ガソリン補助金の廃止で今後のユーザー負担はどう変わるのか
暫定税率廃止後のガソリン価格についても予想原油価格高騰に対する政府の対策である補助金が、2025年1月16日からさらに減額となる。その結果、ガソリン価格が一段と上昇し、ユーザーの負担が一層大きくなるだろう。ロシアとウクライナの戦争をはじめ、中東など世界情勢が緊迫している中、ガソリン価格は不安定な状況にある。そこで、ファイナンシャルプランナーの宇野源一氏が、ガソリン補助金が段階的に減額されることによってユーザーの負担はどれくらい増えていくのか、また暫定税率などガソリンを取り巻く不合理な税金制度について解説する。
まずはおさらい。ガソリン補助金とは?
政府によるガソリン補助金について簡単におさらいしよう。この補助金はコロナ禍における経済政策のひとつとして始まったもので、正式名称は「燃料油価格激変緩和補助金」である。この補助金は自動車ユーザーに直接支給されるのではなく、石油元売会社に対し、全国平均ガソリン価格が基準価格以上になった場合に支給する、というもの。
2024年12月19日にこの補助金が減額されたのが記憶に新しいが、2025年1月16日にもさらに減額されることとなった。
ガソリン補助金廃止でユーザーの負担はどれくらい増えるのか
今回の補助金の減額により、ユーザーはどれくらい負担が増えることになるのだろうか。現状のガソリン補助金は「ガソリン小売価格が168円以上になったら一定の条件を設けたうえで支給される」ものだ。この補助金は段階的に減額されることが決まっており、2024年12月19日にガソリン1Lあたり5円減った。さらに今回も5円の減額となるため、この1ヶ月間で1Lあたり10円程度もガソリン価格が値上がりする計算で、ユーザーへの負担が大きくなる。
資源エネルギー庁が公表している、全国平均のレギュラーガソリン価格の推移は以下の通りだ。
2024/11/5 | 174.5円 |
2024/11/11 | 174.7円 |
2024/11/18 | 174.8円 |
2024/11/25 | 174.9円 |
2024/12/2 | 175.4円 |
2024/12/9 | 175.7円 |
2024/12/16 | 175.8円 |
2024/12/23 | 180.6円 |
2025/1/8 | 180.6円 |
2024年11月からのレギュラーガソリン全国平均価格の推移
前回の減額前の2024年12月19日の週以前は、174円から175円程度で推移していたが、以降は5円程度の値上がりとなった。1月16日以降のガソリン小売価格は、おおむね5円程度は上がると予測される。
例えば1回に30L給油する場合、補助金が減りはじめた2024年12月19日以前と比較すると、1月16日からは1回の給油で300円ほど負担が増える計算になる。毎月1回給油する想定であれば年間3,600円程度の負担増となる。仕事などでクルマに乗る機会が多い人にとっては、さらに痛手になるだろう。
だが、今回補助金は減額されるものの、まだ1Lあたり17円の減額は続いている。もしこの補助金が全面的に廃止された場合、今のガソリン価格にそのまま17円上乗せされると1Lあたり195円以上となる計算だ。同じように月に30L給油した場合は1回の給油で510円、年間で6,120円の負担増となる。
つまり、補助金が全て廃止された場合、およそ年間で1万円近くの負担増がユーザーにのしかかってくるのだ。
ガソリンの“暫定税率 ”について考える
ガソリン補助金減額の報道と合わせて注目を浴びているのが、ガソリンの暫定税率である。ご存じのユーザーも多いかと思うが、ユーザーが給油しているガソリンには「ガソリン本体+石油石炭税+ガソリン税+消費税」が含まれている。ガソリン税は「揮発油税」と「地方揮発油税」をあわせた総称で、1Lあたりあわせて53.8円が課され(沖縄は軽減措置あり)、道路整備の財源を補うとの名目で、このうち25.1円が暫定税率(当分の間税率)として本来の課税額に上乗せされている。
例えばレギュラーガソリンの価格が1Lあたり消費税込で180円だったとする。その場合のガソリン代の内訳は以下の通りになる。
ガソリン価格:110.2円、ガソリン税:53.8円、消費税:16円
このガソリン税のあり方については自動車ユーザーなどから疑問視されており、税制において課題となっている。2024年12月11日の、自民党・公明党・国民民主党による合意文書の中に「ガソリン税の暫定税率は廃止する」と明記された。だが、いつまでに廃止すると明言されてはいない。また、この内容について、その後2024年12月27日に閣議決定された「令和7年(2025年)税制改正大綱」には記載がなかった。すなわち、暫定税率は2025年度以降も継続されるのではないか、という見方もできるだろう。
もし、石油元売への補助金が全面廃止されたとしても、暫定税率が撤廃されれば、月に30L給油した場合、ユーザーへの負担が月間750円、年間で9,000円程度も軽減される。
ガソリンの“二重課税”は理不尽! ガソリン税問題の早期決着を求める
さらに、先のシミュレーションを読んで気づいた方もいるかもしれないが、ガソリン1Lあたりの消費税は、ガソリン本体だけでなくガソリン税にも課せられている。税金に税金がかかる「二重課税」となるだろう。JAFなどではこれについても問題訴えしている。ガソリンを入れると二重に税金を取られている、ということにも、より多くの自動車ユーザーに問題意識を持っていただきたい。
高騰するガソリン価格は、クルマを日常的に使っている一般ユーザーだけでなく、物流業界にも大きな痛手となっている。政府には国民生活に対して密に寄り添って対処してもらいたいものだ。
宇野源一
うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。