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構成=グランマガジン社/文=まるも亜希子

オートハイビームにエコモード、アイドリングストップ…? 意外と知らない車のスイッチあれこれ

車に付いているさまざまなスイッチ、ちゃんと使っていますか?

より安全に、より快適に利用できるよう、車にはさまざまな装備が備わっていて、その数もどんどん増えています。しかし、装備が多く複雑になり過ぎて、どんな効果があるのかもわからずに、一度も押したことのないスイッチがあったりしませんか? 今回はそんな車の「謎のスイッチ類」にスポットを当て、それが何の装備や機能なのか、スイッチを押すとどう変わるのかなどを解説していきましょう。あなたは、どれだけ使いこなせていますか?

目次
  • 各スイッチの解説で紹介している「操作方法」は、一例として紹介しています。車種により異なる場合がありますので、詳しくはご使用車両の取扱説明書等をご確認ください。

Part 1 普段の運転でよく使うスイッチ

運転するときには時間帯や天候、路面の状況などによって必要な機能が変わることがあります。ライトやワイパーなどが代表的ですが、どんな状況でもドライバーが運転に必要な情報を得ることができ、安全に走行できるよう、車両にはさまざまな機能が備わっています。また、地球環境を守るためにできる限り負荷を与えないように走行したり、ドライバーの疲労軽減やうっかりミス防止に貢献する機能も進化しています。ここでは、その中でも普段の運転でよく使うスイッチをピックアップしました。

<これは何のスイッチ?>

オートハイビームのスイッチ

【オートハイビーム】
必要に応じてヘッドライトを自動で上向きに調整

夜間や長いトンネルなど暗い道を走行する際に、前走車や対向車、歩行者や他のモビリティの有無などを検知し、ヘッドライトを自動でハイビームに切り替えて安全な視界を確保してくれます。ドライバーの不安解消や見落としによる事故防止に貢献。周囲の暗さに応じて自動的にヘッドライトを点灯させるオートライトとは別の機能。ハイビームアシストやオートマチックハイビームなど、呼び方はメーカーによってさまざまです。

●操作方法は?
ランプスイッチをハイビームの「A」マークもしくはAUTOの位置にする→スイッチを押してオン→メーター内にオートハイビームのマーク「A」が点灯(トヨタ車の一例)。

ハイビームの自動切り替え説明図

オートハイビームは点灯/消灯だけでなく、対向車のヘッドランプなど前方の明るさを検知し、ハイビームとロービームの切り替えを自動で行ってくれる(図はトヨタのオートマチックハイビーム)

<これは何のスイッチ?>

間欠ワイパースのイッチ

【間欠ワイパー】
雨量に合わせてワイパーの作動間隔を調整できる

雨の日などにフロントガラスの視界を保つため、往復運動で水滴を除去するワイパーは、一般的に低速モードと高速モードが設定され、雨量によって使い分けますが、霧雨などのごく少量の雨量の際にはさらに速度を抑えて間欠的に作動させることができます。数段階の間欠時間があり任意に調節できるものや、フロントガラスの雨量を検知して自動で調節するもの(オートワイパー)もあります。

●操作方法は?
フロントワイパーの場合は、ワイパーレバーを「INT(intermittent)」の位置に合わせる→作動時間の調整ができる車種は、ダイヤルを回して間隔を調整(INT表示がない車もある)。

雨天時にワイパーを動かしている写真

通常の連続してワイパーを動かすモードとは違い、個々の好みや状況に合わせて間隔を調整できるのが間欠式ワイパー。最新の車では走行スピードによって間欠時間を変えられる車速感応間欠ワイパーなどもある

<これは何のスイッチ?>

 電動パーキングのスイッチ

【電動パーキングブレーキ】
電動モーターを使用し、停車中にしっかりと車両を固定

従来のワイヤー式のパーキングブレーキと異なり、モーターを使って停車中のパーキングブレーキを作動させることができます。指で簡単にオンとオフの操作ができ、シフトレバーを「P」に入れると自動的にオンになったり、「D」や「R」に入れてアクセルペダルを踏み込むことで自動的に解除できる車種もあります。

●操作方法は?
スイッチを指で押すまたは指で引くとオン→作動中はメーター内に「P」が点灯(シフトレバーをPに入れると自動でオンになる車種もある)。

駐車場に停車している車

従来のワイヤー方式では、サイドブレーキレバーの引き具合によってブレーキがしっかりかからないケースもあったが、電動パーキングブレーキであれば、常に安定したブレーキ力をかけることが可能。パーキングブレーキのかけ忘れや解除忘れもなくなる

<これは何のスイッチ?>

ブレーキホールドのスイッチ

【ブレーキホールド】
ブレーキペダルから足を離しても停止状態を保持

信号待ちで長時間停止する場合などに、ブレーキペダルから足を離しても停止状態を保持できます。疲労軽減に貢献したり、足の力が知らぬ間に弱まって前進してしまうといったミスを防ぐことができます。再発進するときは、アクセルペダルを踏むと自動的にブレーキが解除され、ブレーキペダルを踏むと再び作動します。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内に「HOLD」の表示が点灯→作動中は表示が点灯する。

オートブレーキホールド機能の作動説明図

停車中にブレーキペダルから足を離しても、停車状態とアイドリングストップが保持される。アクセルを踏めばブレーキが自動で解除され、発進することが可能。信号待ちの間や一時停止している時などに便利(図はホンダのオートブレーキホールド機能)

<これは何のスイッチ?>

アイドリングストップのオフスイッチ

【アイドリングストップ(オフ)】
停車中にエンジンを止めるアイドリングストップ機能をオン/オフ

ブレーキをかけて車両が停止している間はエンジンを止め、ブレーキが解除されると再始動するのがアイドリングストップ。無駄な燃料消費を抑え、燃費アップに貢献しますが、再始動のタイミングが遅れると安全運転の観点からマイナスとなることや、高額な専用バッテリーがユーザーの負担になることから、近年ではアイドリングストップ非搭載の車種も増えています。車種によってオートストップ&ゴー、i-stopなどの呼び方があります。

●操作方法は?
エンジン始動でオン→スイッチを押すとオフになる。

車が信号機で停車している写真

一時停止や信号待ちで停車した際に車両のエンジンを自動的に停止させる機能で、燃料消費と排出ガスを削減し、燃費の向上が期待できる。ブレーキペダルを離せばエンジンは自動でスタートする

Part 2 走行モードを変えるスイッチ

昨今は電子制御技術が進化し、エンジンやサスペンションなどの制御を変えることで、一台の車両でさまざまな走行モードが設定できるようになっています。市街地や渋滞、山道や高速道路と、走行状況に適したモードを選択することで、ドライバーはより運転しやすく、同乗者は快適性がアップするというメリットがあります。また、悪天候の際にも安全運転に適した制御とすることで、安心感を高める走行モードもあります。ここでは主な走行モードのスイッチを紹介しましょう。

<これは何のスイッチ?>

ECO MODEスイッチを押している写真

【ECOモード】
普通に運転しているだけでエコ運転ができる

アクセルペダルを踏み込んだときのスロットル開度を抑制したり、エアコンの効きを弱めたり、車種によって制御に多少の違いはありますが、ドライバーがいつも通りに運転していても車両側の制御で燃費のよい運転に切り替えます。車種によってECONモード、インテリジェントモードなどの呼び方があります。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内にECOの表示が点灯。

ホンダのECONモード説明図

無意識にアクセルペダルを余分に踏み込んでしまった場合でも、自動的に燃料の噴射量を抑え、エンジンの効率が良い領域で制御してくれる(図はホンダECONモード時の発進・加速イメージ)

<これは何のスイッチ?>

スポーツモードのスイッチ

【スポーツモード】
普段よりもパワフルにキビキビと走ることができる

アクセルペダルを踏み込んだときのスロットル開度を俊敏にしたり、サスペンションやダンパー、ステアリングのフィーリングを手応えのあるものに変えたり、エンジンサウンドを大きく響かせたり、車種によって違いはありますが、車両側の制御でパワフルにキビキビと走れる設定に切り替えます。車種によってパワーモードと呼ばれることもあります。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内にSPORTの表示が点灯(車によってはスイッチが点灯する場合もある)

高速道路を走行している写真

よりパワフルに走れるモードで、スポーティーな運転や高速での追い越しを容易にする。ただし、このモードを使用すると燃費が悪化することもあるので多用は禁物。電気自動車の場合は、モーター出力を上げてパワーアップを図る

<これは何のスイッチ?>

EV MODEスイッチ

【EVモード】
バッテリーからの電力のみで走ることができる

ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車で、エンジンを停止して駆動用バッテリーによる電気のみを使ったモーター走行をします。車種によりバッテリー残量の規定を下回ったり、アクセルを強く踏み込んだりすると解除されます。速度に制限のある車種もあります。深夜に住宅街を走るなど、静かに走行したいときにも有効なスイッチです。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内にEVの表示が点灯。

EVモードの駆動方法説明図

バッテリーからの電気によってモーターのみで走行可能に。エンジンを止めて走るのでガソリンを使わずに電気自動車として走行できる(図はホンダのEVモード)

<これは何のスイッチ?>

SNOWスイッチ

【スノーモード】
雪道でスリップしないように車両を制御

雪道などの滑りやすい路面で、スリップしにくく安定した走行ができるようになります。スリップは発進時に起こることが多いため、通常よりもゆっくりとした発進・加速をするように制御し、タイヤが空転しにくくなります。さらに時速約30km以下では、スリップした車輪にブレーキ制御を併用し、より安定したグリップ走行を実現する車種もあります。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内にSNOWの表示が点灯。

スノーモードの制御解説図

雪道やアイスバーンでタイヤの空転を抑えるスノーモードは、滑りやすい路面では過大なエンジントルクを抑制し、発進・加速時にタイヤの空転を抑えることでスムーズな走行をサポートする(図はスズキのスノーモード)

Part 3 運転支援の先進装備スイッチ

すべての自動車メーカーが目指す「交通事故ゼロ」社会へ向けて、運転支援技術はめざましい進化を遂げています。車両に搭載されたカメラやミリ波レーダー、ソナーなどによって車両の周囲を監視し、ドライバーのもう一つの目や頭脳、手足となって事故を未然に防ぐアクティブセーフティ、それでも万が一衝突などが起こってしまった際に、できる限り被害を軽減して乗員や衝突相手を保護するためのパッシブセーフティがあります。また、苦手な運転操作をサポートしてくれる機能もあります。ここでは使う頻度や搭載車両が多いスイッチを紹介しましょう。

<これは何のスイッチ?>

横滑り防止装置のスイッチ

【横滑り防止装置(オフ)】
横滑りを検知して車の挙動を安定させる機能を解除

横滑り防止装置は、カーブを曲がるときに車両がスリップするなどの挙動をセンサーで検知して、自動的にエンジンの出力を抑制したり、空転しているタイヤがあればブレーキをかけて、車体が大きく傾いたり横滑りするのを抑え、安定した姿勢を維持します。車種によって、VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)やVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)などの呼び方があります。しかし、雪道やぬかるみでスタックした場合などは、脱出のためにはある程度勢いよくタイヤを回転させる必要があるので、この機能を一時的に停止できるようになっています。

●操作方法は?
エンジン始動でオン→メーター内に表示が点灯→スイッチを押すとオフ。

横滑り防止装置(VSC)の作動説明図

横滑り防止装置がオンの場合、雨や雪で滑りやすい路面などで横滑りが発生したとき、ブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールし、優れた車両安定性を実現する(図はトヨタVSC)

<これは何のスイッチ?>

衝突軽減ブレーキのスイッチ

【衝突被害軽減ブレーキ(オフ)】
障害物を検知して自動でブレーキをかける機能をオン/オフ

主に時速60km以下の走行時に、カメラやミリ波レーダーなどで前方を検知し、車両や歩行者、自転車などに衝突の危険性があると判断すると、警報によってドライバーにブレーキをかけるように促し、それでも減速しなかった場合には自動でブレーキを作動させ、衝突を回避または万が一衝突した場合の被害を軽減します。2021年から国内で販売される新型車には搭載が義務付けられています。しかし、雨、雪、霧などの悪天下や、道路が非常に泥だらけであるような状況ではセンサーが正確に作動しづらいことがあるため、運転者が自分で制御する必要があると判断した場合、解除スイッチを使って自動ブレーキを無効にできます。

●操作方法は?
エンジン始動でオン→メーター内に衝突被害軽減ブレーキの表示が点灯→スイッチを押すとオフ。

カメラとミリ波レーダー装着位置の解説図

ホンダのCMBS(衝突被害軽減ブレーキ)は、ミリ波レーダーにカメラを組み合わせることによって、前走車と対向車に加え、歩行者も検知することを可能にした(図はホンダCMBS)

<これは何のスイッチ?>

レーンキープアシストのスイッチ

【レーンキープアシスト】
車両が車線の中央を走行するようにステアリング操作をアシスト

高速道路や自動車専用道路を時速60km以上(メーカーによって時速65km以上もあり)で走行している場合に、車両が車線からはみ出しそうになると中央に戻るようにステアリング制御が作動します。先の見えにくい急カーブでステアリング操作が間に合わなかったり、よそ見や居眠りでうっかり車線からはみ出してしまうことによる事故防止に貢献します。車種によって、ナビゲーションシステムの地図情報に連動してステアリング操作をアシストするものもあります。しかし、雪道などの滑りやすい路面、工事区間、白線がよく見えない区間などでは、その機能を解除したほうが安全な場合もあります。

●操作方法は?
スイッチを押すとメーター内に車線のイラスト表示が点灯→スイッチを押すとオンまたはオフ(車種により異なります)→作動中は車線のイラストが別の色に点灯。

レーンキープアシストの作動説明図

マツダのレーンキープアシストシステムには、アシスト開始までの反応を遅くした「逸脱回避支援」機能と早めのアシストを行う「ライントレース」機能の2種類がある。いずれも約時速60km以上で走行中、フロントガラスに設置したカメラで車線の区画線を認識する(図はマツダのレーンキープアシストシステム)

<これは何のスイッチ?>

クルーズコントールのスイッチレバー

【アダプティブ・クルーズコントロール】
任意に設定した速度を維持して走行ができる

クルーズコントロールは、高速道路や自動車専用道路を走行中に、アクセルペダルから足を離したままでも任意に設定した速度を維持して走行することができます。さらに進化したアダプティブ・クルーズコントロールでは、設定速度の範囲内で前走車と一定の車間距離を保ちながら、加速と減速を自動で行います。長距離でも足をラクにして走行できるため、疲労軽減やステアリング操作に集中できるというメリットがあります。

●操作方法は?
スイッチを押すとオン→メーター内に表示が点灯→スイッチを押した時点の速度が設定される→必要に応じて速度アップ、ダウンのスイッチを押して任意の速度に合わせる→ブレーキを踏むか、キャンセルスイッチを押すとオフ。

アダプティブ・クルーズ・コントロールの機能説明図

日産のインテリジェント・クルーズコントロールは、先行車との距離を測定し運転者がセットした車速を上限として、システムがアクセルとブレーキの操作を行い、車速に応じた車間距離を保ちながら走行(図は日産のインテリジェント・クルーズコントロール)

<これは何のスイッチ?>

パーキングアシストのスイッチ

【パーキングアシスト】
車庫入れ時のペダルやステアリング操作を自動でアシスト

あらかじめ駐車したい駐車枠の近くに寄せて、操作パネルなどで駐車枠の設定をする必要があります。その後、スイッチを押すとペダルやステアリングから手足を離した状態で、車両が自動制御でステアリングとペダルの操作を行い(シフト操作は手動)、駐車枠に収めます。車種によってはシフト操作やパーキングブレーキまで自動で行うものもあります。呼び方はアドバンストパーク、プロパイロットパーキングなどメーカーによってさまざまです。

●操作方法は?
駐車したい枠の横に車両を止める→スイッチを押すと車両が駐車枠を検知→ディスプレイに駐車枠の設定表示が出る→指示通りにスイッチを押す→設定完了後はディスプレイの指示通りに手足を離し駐車開始→終了の合図でブレーキを踏む、またはシフトレバーを「P」に入れる→駐車中にブレーキを踏むとキャンセル。

パーキンアシスト機能の説明図

区画線で区切られた駐車場での縦列駐車・出庫、並列駐車だけでなく、事前に駐車位置を登録することで、区画線のない駐車場や隣接車両がない環境下での駐車操作もアシスト可能となっている(図はトヨタのアシスト可能な駐車方法)

まるも亜希子

まるも亜希子さんの顔写真

まるも・あきこ 「クルマのある毎日のリアル」をイチ生活者の視点から、TV、YouTube、ラジオ、雑誌、ebなどさまざまなメディアで届けるカーライフ・ジャーナリスト。トークショーやイベントのMCも務め、フレンドリーなキャラがトレードマークで「業界の笑い袋」の異名をとる。女性ドライバーをはじめ運転しない人にも伝わりやすい「今日からできる交通安全」をテーマに、交通安全応援ユニット「OKISHU」(オキシュー)として、イベント等の企画・プロデュース・実演をこなしている。2004年、2005年にサハラ砂漠ラリーに参戦し完走。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(2006年〜)。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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