信号待ちでの追突・玉突き事故を防ぐことはできたのか? 避けられない事故の被害を最小限にするための準備とは
逃げ場のない追突事故。バックミラーに迫る大型トラックから身を守るための自衛策【本当にあったヒヤリハット】
信号待ちや渋滞での停車中、バックミラーで後続車が迫ってくるのを見て「ちゃんと止まってくれるかな……?」と不安になったことはありませんか? その直感が、あなたを守るカギとなるかもしれません。
交通事故鑑定人の熊谷宗徳氏が、あるJAF会員の「避けようのない追突事故」の体験を振り返るとともに、自分や家族の命を理不尽な事故から守るための策、そして今すぐ取るべき「安全な距離」の重要性を解き明かします。
信号で停止中に後ろから大型トラックが追突
はずみで前2台にも玉突き
静岡県在住、60歳代男性の体験です。
「秋の夕方、セダンに乗ってやや渋滞している国道1号を運転していました。そんななか、信号で停止したところ、なんと後ろから大型トラックに追突されたのです。そのはずみで前2台を巻き込む玉突き事故に。気づいたら私はシートごと後ろに倒れ、上を向いていました。すぐには起き上がれず、その後、むち打ち症に長年悩まされることになったんです。
これほどの事態であるのに、追突した運転手は一言も謝らず、気遣うそぶりも見せませんでした。自分の命が助かったことがせめてもの救いですが、とにかく納得ができません」
逃げ場なしの恐怖
「過失100対0」の追突事故は防げないのか?
さらに、この60歳代男性ドライバーは事故当時を振り返ります。
「とにかく、まさか後ろから突っ込んでくるとは思いませんでした。渋滞気味だったので、全体としてはスピードが出ていないはず。車体が大きくなるのをルームミラーで見て踏ん張りましたが、とても避けられる状況ではなく……。
今振り返ってみても、やはりこの事故は避けきれなかったと思います」
【交通事故鑑定人の見解】
大型車両による高速度の追突事故
回避が難しいなかでもできること
乗用車の10倍近い重量を持つような大型車両が高速で追突した場合、物理法則によって停止するまで押し出されてしまいます。大型車による追突が極めて重大な事故に直結しやすいのは周知の事実ですが、残念ながらこうした事故は後を絶ちません。
過失が0だとしても、大型トラック等の大型車に、高速度で追突されれば一瞬で命を落としかねません。最近でも、高速道路上でスマホを見ながら大型トラックを運転していたドライバーが、前方の渋滞車列の発見が遅れて追突。乗用車2台に乗車していた6名の尊い命が犠牲となりました。
自動車同士の交通事故において、過失割合が「100対0」となるケースは、主に「追突」と「センターラインオーバー」です。その理由は、いずれも被害者側に落ち度がなく、かつ逃げ場もないため、衝突を回避することが困難だからです。
このような悲劇を回避するために何ができるのか。私自身は、特に高速道路ではできる限り大型貨物車の前方に入らないよう細心の注意を払っています。しかし、高速道路ではなく、片側1車線の一般道などでは、後続に大型車がつく状況を避けることは非常に困難。
そのような場面で唯一取れる対策は、やはりできるだけ車間距離を取るということになります。今回のケースの場合ですが、渋滞で前車に続いて停止する際、追突され押し出されてもハンドル操作で前車への衝突を回避できた可能性があります。3~5m程度の車間距離を空けて停止し、しっかりブレーキを踏み込んで、バックミラーで後方の確認を行うことも、交通事故における自己防衛につながると思います。
また、できるだけ緩やかなブレーキを心がけることで、早めに後続車に減速していることをブレーキランプで知らせることができるので、後続車も余裕をもって車間距離を取りやすくなると思います。
一方、大型車両を運転する職業ドライバーの方は、危険な車両を運転していることを肝に銘じなければいけません。絶対に第1当事者(事故に関係した運転者や歩行者のうち、過失が重い人)にならないよう安全確認を徹底し、安全運転を心がけてこそ、プロドライバーといえると思います。
どの分野においても共通することですが、大多数が法令を順守し慎重に行動していても、ごく一部の心ない人間が重大事故を引き起こせば、その業界全体が社会的信用を失い、厳しい批判にさらされることになります。
不注意による大型車両の追突事故が減少しないようであれば、今後は運転席を撮影するドライブレコーダー設置の義務化、さらには「ながら運転」に起因する事故を「危険運転致死傷罪」の対象とする厳罰化など、法改正に向けた議論も避けて通ることはできないでしょう。
追突事故は全事故件数の約3割
適切な車間距離は「秒数」でも判断を
追突事故は、大型車両に限らずあらゆる車両において最も頻発している事故類型です。令和6年の交通事故統計によれば、全事故件数の約3割を「追突」が占めています。
事故を防ぐための最も基本的かつ効果的な対策は「十分な車間距離の確保」以外にありません。適切な車間距離に関しては、「秒数」で判断する方法もあります。「詰めすぎると「あおり」に!? 高速道路での車間距離はこう測る!」を参考にしてください。
たとえ自分に過失がない場合でも、追突・玉突き事故に巻き込まれることがあるという危機感を持ち、いざという時に「逃げ場」や「ゆとり」を確保できるよう、常に身を守るための防衛運転を心がけましょう。
- ※この企画で紹介しているのは、熊谷宗徳さんのメソッドです。JAFの見解とは異なる場合があります。
追突事故に関する記事はこちら

熊谷宗徳
くまがい・むねのり 元千葉県警の交通事故捜査官で、現在は交通事故鑑定人として活躍している。1993年に市川警察署に配属され、交番勤務を経て交通課事故捜査係などに所属。1999年には巡査部長に昇任し、千葉県警第二機動隊水難救助隊にも所属した経験を持つ。現在は交通事故調査解析事務所の代表を務め、交通事故鑑定や事故現場の調査、ドライブレコーダー映像の解析などを行っている。また、テレビのニュース番組でのコメンテーターや、Yahoo!ニュースのエキスパートコメンテーターとしても活動している。
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