「スーパーの駐車場でいつも焦って失敗します…」そんな悩みは“究極の車庫入れ”で解決!
ビギナーも安心。簡単な車庫入れ方法をマスターしよう!「セーフティ」「エコロジー」「エコノミー」を満たす「スムースドライビング」について学ぶ「運転レッスン」。今回は、苦手な方も多いバックでの車庫入れについて。講師はモータージャーナリストの菰田潔さん、生徒は土屋怜果さんです。
「車庫入れは一発で決めるべき」
この常識を捨てることが上達への第一歩!
バックでの車庫入れに苦手意識があるという方、今回は必見です! 両側に車が止まっている状態の駐車枠に入れるときの独特の緊張感、後続車が待っている状態で素早く駐車しないといけないという焦り……。特に運転ビギナーの中には「車庫入れだけはどうしても苦手」という方も多いようです。
車庫入れは焦らずに「アリさんブレーキ」(「車がギクシャクするんです…」。スムースに操作できない原因を知ろう!)を使用するのが基本。そして、ハンドルがどれだけ切った状態になっているかを常に把握していること(「クルマが思い通りに曲がりません!」。ハンドル操作を再確認)が大切です。
そもそも、車庫入れを「一発で決めなければいけない」ものと思い込んでいませんか? 車庫入れが苦手なのに、操作がシビアになる一発駐車にこだわると、車体が右や左に寄り過ぎて駐車に失敗する可能性が高まるうえ、その失敗を修正するためにやり直しをすることでかえって時間がかかったりします。
今回はビギナーでも安心してできる究極の車庫入れ方法として、「切り返し1回」を前提にした車庫入れについて説明します。車庫入れを一発で決めようとすると、車両の位置取りやハンドル操作、ハンドルを切るタイミングなどが難しくなりますが、切り返しを1回入れることを前提にすると、驚くほど難易度が下がるのです。
正確、安心。究極の車庫入れ方法を動画で解説!
目指す車庫入れは
スピードよりも正確さ
まずは、車庫入れの基本について。左側に駐車枠がある場合について説明します。
1. 駐車する場所を見つけたら、なるべく左側に寄せてゆっくりと進みます。左側に寄せることで、バックする際に右側を広く使用することが可能に。
2. 駐車枠の白線が、運転席から見えたら一旦停止。前後に注意しつつハンドルを右いっぱいにロックするまで切り、アリさんブレーキでゆっくりと前進しながら車のお尻を駐車枠側へ向けます。
3. 左ドアミラーで、左後輪が駐車枠の角付近に来たのを確認したらストップ。左ドアミラーを少し下向きにしておくと運転席から見えにくい左の駐車枠、左側の車との距離感をつかみやすくなります。
4. シフトをRレンジに入れ、ハンドルを左いっぱいに切りバックします。左ドアミラーを確認しながら、駐車枠の角を左後輪がなめるようなイメージでゆっくりとバックしましょう。このとき、左後輪が駐車枠の角を通り過ぎたら、後輪より前が角に近づくことはないので、左隣の車にぶつかる心配はありません。
5. 左右のドアミラーやバックモニターを活用し、駐車枠の中に車のお尻が入ったらハンドルを徐々に直進状態に戻していき、駐車枠に車体がまっすぐ収まったら停止。これで駐車が完了しました。
ベテランドライバーの中には「最初に車を右側に向けずに車庫入れを完遂したい」という方もいるようです。車を右側に振ることには「バックを始める前に、車のお尻を駐車枠に向けることができる」「バックの際に外輪差で右にはみ出す量が減り、右側の車両や壁に接触しにくくなる」「バックを始める時点で駐車枠の角が見えるので、車庫入れが容易」など、メリットは多数。一方で、通路が狭い駐車場では「右側スペースが取りづらい」「後続車の通り抜けができなくなる」などのデメリットもあります。状況に応じて使い分けましょう。
ビギナーも安心!
「切り返しを1回」する車庫入れをマスター
車庫入れの基本を踏まえて、誰でも正確、安心な駐車が可能になる究極の車庫入れ方法をご紹介します。それが「切り返しを1回」することを前提にした車庫入れです。一発で決めなければいけない、と気負うことなく、一度切り返すことを最初から織り込んで駐車を始めることで、車庫入れの難易度が大幅に下がり、車庫入れが苦手な方でも簡単に、駐車枠の真ん中に駐車することが可能になります。
1. 基本の車庫入れと同様、駐車する場所を見つけたら、左側に寄せてゆっくりと進みます。駐車枠の白線が、運転席から見えたらストップ。
2. ハンドルを右いっぱいに切り、ゆっくりと車のお尻を駐車枠側へ向けます。この後に調整するので「だいたい車のお尻が駐車枠のほうを向いた」というくらいの、アバウトな感覚で大丈夫。車のお尻が駐車枠側に向いたら、一旦停止しハンドルを戻します。
3. ハンドルを左に切りつつ、一度目のバック。車の後輪が駐車枠の間に入ったあたりで、停車します。
4. ここで切り返し。ハンドルを右に切って前進し、車体を駐車枠へ真っすぐに向けます。これで、大体の駐車場であれば駐車枠の中央に車が来ます。
5. ハンドルを直進状態に戻し、左右のドアミラー、バックモニターを確認しつつ微調整しながらバック。ちょうどよい位置まで下がったら駐車完了です。
1回の切り返しを前提にすると、一発車庫入れに比べて位置取りやハンドル操作などを比較的アバウトに行えるのが大きなメリット。また、ビギナードライバーには難易度の高い「ハンドルを大きく切った状態でのバック」を、駐車枠の隣の車から離れた状態で行えることで「車をぶつけてしまうのでは……」という不安が大幅に減少するのではないでしょうか。また、一度切り返すことで駐車枠に入る前に車を真っすぐにできるので、左右の間隔の微調整が容易になる、正確に駐車できる……など、メリットはたくさん。ビギナーはもちろん、ベテランドライバーの方もぜひ試してみてください。
JAFMate夏号(2022年7月お届け)では、「1回切り返し車庫入れ」の詳しい図解を掲載。ぜひご覧ください。
JAFでは、交通安全とエコドライブの普及・啓発のためにさまざまな講習会を行っています。また、ウェブを活用した交通安全トレーニングや調査・実験データなど情報を提供しています。ぜひご覧ください。
菰田 潔
こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。