雨の高速道路で他車がスリップ! 巻き込まれ事故を防ぐ「走行位置」と「ブレーキ判断」
事故の回避法、そしてハイドロプレーニング現象を防ぐ事前準備とは【本当にあったヒヤリハット】
雨天時の高速走行では、タイヤと路面の間に水の膜ができることで接地力を失う「ハイドロプレーニング現象」が発生し、重大事故につながることがあります。特に高速道路では突然車両が横滑りを起こし、ドライバーの意思とは関係なく制御不能となるケースも少なくありません。自分が安全運転を心がけていても、周囲の車両がスリップしたことで事故に巻き込まれてしまう危険があります。
こうした事態に遭遇した場合、どのように行動すれば被害を軽減できるのでしょうか。また、事故のリスクを減らすためには、日頃からどのような準備をしておくべきなのでしょうか。交通事故鑑定人の熊谷宗徳氏が解説します。
土砂降りの高速道路で
追越車線から滑り込んできた「制御不能の車」
東京都在住の60歳代男性の体験です。
「学生の頃の話です。土砂降りの雨の中、第三京浜の走行車線を走行中に、追越車線を走って来たクルマが、横滑りをして私のクルマにぶつかってきたんです。おそらくハイドロプレーニング現象だったと思います。
その反動で私は中央分離帯に衝突しました。 そのあと、横滑りしてきたクルマは私のクルマのギリギリ前を滑っていき、左の路側帯のガードレールにぶつかって止まりました」
危機を脱したドライバーが痛感した
タイヤ管理の重要性
ドライバーは当時をこう振り返ります。
「運転をしていると、何が起こるかわからないと痛切に感じました。とにかく走行前の準備が必要だったと思います。自分のクルマの制動力を雨の日に試してみておく必要があったのかもしれません。また、タイヤは溝があるうちに交換すべきだと反省をしました」
【交通事故鑑定人の見解】
理不尽な「巻き込まれスリップ」から
命を守る条件
片側2車線の道路において走行車線を走行中、追越車線を高速度で走行していた車両がスリップし、滑走しながら衝突してくる。今回のケースでは、完全に回避することは難しかったと思われます。
スリップした車両に巻き込まれる危険を減らすためには、速度規制を守って走行車線を走行するとともに、後方から高速度で接近してくる車両には、その動静にできる限り注意を払いましょう。
万が一、スリップ車両との衝突が避けられない状況に陥った場合でも、直ちに減速措置を講じることが重要です。急ブレーキによって衝突を回避できたり、たとえ衝突が避けられなかったとしても事故の衝撃を緩和できる可能性があるためです。
濡れた路面であっても、時速50km程度であれば急ブレーキによる制御不能のリスクは比較的低いと考えられており、諦めずに減速を試みることが安全確保への鍵となります。
さらに、左側に十分な路肩などの退避スペースがある場合には、路肩方向へ進路を変更することで衝突を回避できる可能性もあります。もっとも、この場合も周囲の交通状況や路肩の安全性を十分に確認した上で行いましょう。
ハイドロプレーニング現象を防ぐ
「トレッドパターン(タイヤの溝)」の役割
被害に遭った方は「タイヤの溝」の重要性についても触れていますが、こうした事故を防ぐためには日頃からの車両点検が欠かせません。
タイヤの路面と接する部分は「トレッド」と呼ばれ、その表面に刻まれた溝の模様は「トレッドパターン」と呼ばれます。トレッドパターンには、走行中にタイヤと路面の間に入り込んだ水を効率よく排出する役割があります。
しかし、タイヤが摩耗して溝が浅くなると排水性能が低下し、路面上の水を十分に排出できなくなるのです。その結果、タイヤが路面から浮いた状態となるハイドロプレーニング現象が発生しやすくなります。雨天時の安全な走行のためにも、日頃からタイヤの摩耗状態や溝の深さを確認し、適切なタイミングでタイヤを交換することが重要です。
雨の日の運転では、自分がどれだけ慎重に走行していても、周囲の車両のスリップなどによって思わぬ危険に巻き込まれることがあります。しかし、適切な速度管理や周囲への注意、そしてタイヤの点検といった日頃の備えが被害の軽減につながります。梅雨や台風の季節を迎える前に、愛車の状態を改めて確認してみてはいかがでしょうか。
雨の日のスリップ事故に関しては、熊谷宗徳氏が「雨の下り坂カーブでの路外逸脱事故…濡れた路面の危険性」にて、濡れた路面の危険性について詳しく解説しています。こちらの記事も参考に、雨の日の運転に潜むリスクを再確認してください。
- ※この企画で紹介しているのは、熊谷宗徳さんのメソッドです。JAFの見解とは異なる場合があります。
雨の日の走行に関する記事はこちら

熊谷宗徳
くまがい・むねのり 元千葉県警の交通事故捜査官で、現在は交通事故鑑定人として活躍している。1993年に市川警察署に配属され、交番勤務を経て交通課事故捜査係などに所属。1999年には巡査部長に昇任し、千葉県警第二機動隊水難救助隊にも所属した経験を持つ。現在は交通事故調査解析事務所の代表を務め、交通事故鑑定や事故現場の調査、ドライブレコーダー映像の解析などを行っている。また、テレビのニュース番組でのコメンテーターや、Yahoo!ニュースのエキスパートコメンテーターとしても活動している。
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