊、3.高度救助隊、4.特別高度救助隊の4つに区分されている。なかでも「特別高度救助隊」は、最高峰の技術と最新機材を兼ね備えた最精鋭部隊だ。その活動領域は広く、大規模な地震や火災、豪雨、鉄道事故にとどまらず、CBRNE(化学・生物・放射性物質・核・爆発物)災害にまで対応。国際消防救助隊として登録されている隊員は、要請があれば国際緊急援助隊・救助チームの一員として海外の被災地へも派遣される。

【千葉市緑消防署 救助工作車Ⅲ型のスペック】
●ベース車両:日野自動車製レンジャー ●型式:2KG-GX2ABA ●全長×全幅×全高:7880×2350×3170mm ●車両重量(車両、積載物含む):11220kg ●車両総重量(車両重量+人):11550kg ●排気量:5120cc ●最高出力:260PS ●最大トルク:882Nm ●乗車定員:6人

重機女子オペレーター Kaoriさんが語る救助工作車Ⅲ型の魅力

Kaoriさんの写真

人命を救う“道具箱”に学んだプロの姿勢

千葉市消防局緑消防署に配備されている『救助工作車Ⅲ型』。一見すると少しハイルーフになった消防車に見えますが、その役割はまったく別物。ひと言で表現するなら、これ一台で多くの救助活動に対応できる資機材が詰まった「人命救助用の道具箱」です。車内には、地中探知機や水中探査装置のほか、私たちが現場で使っている電動ピックまで、人命救助のための高度な資機材が満載されています。そして、この車両を扱うのは「特別高度救助隊」と呼ばれる、専門的な知識と高度な技術を持つ隊員の皆さんです。

私たちの仕事でも、重機や測量機器は年々進化しています。しかし、それを扱う私たちも、同じように知識や技術を磨き続けなければならないのだと、今回この記事を書きながら改めて感じました。

重機女子オペレーター Kaoriさん(株式会社KSK 代表)

Kaoriさんの顔写真

親方として現場で作業を行うKaoriさんは、重機が好きすぎて自ら会社を設立。「ユンボの楽しさを伝えたい!」という思いから、テレビ出演やイベントでの講演のほか、建設業界で働く女性たちが集まるコミュニティサイトなども運営している。

●Instagram:@kao.ksk
●公式LINE(建設業に関わる女性限定):@925dxxzs

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