聞き手・構成=張江浩司 / 編集=赤井大祐 / イラスト=本 秀康

宇多丸激推しのアイドルドライブソング〈hy4_4yh / お家で聴きたいサマードライブ・アンセム〉

免許を持たないライムスター・宇多丸さんが語る音楽とクルマの深い関係
宇多丸(ライムスター)

今月選曲を担当するのは、ライムスターの宇多丸さん。第3回目は自由に外出できなかったコロナ禍“だからこそ”生まれたという一曲。「日本語で書かれたドライブソングのトップクラスの名作」と語ります。

音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを4曲紹介します。

目次

3. hy4_4yh / お家で聴きたいサマードライブ・アンセム

コロナ禍を想像力で突破するエモーションに涙

hy4_4yh(ハイパーヨーヨ)、通称ハイパヨちゃんたちは長年活動してるアイドルであり、ラップグループです。RHYMESTERの弟子を自称してくれているんですけど、2021年のアルバム『十五執念漂流記』から「お家で聴きたいサマードライブ・アンセム」を選びました。このアルバムがリリースされた年に、二人三脚でやってきたプロデューサーの江崎マサルさんが亡くなってしまうんですけど、彼が晩年に残した傑作だと思います。

なぜこの曲が「お家で聴きたい」なのかというと、リリース年を見ればわかる通りコロナ禍ど真ん中なんですね。そもそも外に出られない状況下で、サマーソングを聴きながらドライブする喜び、そんな普通の喜びを高らかに歌うめちゃくちゃ感動的な曲なんです。クレイジーケンバンドの「GT」や荒井由美「中央フリーウェイ」をオマージュしつつ、最後にはいろんな車種が出てくる「自動車ショー歌」の要素や、ORIGINAL LOVEの「夜をぶっとばせ」を思わせる部分もあったり、日本のドライブソングの詰め合わせ状態。

この曲がシングルとしてリリースされた2020年時点ではコロナもどうなるかわからなかったから、失われた楽しい瞬間を思い浮かべるようなエモーションが爆発するんです。明るい曲なんだけど、泣けてしょうがない、みたいな。めちゃくちゃエモい! ある意味で、コロナが生んだ素晴らしい表現の一つだと思いますね。この時点では何も解決していないんだけど、私たちの心の中にある景色は奪えない、という。想像力で状況を突破する感動があります。

長年連載しているアイドルソング時評でも、この年の1位に選びました。ハイパヨちゃんは身近な存在な分、上位にするのも気が引けたんですけど、この曲はちょっと頭一つ抜けてるなと。今でも日本語で書かれたドライブソングのトップクラスの名作だと思ってます。まだ聴いたことのない方はぜひ!

今から免許を取ることはないでしょうけど、クルマ自体はすごく好きなんですよ。いわゆるマッチョでゴツいクルマには興味がないけど、ミニクーパーみたいなかわいいクルマはいいですね。母がかつて乗っていたというスバル360とか、カタチ的には理想かも。スーパーカー世代なので、フェラーリとかを見てるとどうしても現実のクルマは見劣りしちゃう気がするから、「だったらかわいいほうがいい」というのもあるのかもしれない。友人が古いジャガーに乗ってるのを見たりすると「エロい……! 」と思ったりもしますけどね。

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  • オークションサイト、フリマアプリなどでの転売を禁止します。

宇多丸(ライムスター)

うたまる 1969年東京都生まれ。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー、またTBSラジオ『アフター6ジャンクション 2』を担当するラジオパーソナリティー。1989年、大学在学中に「ライムスター」を結成。日本のヒップホップを最初期から開拓・牽引してきた立役者の一人。また2007年にTBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』がスタートすると、趣向を凝らした特集や、愛と本音で語りつくす映画評コーナーが話題を集めて、2009年に第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞。音楽、著書など作品多数。近作にライムスターアルバム『Open The Window』(2023)、同ツアーの映像作品『King of Stage at 日本武道館』(2024)ほか。

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