ドライバーのお悩み解決! 菰田潔の運転レッスン

運転技術のその前に。 同乗者もうれしい「スマートドライバーのお作法」とは

車内環境、ドアの開閉サポート、ヘッドレストの調整… 細かい気遣い、できていますか?

菰田 潔(モータージャーナリスト)
2024.02.11

モデル=土屋怜果

2024.02.11

モデル=土屋怜果

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

2年間の運転レッスンを経て、運転にも自信がついてきた生徒の土屋怜果さん。先日、仕事関係者の運転する車に乗った際にとても不快だったそうです。「いきなり、何も言わずにドアをバンッと閉めたり、車内がすごく寒くて……車内で落ち着いた時間が過ごせませんでした」と振り返る土屋さんに、講師の菰田潔さんも「それはいけませんね」とキッパリ。
同乗者がドライバーの対応に不快感を持っていると、ドライブを楽しめないばかりか、ドライバーにもそれが伝わり、運転に集中できないことも。また、快適な車内環境は安全運転にもつながります。今回は運転技術だけではない、乗車前からの「スマートドライバーのお作法」について考えてみましょう。

乗車前から始まっている!
気を付けたいお作法について動画で解説

ドアの開閉、ヘッドレスト調整…
「快適ポイント」5選

1. ドアの開閉、必要に応じてサポートを

乗り込むときからお作法は始まっています。まずはドアの開け方から。子供や高齢者など、サポートが必要な方の乗降時は、ドライバーがドアを開閉するのがベターです。ヒンジ型ドアの場合、ドアを急に大きく開けると走ってきた車や自転車に接触する危険性がありますので、開ける際には前後をよく確認しましょう。閉める際にも、一気に勢いよく閉めるのではなく、閉まる手前20cmくらいの隙間が空いている状態で一度手を止めて、挟み込むものがないか安全確認してから、ドアハンドルを持ったまま押し込むように閉めましょう。乗り込んで閉める場合も室内側のドアハンドルを持ったまま、閉まる手前20cmで安全確認し引っ張り込むように閉めましょう。
スライドドアの場合も、勢いよく閉めると手が挟まる危険性も。挟まるものがないか確認し、手を添えて注意しつつ閉めると大きな音もせず、安全でスマートです。最近は電動スライドドアも増えました。腕や身体が挟まった場合にはドアが一度止まって開く安全装置が付いていますが、子供の指くらいの狭い隙間では安全装置が作動しないので、完全に閉まるまで十分な注意が必要です。

ドアを閉める様子

完全に閉める前に、一度手を止めて確認する習慣をつけましょう

2. ヘッドレストの位置、合っていますか?

ドライバーだけでなく、助手席の方のヘッドレストも確認を。追突されたときにヘッドレストが正しい位置でない場合、頚椎捻挫(むち打ち症)になる危険性が高まります。座った方の頭のてっぺんに、ヘッドレストの上の位置がそろうよう調節を。ヘッドレストを上げるときにはヘッド部分を持って上へ引っ張り、下げるときにはヘッドレスト根元のボタンを押しつつ、ゆっくりと押し込みます。2列目、3列目のシートの場合も、首を守るために頭が後ろに行くのを抑えられる位置までヘッドレストを上げておきましょう。

3.同乗者のシートベルト、適切に着用されているか確認を

発進前には、ドライバーはもちろん、同乗者全員が適切にシートベルトを着用していることを確認しましょう。子供や車に不慣れな方はバックル位置などがわかりづらい場合がありますので、必要に応じてサポートを。金具をバックルに差し込んだ後は、ベルトのたるみをなくしておくことも大切です。チャイルドシート、ジュニアシートも年齢や体格に合わせ適切なものを使いましょう。

4.ドライバー、同乗者ともに快適な車内温度に

車内温度が適切でないと、ドライバーは運転に集中できませんし、同乗者もドライブを楽しむことができません。乗車している位置や個人差によって快適な温度も違いますので、ドライバーは適宜同乗者に確認して対応を。長時間運転の場合、エアコンを内気循環モードのままにしていると、車内のCO2が増加し、ドライバーが眠気を催しやすくなる危険性も。窓が曇りやすくなるのを防ぐ効果もあるので、エアコンは外気導入を基本にするとよいでしょう。

5. 車の動きがイメージできる「じわっと」操作

停車の際に、スイッチのように一気にブレーキをグッと踏んだり、発進の際にグッとアクセルを踏むと、同乗者は急に車が動いたと感じ、驚いたり、不安を覚えることも。停車の際には、周囲のブレーキランプなどから情報を得て、早めにスピードを落としたり、発進の際にはブレーキをゆっくり離しクリープ現象の状態から徐々にスピードを上げるなど、“角がない”運転を。そのためにも、前車との車間距離をしっかりとることが重要になります。

休憩する様子

運転に必要な集中力を保てるのは2時間までといわれています。同乗者のエコノミー症候群防止のためにも、こまめに休憩を

教習所では学べない、
同乗者への気遣いと思いやりを

今回は運転技術だけでなく、ドアの開閉のコツやヘッドレストの調整、車内環境など、教習所などでは学べない快適ドライブのポイントについてお伝えしました。ドライバーだけでなく、同乗しているすべての方が安心してドライブを楽しめる“車のお作法”は、同乗者への気遣いから。ぜひ実践してみてください。

  • この企画で紹介しているのは、菰田潔さんの運転メソッドです。JAFの見解とは異なる場合があります。

快適運転についての記事はこちら

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菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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