撮影=柴田直行/モデル=土屋怜果

「クルマが思い通りに曲がりません!」。ハンドル操作を再確認

菰田 潔(モータージャーナリスト)

「セーフティ」「エコロジー」「エコノミー」を満たす「スムースドライビング」について伝える運転レッスン。講師は菰田潔さん、生徒は土屋怜果さんです。 今回のお悩みはハンドル操作について。「駐車するとき、なんとなくハンドルを回しているうちに、どのくらい戻せばいいかわからなくなった」「急カーブでハンドルの切り込みが足りず、ガードレールにぶつかりそうになった」なんてことはありませんか? このような人は、ハンドルの切り具合とタイヤの向きの関係が把握できていないことが多いようです。ハンドル操作の基本を再確認してみましょう。

このハンドル操作をしっかりとマスターすると、常にハンドルとタイヤの状態を把握して運転することができるため、無駄な切り返しなどをすることなく、自分の思い通りにクルマを操作することができます。また「切った分だけ戻す」ことが直感的にできるようになることで、曲がった直後にクルマをふらつかせず、スムースに直進状態に戻すことが可能になります。

一目瞭然! ハンドルアクションと車の動きを菰田潔さんが動画で解説

ハンドル操作を
3段階にわけて考える

「タイヤの角度を考えてハンドルを回しましょう」と言われても、運転中に前輪は見えませんから、把握するのは難しいものです。また、「○回転させたから○回転戻す」という方法も、いつも正確に数えられるとは限らないので混乱しがち。そんなときは一連のハンドル操作を、次のように用途別に3つのアクションに分け、持ち手の位置で曲がり具合を考えると理解しやすくなります。

ハンドルの基本の持ち方については、運転レッスンのバックナンバー「ひさしぶりの運転、できるかなぁ……」をご覧ください。手のひらの、親指の付け根の膨らみに近いところで、左手は9時、右手は3時の位置を押すように持つのが基本です。ここでは、車が右に曲がる「右切り」の場合を説明します。

①アクション1…大きな交差点を曲がるとき

まず、左手9時、右手3時の状態から、両手で右に切っていきます。右手が5時の位置を過ぎたらハンドルから手を離し、左手で5時の状態までハンドルを回す。これが「アクション1」です。ハンドル角は最大240度。大きな交差点を曲がるときなどは、アクション1までの操作で十分に曲がることができます。

左手で5時の状態までハンドルを回す写真

上空から見た、車が右折する様子

②アクション2……住宅街の小さな交差点を曲がるとき

つぎに、小回りを利かせたい駐車場内や小さな交差点で使用する「アクション2」。アクション1の状態から、右手で11時の位置を持って、左手を離し右手で3時の位置まで回します。その後、左手は自然に9時の位置に。これで、ハンドルがちょうど1回転(360度)しました。

アクション1の状態から、右手で11時の位置に持ち替えた写真

上空から見た、車が鈍角にUターンする様子

③アクション3……Uターン、駐車などで最大まで切るとき

最後に、左手で9時の位置を持ったまま、右へいっぱいに回す「アクション3」。ハンドルをいっぱいに切った状態の切れ角は、車種によって片側360度から540度程度まで。車庫入れなど、短い距離で鋭く曲がる必要がある場合に使います。

ハンドルをいっぱいに切った状態の写真

上空から見た、車が鋭角にUターンする様子

ハンドルを戻すときも、回したときと同じ場所を持ち「ハンドルが今、どういう状態にあるか」を意識して操作しましょう。また、車によっては最大で720度切れるものや、新しい車の中にはアクション2までしかハンドルが切れないものも。ご自身の車のタイプを把握のうえ、参考にしてください。

どっちにバックするかわからない?
タイヤの向きを考えましょう

運転の経験が浅い方がバックする際には、後ろを向きながらハンドルを操作するため、切る方向が混乱してしまうことがあるようです。バックでも進みたい方向にハンドルを切るのが基本ですが、私は車の頭とお尻の向きを意識して、「ハンドルを切る方向によって車の頭がどちらを向くか」をイメージすることをおすすめします。「右側にバックをするときには、右にハンドルを切ると反時計回りに弧を描き、車の頭が左側を、お尻が右側を向く」と考えると車全体の動きを把握しやすくなり、また車の頭に意識を向けることで外輪差による思わぬ事故を防ぐことにもつながります。

右側にバックをする一連動作の様子

JAFでは、交通安全とエコドライブの普及・啓発のためにさまざまな講習会を行っています。また、ウェブを活用した交通安全トレーニングや調査・実験データなど情報を提供しています。ぜひご覧ください。

菰田 潔

こもだ・きよし モータージャーナリスト、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会長、BOSCH認定CDRアナリスト、JAF交通安全・環境委員会委員など。ドライビングインストラクターとしても、理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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