トラックでもワゴンでもない。初代ハイエースが切り開いた新しい商用車の世界
配送、送迎、ビジネスユースにまで対応。高度経済成長期の日本が求めた万能車とは?初代ハイエースは、都市物流が多様化する高度経済成長期に登場した新世代商用車。モノコック構造(ユニット・コンストラクション方式)のボディーを採用し、低床化と広い積載スペースを実現。さらに前輪独立懸架によって、乗用車に近い乗り心地と運転感覚を追求した。
【1967年10月2日】
都会的な商用車、初代トヨタ「ハイエース」発売!
初代ハイエースは車種展開も画期的で、デリバリーバン(写真)、ワゴン、コミューター、トラックの4系列・11車種をラインアップ。デリバリーバンは乗員と荷物を効率よく収容できる実用性を備えていた
トヨタの初代ハイエースは、日本の商用車市場が大きく転換期を迎えるなかで誕生したモデルである。
ハイエースは、トヨエースより小型で扱いやすいキャブオーバー車として開発された。高度経済成長により都市部の物流は多様化し、店舗配送・小口輸送・企業の業務車など、従来のトラックでは対応しきれない新しい需要が急速に増えていた。さらに都市景観の近代化が進むなかで「清潔でスマートな商用車」への期待も高まり、ハイエースはまさにその要請に応えるべく開発された。
デリバリーバンなどには、商用車として画期的なユニット・コンストラクション方式のボディー構造を採用。ボディーとフレームを一体化することで床面を低くし、広い積載スペースを確保した。とくに乗用ユースを意識した9人乗りの「ワゴン デラックス」では、この低床構造を生かして乗降性と室内のゆとりを高め、当時としては上級のシート表皮や内装仕上げを採用することで“送迎にも使える商用車”という新しい価値を提示した。
スタイルも従来の商用車とは一線を画し、曲面を多用した洗練されたデザインと大きく傾斜したフロントウインドーが都会的な印象を与えた。これは単なる外観の美しさではなく、空力を考慮した設計であり、高速巡航時の安定性にも配慮していた。
エンジンは1.35L・65PSの3P型と、1.5L・70PSの2R型の2種類。強化ガラスのフロントウインドー、無反射メーター、防眩処理などが採用され、商用車として高い水準の安全性を誇った。
初代ハイエースは、物流の近代化と都市生活の変化に応える「新しい時代の商用車」として誕生し、バンからワゴンまで幅広い用途をカバーする多目的性によって、その後の日本の商用車のあり方に大きな影響を与えたモデルである。
【RH10G型 トヨタ・ハイエース ワゴン デラックス】
●全長×全幅×全高:4310×1690×1880mm ●ホイールベース:2350mm ●車両重量:1265kg ●搭載エンジン:2R型(1490cc 水冷直列4気筒OHV)
前輪独立懸架コイルバネの採用により乗り心地は乗用車並みとなった。人間工学に基づくステアリング角度の設定などで、キャブオーバー車にありがちな運転姿勢の違和感を解消した
フロントシートはセパレートの3座タイプ。前後にそれぞれ50mmずつスライドが可能。背もたれは平板ながら中央席も左右とほぼ同サイズを確保している