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“愛犬と快適ドライブ”のために注意したいこと

秋以降も熱中症に注意!

2023.09.29
2023.09.29
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行楽シーズンの秋を迎え、愛犬と一緒に車でお出かけしたい!……という方も多いはず。愛犬との世界が広がるドライブはワクワクするものですが、犬を車に乗せて移動する際には気をつけなければいけないことも。
とくに、秋以降は熱中症への警戒心も緩みがちですが、油断は禁物! ワンちゃんにとって、車内の温度は夏と同様、すぐに危険なレベルに達してしまいます。人間にとって快適に感じ始めるこの時期こそ要注意なのです。
愛犬も飼い主も、そして周囲の人々も、安全かつ快適にカーライフを楽しむためのポイントを、ドッグトレーナーの長根あかりさんにアドバイスしていただきました。

熱中症対策は秋以降も万全に!

9月も半ばを過ぎると気候もだんだんと秋めいてきて旅行がしやすくなる季節です。しかし、秋だからと安心するのはまだ早く、熱中症の危険がある時期でもあります。実は、9月10月であっても車内の温度は50℃を超す暑さになることが、実験によりわかっています。

車内の環境(車内温度/紫外線/空調)(JAFユーザーテスト)

では、どのようなことに注意すればドライブ中の愛犬の熱中症を防げるのか、万が一熱中症になってしまったらどうしたらいいのか、初期対応についても簡単に紹介していきます。

ワンちゃんにとって車内の適温は?

一般的に、ワンちゃんにとっての適切な温度は18〜28℃、湿度は40〜60%です。車内では、25〜27℃くらいを目安にエアコンをかけてあげるといいでしょう。外との気温差が激しいとそれだけで身体が疲れてしまいやすいので、冷やしすぎも要注意です。助手席は直接エアコンの風を受けやすいですし、後部座席の足元や荷室は冷たい風が届きにくくなります。ワンちゃんのいる場所がどのくらい冷えているのかがわかるように、温度・湿度計をワンちゃんの近くに置いておくと判断しやすくなります。
また、車を駐車するときは日陰を選んだり、サンシェードを窓に取り付けておくと、車内の温度上昇を緩やかに抑える効果があります。とはいえ、対策をしていても車に戻ってきてすぐの車内は暑い状態です。車内が暑いままワンちゃんを乗せてしまうと、車内が冷える前に熱中症になってしまう可能性があるため注意してください。
車内温度を少しでも早く下げるためには、運転席と対角位置でドアをそれぞれ開け閉めする、助手席や対角位置の窓を開け運転席のドアを開け閉めすることで、熱くなった空気を早く外に追い出すことが可能です。ある程度熱気を追い出せたら、エアコンをつけて窓を開けた状態で走行すると、より早く車内を涼しくすることができます。

夏の駐車時、車内温度を最も早く下げる方法は?(JAFユーザーテスト)

ワンちゃんの熱中症 症状と対処の基礎知識

ワンちゃんは暑くなるとまず、舌を出してハアハアと口呼吸をする「パンティング」が見られます。このパンティングが激しくなり舌が口の横から大きく垂れ下がる、身体が熱い、という場合には熱中症になりかけていますので、すぐに涼しい場所に移動し水を飲ませてあげるなどの対応をしましょう。
熱中症になると見られる症状としては、よだれが出る、ふらつき、元気がない、嘔吐、下痢、痙攣、失神と、重症度が上がるほど命の危険があります。
熱中症の症状が見られたら、木陰や涼しい場所に移動し身体に流水をかけて冷やしてあげましょう。
動物病院へ向かう間は首、脇、鼠径(そけい)部などの太い血管が集中する場所を冷やしてあげます。身体を冷やすものとしては、コンビニに売っている氷や凍ったペットボトルのドリンクにタオルを巻いて、直接冷やしすぎないように身体に当てるなどの対応をするといいでしょう。

氷嚢で冷やされる犬

愛犬にストレスフリーなドライブとは?

愛犬とのドライブは楽しい半面、長距離の移動は愛犬にも負担がかかるもの。とくにドライブが初めてのワンちゃんや、車が苦手というワンちゃんには、安全かつ快適に過ごすための準備が必要不可欠です。どうすれば愛犬と一緒に快適にドライブを楽しめるのか、ポイントをご紹介します。

車内を快適&安全空間に

愛犬と車でお出かけをする人が増えたことで、ワンちゃん用のドライブグッズもたくさんの種類が出ています。
後部座席はもちろん、ワンちゃんの様子が常にわかるよう助手席にも置くことができるのがドライブボックスやドッグベッドです。ただし落ち着きがない子や膝の上に乗りたがる子は、助手席が気になって運転に集中できなくなるので注意しましょう。大型犬には後部座席や荷室に敷いて使える、ドライブシートや犬用のシートベルトを使えば安心です。

数あるワンちゃん用のドライブグッズですが、やっぱり一番安心・安全なのはハードクレートでしょう。万が一の急ブレーキや急ハンドルでも全身が囲われているので、大きく身体をぶつけることもなく安心です。

車の後部座席に置かれたクレートと犬

クレートは後部座席などのフラットな場所に。走行中はシートベルトなどで固定してね!

日頃の習慣づけも大切!

日頃から、クレートに慣れさせておくとお出かけがとっても楽になります。車内で安全に過ごせるのはもちろん、ホテルなどの旅行先でハウスとして使うことができるので、環境が変わっても安心して眠ることができます。
旅行や病院のときだけクレートを利用すると、嫌がったり、怖がってしまうワンちゃんもいるので、おうちの中やケージの中に置いて自由にいつでも出入りできるようにしておき、「クレート=安心できる場所」となるようにしておくことをおすすめします。

クレートの中でくつろぐ犬

ワンちゃんの車酔い対策

ワンちゃんの車酔いも人と同じ原理で、揺れに身体がついていけないことで起こります。また、一度車で嘔吐など激しい車酔いを経験することによって、それ以降車のにおいを嗅いだり、車に乗っただけでも気持ちが悪くなることもよくあり、車に乗りたがらないというワンちゃんも少なくありません。
車酔いの対策としては、丁寧な運転はもちろん、直前の食事や飲水を控えたり、身体が大きく揺さぶられないようにクレートに入れたり、落ち着ける場所を作ってあげることが大切です。
どうしても車酔いがひどい場合や初めてのドライブで心配な場合は、ワンちゃん用の酔い止めのお薬を動物病院で処方してくれますので、相談してみてくださいね。

愛犬にとって十分な休憩時間とは

ワンちゃんとのお出かけは、こまめな休憩がとても大切です。飲水や排泄、体調の変化など運転中はケアしてあげることがどうしても難しいので、1時間から2時間おきには、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)などで休憩をとりましょう。

ドッグランで走る犬

ワンちゃんも同じ姿勢で何時間もいるのはつらいもの。気分転換だけでなく身体を動かす目的のためにも、ドッグランやお散歩ができるような場所を選んで休憩をとるのがおすすめです。高速道路のSA・PAにはペット用施設としてドッグランがある場所もありますので、事前に調べておくと安心です。
また、土地勘のない場所へのお出かけの場合は休憩場所以外にも、熱中症など万が一のときのために、近くの動物病院なども事前に調べておくことが大切。事前に、行き先、利用施設、周辺のペットOKな施設、動物病院、移動距離と渋滞を考慮した時間などを書いた「旅行のしおり」を作るのもおすすめです!

愛犬とのドライブでNGなこと

運転中、他の走行車に乗っているワンちゃんを見たり、駐車中の車の中にワンちゃんを見たことがある人は多いと思います。一見ほほえましく感じる光景でも、実は危険な行為である場合があります。

愛犬との楽しいドライブで、こんなことしてしまっていませんか?

・ドライバーの膝の上に犬を乗せて運転
・車内を犬が自由に移動できる状態で運転
・走行中、窓を開けて犬の顔を出す
・駐停車中の車内で犬が留守番

車の窓から顔を出す犬

これらはやってはいけないNG行為です。膝の上にワンちゃんを乗せての運転や、注意散漫になりやすい車内での自由移動、窓から顔が出ている状態での運転は、「道路交通法第55条第2項(乗車又は積載の方法)」に違反することになります。車内でのお留守番は動物愛護法違反にあたる場合もあり、ワンちゃんの熱中症や死亡につながるとても危険な行為です。実際に、事故を起こして逮捕される事例もありますので、本当に「愛犬のためになる」安全な乗せ方を考えましょう。

マストな持ち物&あるといいものリスト

愛犬とのドライブで必要な持ち物は、普段のお散歩バッグの中身だけではありません。旅行先や利用施設によっても必要な持ち物は異なるため、事前によく調べておく必要があります。たとえば、川遊びやキャンプなどであれば、身体を拭くためのタオルを多めに持っていったほうがいいですし、レストランなど施設を利用するには、抜け毛対策に洋服が必要だったり、マナーパンツの着用を求められることがあります。

必須アイテム

□リード、首輪orハーネス □給水用皿 □水 □フード、おやつ □薬(常用している薬があれば)
□犬用エチケット袋(ウンチ袋) □ペット用ウェットティッシュ
□狂犬病予防接種・混合ワクチン接種済証明書(コピーでも可)


小型犬に多いのが、玄関から車まで抱っこをして連れて行き、リードや首輪、ハーネスを忘れてしまうケース。事前に付けてから抱くか持ち物に入れたのを確認しましょう。
そして、何よりワンちゃんとの旅行で一番避けたいのは、準備不足による忘れ物。ドッグランやワンちゃん用の施設を利用するときには、1年以内の狂犬病予防接種証明書と混合ワクチン接種証明書が必要不可欠です! ワクチンの接種期限が1年を過ぎていないかどうかの確認も必ずしておきましょう。ワクチンの証明書や療法食のフード、薬などは忘れてしまうと、現地の病院やお店では手に入れることができないので、忘れずに持っていく必要があります。

あると良いもの

□トイレシート □トイレットペーパー □ペット用消臭・除菌スプレー □粘着クリーナー
□スリングバッグやペットキャリー □カフェマット □ドッグウエア □マナーベルト、マナーパンツ □足拭きタオル 
□温度湿度計 □冷却グッズ □オモチャ □ヤギミルクの粉やペット用スポーツドリンク


車酔いしやすいワンちゃんや、トイレを長く我慢できない子犬の場合には、トイレシートやトイレットペーパー、消臭・除菌スプレーがあると安心です。スリングバッグやペットキャリーは、ペットOKの施設でも「抱っこ」「全身が隠れるバッグ」などの条件がある場所があるので、必要に応じて持って行きましょう。ヤギミルクやペット用のスポーツドリンクは、外であまり水を飲まないワンちゃんにおすすめです。味を付けてあげることで水分をとりやすくなるので、脱水症状や熱中症の予防にもつながります。

秋は旅行がしやすくなる季節ですが、熱中症などまだまだ気を付けたい時期でもあります。
愛犬と車でお出かけをするときは、犬用のドライブグッズを活用したり、事前によく調べ準備をして、安全で快適なドライブを楽しみましょう。

長根あかり

ながね・あかり ドッグトレーナー兼動物介在教育アドバイザー
帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。保護犬だった「アル」とともに犬のトレーニングや動物の行動学を学び、OPDES公認ドッグトレーナー資格、動物介在教育アドバイザー認定資格を取得。『ペトコト』はじめ多くのウェブメディアで「犬猫との暮らし」「犬とのお出かけ」をテーマに執筆するなど、ペットに関する情報を発信。

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