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構成=リノクリエイティブ/文=片岡英明

カーナビにエアサス、ハイブリッド…日本が生んだ「世界初」の自動車技術10選!

今や世界のスタンダードになった日本発祥の技術たち

多くの分野で世界を席巻してきたメイド・イン・ジャパンの製品や技術。自動車技術や装備も同様で、そのなかには「世界初」となったものが実はとても多い。そんな「日本が生んだ世界初」の自動車技術や機能のなかから注目の10選を紹介します。

目次

1980年代以降は多くの技術や機構が生み出された

1880年代にガソリンエンジンの自動車が誕生してから約140年。その間の自動車の進歩は目覚ましく、次々に新たな技術が誕生し、実用化されてきました。今では当たり前になっているオートマチックトランスミッションもパワーステアリングも、もっと言えばパワーウインドーだってガソリン自動車誕生から50年以上はなかったもの。年々、自動車の性能や技術は向上していますが、とくに電子制御技術が飛躍的に発展した1980年代は顕著で、それまでの夢のようなアイデアが実現できるようになり、この時代以降、今につながる多くの技術や機構が生み出されています。開発者、技術者がより便利に、より快適に、より高性能に、より安全に……と、日夜アイデアを絞り出し、研究してきた結晶。日本が生んだ世界初の自動車技術たちは今の自動車につながっているのです。

世界初の技術-その1 / 三元触媒システム

1977年:トヨタ・クラウン

三元触媒システムを装備した5代目クラウン

どの世代も先進技術を搭載して開発される、トヨタを代表する上級車種のクラウン。厳しい排ガス規制をクリアする触媒システムもいち早く投入された

現在の排ガス装置のルーツは45年以上前の日本で初めて量産化!

1970年代を前にして世界の自動車保有台数が急増するにつれて、日本では光化学スモッグが大きな社会問題になるなど、世界的に大気汚染を抑制する動きが強まった。アメリカではマスキー法が可決され、日本ではその当時、世界一厳しいと言われた昭和53年排出ガス規制が制定された。これに伴い世界中のメーカーが一丸となり排ガス対策に全力を注ぎ、研究を加速させた。

厳しい規制を達成するためにトヨタがたどり着いたのが「三元触媒装置」。この触媒装置にEFIと呼ばれる電子制御燃料噴射装置を組み合わせることで、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)の3成分をひとつの触媒で同時に酸化・還元処理するという画期的なシステムだった。当時の三元触媒は白金ロジウム系を使用したタイプで、エキゾーストマニホールドとマフラーの中間に装備。1977(昭和52)年、トヨタは三元触媒を用いて厳しい排出ガス規制を乗り切ったクラウンを発売。これは量産車としては世界初の快挙だった。この触媒システムは今でもガソリン車に用いられる技術のルーツにもなっている。

世界初の技術-その2 / アジャスタブルショックアブソーバー

1981年:日産・スカイライン

可変式ショックアブソーバーを採用した6代目の日産・スカイライン

日産の象徴的な存在でもあるスポーティーモデルのスカイライン。6代目は走りを支えるサスペンションの開発に力が入れられ、フットセレクターが投入された

乗り味を劇的に変化させる画期的なショックアブソーバー

ショックアブソーバーのピストン内解説イラスト

オリフィスと呼ばれる小穴が閉じた状態ではオイルの移動量が少なくなるため減衰力が上がり、開いた状態では減衰力が低くなる。イラストはオリフィスが開いたソフトの状態

現代ではスポーツモデルを中心に、ショックアブソーバーの減衰力を切り替えて乗り味を変えられる車が数多く存在する。アジャスタブルショックアブソーバーと呼ばれる機構で、これを世界で初めて採用したのが1981(昭和56)年8月に登場した6代目の日産・スカイライン(R30型)だ。「フットセレクター」と名付けられたそれは、センターコンソールに設置されたスイッチを押すだけで、減衰力をハードとソフトに切り替えることができた。

このフットセレクターは2段階切り替え式だったが、1985(昭和60)年夏に登場した第7世代スカイライン(R31型)では、新たにノーマルモードを加え、減衰力を3段階に変えられる3ウェイフットセレクターへと発展。また、21世紀のスカイライン、13代目のV37型ではパーソナルモードを備えた「ドライブモードセレクター」を装備。スタンダード、スポーツ、エコ、スノーの4つのモードに加え、パーソナルモードではドライバーの好みに合わせて96通りものメニューから選べるようになった。

世界初の技術-その3 / カーナビゲーション

1981年:ホンダ・アコード&ビガー

エレクトロ・ジャイロケータの画面

アルパインとの共同開発で誕生したエレクトロ・ジャイロケータ。自車位置を地図上に表示するという画期的な技術だ。当時の価格は29万9000円!

カーナビの元祖は40年以上前に誕生! その後は目覚ましく進歩

世界初の車載用地図型ナビゲーションシステムは、1981(昭和56)年にホンダが開発し、アコードと兄弟車のビガーに搭載可能としたエレクトロ・ジャイロケータである。ホンダは自動車が自車位置情報を獲得する完全自律航法に目を向け、その開発に取り組んできた。まだGPS(全地球測位システム)による位置情報が入手できない時代だったため、自動車量産用としてジャイロセンサーを開発し、タイヤの回転数をもとにした距離センサーによってクルマの移動する方向と距離を算出している。そして、道路上の自車位置を電子データとして置き換え、ディスプレイ画面上に重ねた地図に表示した。この技術は後に、燃料消費量データやルート情報から省燃費ルートの提供を可能とし、環境に配慮した走行ルートを提供するシステムにもつながっていく。

GPS付きカーナビは1990年登場のユーノス・コスモが世界初

ユーノス・コスモに採用されたGPS式カーナビゲーション

CCS(カー・コミュニケーション・システム)の名でユーノス・コスモに搭載されたGPSカーナビゲーション。ただし、現在のようなルートガイド機能はなく、自車位置の地図表示のみだった。ルートガイド機能は1991(平成3)年にトヨタ・クラウンが初めて採用した

カーナビゲーションの技術は1980年代に大きく進歩し、誕生からわずか10年足らずの1990(平成2)年には現代に通じるカーナビゲーションが誕生した。それがGPS式だ。これは衛星からの電波を使ったGPSによる航法とセンサー類による自律航法を組み合わせたもので、自車位置表示の精度を大幅に高めている。このGPS式カーナビゲーションはマツダが三菱電機と共同開発し、同年に発表されたユーノス・コスモに搭載した。また、同年にはパイオニアが世界で初めて汎用タイプのGPS式カーナビを発売している。
その後も進歩は著しく、1992(平成4)年には世界で初めてアイシンがボイスナビの実用化に成功し、トヨタのセルシオに採用。1995(平成7)年には日産がバードビュー表示を世界で初めて実現。

世界初の技術-その4 / 電動格納式ドアミラー

1984年:日産・ローレル

電動格納式ドアミラーを初採用した5代目の日産・ローレル

現代では当たり前の装備のひとつで、多くの軽自動車にも採用されている電動格納式ドアミラーは、1984(昭和59)年に日産・ローレルが初採用した

今ではすっかり当たり前の装備となった電動格納式ドアミラー

後方を確認するアウターミラーは、1900年代初頭から海外の自動車に装着されていた。1949(昭和24)年に装着が義務化された日本は、視線の移動が少なく死角も少ないフェンダーミラーの時代が長かったが、1983(昭和58)年3月に海外と同じようにドアミラーが認可されている。ドアミラーは、ぶつかったときに歩行者がケガをしにくいように、一定以上の力がかかると倒れるような設計となっていた。また、初期の可倒式ドアミラーは手動で折り畳むタイプたった。

だが、1984(昭和59)年10月、日産はローレルをモデルチェンジしてC32型に切り替えたのを機に、ドアミラーの内部に電動モーターを備えた電動格納式ドアミラーを世界で初めて採用。運転席からスイッチ操作でドアミラーの鏡面の向きを変えられることに加え、ワンタッチ格納も可能だった。

ローレルの電動格納式ドアミラーのスイッチ

ダッシュボード(インパネ)右側に配置されたドアミラーのスイッチ。右側のスイッチが電動格納、左側のレバーがミラーの角度調整

カメラを使ったデジタルミラーも登場(2018年:レクサス・ES)

2018(平成30)年秋、量産車として世界で初めてレクサス・ESシリーズにオプション設定され、注目を集めたのがデジタル(電子)アウターミラーだ。これはカメラとモニターを搭載し、カメラが撮影した映像を室内のディスプレイモニターに映し出す画期的なもの。デジタルミラーは、通常のドアミラーよりコンパクトな設計なので空気抵抗を減らすことが可能だ。このほかではバッテリーEVのホンダ・eもデジタルアウターミラーを採用し、全車に標準装備した。

レクサス・ESのカメラとモニター

夜間でも鮮明な画質で映像を映すレクサス・ESのデジタルアウターミラー。安全性向上にも貢献する

世界で初めてデジタルアウターミラーを採用したレクサス・ES

ドアミラーの代わりに左右後方を映し出す小型カメラを搭載することで、風切り音の低減による静粛性の向上も図っているレクサス・ES

世界初の技術-その5 / 四輪操舵システム

1985年:日産・スカイライン(HICAS)
1987年:ホンダ・プレリュード(4WS)

後輪操舵システムを搭載した7代目スカイライン

7代目スカイラインには数多くの最新機能や装備が搭載されたことが大きな話題に。そのひとつが世界で初めて実用化した後輪の向きを変える後輪アクティブステア機構だ

後輪も操舵して新感覚のスポーティーな走りを実現

ステアリングによる前輪の操舵と同じように、後輪にも操舵機構を備え、後輪の動きを積極的にコントロールするのが四輪操舵システム。世界で初めてアクティブに後輪を操舵できるようにしたのが、1985(昭和60)年夏に登場した7代目の日産・スカイラインのHICAS(ハイキャス)。HICASは後輪のクロスメンバーを油圧アクチュエーターで変位させる構造を採用しており、前輪と同位相に制御。低速時には作動させず、時速30km以上で横Gを検知した場合にタイヤそのものではなく、リアサスペンション全体を最大0.5度の範囲内で旋回するイン側に動かすというもの。これにより、安定したアンダーステア状態を作り出し、鋭いハンドリング性能を手に入れ、軽やかなレーンチェンジを実現。コーナリング時のトレース性能も向上させた。

日産HICASの動作イラスト

リアサスペンションを上から見たイラスト。クロスメンバーごと動かすことで後輪に操舵機構を持たせている

ホンダの4WSは後輪を逆位相に動かす世界初の四輪操舵

一方、ステアリングと連動してリアタイヤを逆位相(前輪と逆方向)に動かす四輪操舵システム(4WS)を世界で初めて採用したのも日本メーカー。それが1987(昭和62)年4月に登場したホンダ・プレリュードの4WSだ。ホンダの4WSはステアリングを切る量に応じて最初は後輪を前輪と同じ方向に、途中から前輪と逆の方向に操舵する舵角応動タイプで、ステアリングと前後輪をメカニカルに直結。高速走行時のレーンチェンジなどの小さなハンドル角のときは、後輪を前輪と同じ方向に操舵。また、狭い道や車庫入れなど低速で大きなハンドル角のときは、後輪を前輪と逆方向に操舵する。こうした制御により、俊敏で安定した操縦安定性と高い小回り性能を両立させた。

世界に先立って4WSを採用したホンダ・プレリュード

世界初となる舵角応動タイプの4WSを搭載した3代目プレリュードは、リトラクタブルヘッドライトとスタイリッシュなフォルムで「デートカー」とも呼ばれて人気を集めた

ホンダ4WSのメカニカル図

ホンダの4WSはハンドル操舵角に対応して前輪と同方向から逆方向まで、後輪の舵角方向と切れ角を連続的に変化。車速とハンドル操作量に応じて後輪の最適な切れ角を設定する

3択クイズ!

「自動ブレーキ」を世界で初めて採用した
自動車メーカーは?

答えは次の3つのうちどれ?
(1)アイサイトの名称が日本でも浸透しているスバル
(2)独創性と革新性で世界を驚かせてきたホンダ
(3)世界の自動車のベンチマーク的存在のメルセデス・ベンツ

答え:(2)独創性と革新性で世界を驚かせてきたホンダ

2003年に登場したインスパイアに世界初搭載!

追突を予測しブレーキを制御する「追突軽減ブレーキ」を世界で初めて乗用車に搭載したのはホンダで、2003(平成15)年6月にフルモデルチェンジしたインスパイアに搭載した。「CMS(コリジョン・ミティゲーション・ブレーキ・システム)」と呼ばれ、ミリ波レーダーで前方およそ100mにわたって車両を検知。車間距離や相対速度などから追突の危険性を判断した場合、警報音や体感警報でドライバーに認知させ回避操作を促す。さらに、ドライバーの踏力不足を補うブレーキアシストと乗員拘束力を高めるシートベルト制御や、衝突前のブレーキ制御による速度低減などにより衝突した場合の被害を軽減する。

世界で初めて追突軽減ブレーキを搭載したホンダ・インスパイア

世界で初めて追突軽減ブレーキを搭載したホンダ・インスパイア

世界初の技術-その6 / カードエントリーシステム

1985年:日産・スカイライン

日産の7代目スカイライン

先に紹介した四輪操舵システムも含めて、7代目スカイラインには革新的な先進装備や機能が多数盛り込まれていた

今では当たり前のキーレスのルーツはカードタイプだった!

7代目のR31型スカイラインは1985(昭和60)年8月にモデルチェンジし、新機構を数多く盛り込んで登場した。新しい装備のなかで先進的だったのが、世界初の「カードエントリーシステム」である。当時はキーを鍵穴に差し込んでドアなどの解錠と施錠を行い、エンジンもキーをひねって始動させるのが常識だった。スカイラインの「カードエントリーシステム」は、キャッシュカードと同じくらいのサイズのカードで、これをドライバーが携帯していればドアの解錠と施錠、そしてトランクのオープンをキーなしで行うことができるというもの。

便利で画期的なものだったが、エンジンの始動はキーを使って行うため、カードとキーの両方を携帯する必要があった。同じ時期に登場したホンダのアコードと兄弟車のビガーは、トップグレードにキーレスエントリーシステムを採用して話題になっている。これはキーについているボタンを押してドアの解錠と施錠を行うものだ。カードエントリーシステムと違って多機能キーだけ携行すればいいので、一気に普及した。

日産のカードエントリーシステム

カードキーを携行してアウタードアハンドルに設置されたボタンを押せばドアの解錠、施錠ができるというもので、キーレスエントリーにつながる先進的な装備だった

世界初の技術-その7 / 電子制御エアサスペンション

1986年:トヨタ・ソアラ

1986(昭和61)1月に登場した2代目ソアラ

2代目ソアラの開発では実に101もの新たな技術が投入され、そのなかには世界初や日本初の最先端技術・装備が多数ある。電子制御エアサスペンションもそのひとつ

憧れのエアサスは、先進技術を詰め込んだソアラに搭載

1986(昭和61)年1月に登場した2代目ソアラのメカニズムは革新的で、とくにサスペンションに対するこだわりが強かった。4輪ともダブルウィッシュボーンのサスペンションを採用し、これにTEMSの愛称で呼ばれている可変式の電子制御サスペンションを組み合わせている。ショックアブソーバーの減衰力をソフト、スタンダード、ハードの3段階に切り替えて、快適な乗り心地と優れた操縦安定性を実現した。

だが、これ以上に注目を集めたのが、3段階の自動可変機構を備えた世界初の電子制御エアサスペンションだ。一般的なコイルスプリング式サスペンションは、挙動制御と乗り心地の両立が難しい。そこでスプリングに代えて高圧の空気を封入したエアチャンバーを採用、これがエアサスペンションである。減衰力を自動調整することで車両姿勢の変化を最小限に抑制し、走行状況に適した車高も常に維持する。また、エアスプリングの特性によって、高い接地性だけでなくソフトな乗り心地も達成できた。

電子制御式エアサスペンションのシステムイラスト

車速やステアリング操舵角など8個のセンサーから得た情報を元に、エアサスペンションのバネ定数や減衰力、車高をコンピューターが自動制御する世界初のシステム

世界初の技術-その8 / 電子制御CVT

1987年:スバル・ジャスティ
1999年:日産・セドリック/グロリア(エクストロイドCVT)

1Lエンジンに組み合わされたECVT

エンジンの効率の良いところを生かすことができるCVTは「理想のトランスミッション」と呼ばれ、1930年代から研究・開発されていたが、量産実用化にたどり着いたのはスバルが世界初。このECVTは2つのプーリーを金属ベルトでつないでいる

滑らかな変速と優れた燃費性能を両立させた理想の変速機

自動車のトランスミッション(変速機)は、大小のギヤの組み合わせを変えることで変速を行っていた。だが、ギヤ式ATではギヤ比が固定となるため、燃費やドライバビリティーの向上には限界がある。そこで考えられたのが、特殊なスチールベルトとプーリーを用いたベルト式CVTと呼ばれる無段変速システム。入力(エンジン側)と出力(車輪側)のプーリーの溝幅を広げたり狭めたりしてベルトの有効半径を変えることによって、無段階での変速を実現している。

今はスバルを名乗っている富士重工業が、1987(昭和62)年に世界で初めてコンパクトカーのジャスティに採用したのが、電子制御電磁クラッチ式無段変速機のECVTだ。最も効率の良い変速比を保つため、優れたドライバビリティーに加え、燃費もいい。ただし、クリープ現象がなかったから車庫入れなどの超低速で使いにくいと嘆くユーザーも少なくなかった。だが、この弱点は後にトルクコンバーターを加えて解決している。

大排気量のハイパワー車に対応したエクストロイドCVT

1990年代に入ると他メーカーにもCVTの採用が拡大していくが、大排気量エンジンとの組み合わせには課題が多く、採用は2L以下の小排気量車に限られていた。そんななか、日産は1999(平成11)年に「エクストロイドCVT」を発表。これは従来のベルト式CVTとは異なり、ディスクとパワーローラーの組み合わせにより駆動力を伝達する世界初のシステム。さらに、入出力ディスクとパワーローラーの組み合わせを2つ備えるダブルキャビティ方式により、大トルクの伝達を可能とした。これにより、280馬力のターボエンジンとの組み合わせを実現し、同年に登場したY34型のセドリックとグロリアに搭載された。

1999年に発表されたY34型セドリック

1999年に発表されたY34型セドリック

エクストロイドCVTの内部構造

エクストロイドCVTは、シフトノブやステアリングスイッチで変速が可能なデュアルマチック6速マニュアルモードを設定。スポーティーな楽しい走りも実現した

世界初の技術-その9 / ハイブリッド・システム

1997年:トヨタ・プリウス

世界初の量産乗用ハイブリッドカー、トヨタ・プリウス

今では軽自動車からスポーツカーまで、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド・システムを搭載。その始まりがトヨタ・プリウスだ

世界のハイブリッドカーをけん引する存在になったプリウス

エンジンと電動モーターを動力源とするHEV(Hybrid Electric Vehicle)は、一般にはハイブリッド車と呼ばれている。世界で最初に実用化に成功したのはトヨタだ。1997(平成9)年12月に2モーター式のフルハイブリッド車、プリウスを発売。シリーズ式とパラレル式のいいとこ取りをして効率を高めた「シリーズ・パラレル式」ハイブリッド・システムで、トヨタではTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)と呼んでいる。ちなみに、シリーズ式ハイブリッドとはエンジンで発電して、その電力でモーターを駆動して走行する。一方、パラレル式はエンジンが駆動の役割を果たすとともにモーターも発電と駆動をするが、モーターはエンジンのアシスト役で、マイルドハイブリッドと呼ばれることも多い。

トヨタのTHSはエンジンとモーター、変速機とデフが動力分配機構で連結され、パラレル式と同じように両方の動力源を走行に使うことが可能。また、発電機を積んでいるからシリーズ式と同じようにエンジン走行時に発電したり、エネルギー回生を行うことができる。走行条件によってエンジンとモーターを上手に使い分け、常に効率のよい出力配分で走行できるのが特徴だ。

世界初の技術-その10 / LEDヘッドライト

2007年:レクサス・LS

LEDヘッドライトを初採用したレクサス・LS

レクサスのフラッグシップサルーンとなるLSの4代目。LEDヘッドライトのほか、V8エンジンのハイブリッド・システム+フルタイム4WDも世界で初めて搭載した

採用車が年々増えているLEDヘッドライトはレクサス・LSが初採用

技術の進歩によってヘッドライトは年を追うごとに明るくなっている。20世紀後半から採用が増えたのがキセノンヘッドランプだ。ディスチャージヘッドライトやHIDヘッドランプとも呼ばれ、蛍光灯やネオン管と同じように放電現象を利用して明るく発光。しかも消費電力は少ないし、寿命も長い。

だが、点灯してから最大輝度に達するまでのタイムラグが大きかった。これに代わる光源として注目を集めたのが、日亜化学工業の特許問題で有名になったLED。電気を流すと発光する半導体のことで、別名は発光ダイオード。自動車では1980年代からストップランプに採用されている。ヘッドライトに使わなかったのは光量が足りなかったため。

2007(平成19)年に世界で初めて量産車の光源にLEDを採用したのは、レクサスのフラッグシップサルーンのLS。ヘッドライトのロービームを3眼一体型のプロジェクターランプとパラボラリフレクター(小型反射鏡)とで構成し、光源にLEDを採用した。だが、出力が足りないので、片側に18個ものLEDを配している。ヘッドライトの実力を左右するカット特性は小糸製作所が担当。プロジェクターランプには1灯あたり4個のLEDが上向きに組み込まれ、凸レンズを通して遠方を照らす。その下のパラボラリフレクターは、近い距離を広範囲に照射するように工夫している。

レクサス・LSのヘッドライト

大きな光量と高い輝度が必要とされる自動車のヘッドライトの光源には、白色LEDでは実用化が困難とされていたが、多くの技術と工夫により世界で初めて実現

これからも世界初のメイド・イン・ジャパンに期待

今回は10の技術や機構、装備を取り上げましたが、このほかにも日本メーカーが生み出した「世界初」が数多くあります。海外では「メイド・イン・ジャパン」が製品の品質の高さの証しとして取り上げられることが多いですが、日本の技術者の発想力とそれを実現する技術力も日本の宝。これからも多くの「世界初」が日本から世界に羽ばたいていくことを期待しましょう。

片岡英明

片岡英明さんの顔写真

かたおか・ひであき 自動車専門誌の編集者を経て、フリーの自動車ジャーナリストに転身。クラシックカーやヒストリックカーから最新のスポーツカー、ミニバンやワゴンまで幅広く執筆。なかでも1960年代から80年代のクルマおよび技術に対する造詣が深い。近年はEV(電気自動車)の素晴らしさを知り、レースなども楽しんでいる。

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