ABS、ASV、AFS、ZEV…? 自動車のアルファベット3文字用語クイズ
これがわかれば、あなたもクルマ通!? 初級編から上級編まで全15問にチャレンジ!ABS、ASV、AFS……。装備や機能をはじめ、自動車の用語にはアルファベット3文字で表記されるものが実に多く、それが何なのか、とてもわかりにくいんです。しかも、どんどん新しい3文字用語が増えていって混乱するばかり。そんな“今さら聞けない”アルファベット3文字の自動車用語を、「初級」「中級」「上級」の3つのレベルに分け、クイズ形式でわかりやすく解説していきましょう。
まずは軽く腕試し! 〈初級編〉
第1問:ABS、第2問:AWD、第3問:ETC、 第4問:GPS、 第5問:PHV
第1問:ABS
ヒント:安全にクルマを止めるために欠かせない装置
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答え:
Anti-lock Brake System
アンチロック・ブレーキ・システム緊急時などにブレーキペダルを強く踏み込んだとき、タイヤがロックしてスリップするのを防ぐ電子制御装置。短時間にブレーキ力の強弱を自動的に繰り返し、タイヤが適切に路面をとらえ、減速できるようにするとともに、ハンドルの利きを維持して危険を回避できるようにします。
第2問:AWD
ヒント:前だけ? 後ろだけ? それとも全部?
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答え:
All Wheel Drive
オール・ホイール・ドライブ(全輪駆動)4輪すべてのタイヤで駆動する駆動方式です。したがって、クルマの場合は4輪駆動(4WD)と表現されることも多くあります。元は、未舗装の悪路でもクルマを走らせることができる駆動方式として開発されましたが、舗装路でより高速に、また雪道や雨に濡れた道路でもより安全に走るための駆動方式として、1980年代から採用が広がりました。
第3問:ETC
ヒント:小銭の用意がなくても慌てずに済みます
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答え:
Electronic Toll Collection system
エレクトロニック・トール・コレクション・システム
(電子料金収受システム)高速道路など有料道路の料金の支払いを、料金所のアンテナと車載器の間で無線通信することによって現金ではなく自動決済で行うシステムです。クレジットカード決済で料金を自動収受することにより、料金所での渋滞をなくし、交通の流れを改善することに役立ちます。1990年代末からの試験運用を経て、2001年から導入が始まり、現在の利用率は90%※を超えています。また、近年は高速道路のサービスエリアから一般道路に出入りできるETC搭載車専用通路(スマートインターチェンジ)が設けられるなど、利便性がとても高いことも特徴。
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※国土交通省発表ETC利用状況(令和5年9月)より
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※国土交通省発表ETC利用状況(令和5年9月)より
第4問:GPS
ヒント:道に迷わず安心です
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答え:
Global Positioning System
グルーバル・ポジショニング・システム
(全地球測位システム)地球全体を衛星によって測位し、現在位置を特定するシステムです。アメリカ合衆国の24基の人工衛星を使っています。当初は、1970年代にアメリカの軍事用として開発が始まりました。現在では民間に開放され、カーナビゲーションのほかスマートフォンなどでも活用されています。似たような衛星測位システムに準天頂衛星システムと呼ばれる日本の「みちびき」があり、これは日本とアジア太平洋地域限定で、GPS電波が届きにくい山間部や高層ビル街での精度を向上させています。
第5問:PHV
ヒント:一定時間、電気自動車のように走れます
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答え:
Plug-in Hybrid Vehicle
プラグイン・ハイブリッド・ヴィークルPHVとは、外部からの充電が可能なハイブリッド車(HV)のこと。エンジンとモーターを使い、効率の良い走行をするハイブリッド車の機能に、電気自動車(EV)のようにモーターだけで走行できる機能を追加したHVです。あらかじめ車載バッテリーに外部から充電することにより、モーターだけの走行が可能になります。長距離移動する際はHVとして走れるので、途中充電の気兼ねなく遠出もできます。また、車載バッテリーの電力で電化製品を使うこともできて便利。世界的には「PHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ヴィークル)」と呼ばれる傾向にあります。
EVやPHVは駆動用バッテリーの電力をV2H(Vehicle to Home)機器を介して家庭用電源としても利用可能。災害時などの備えとしても安心(写真は三菱エクリプスクロスPHEVの場合の一例)
知っていれば少し自慢できる!? 〈中級編〉
第6問:ASV、第7問:CVT、第8問:ESC、第9問:FCV、第10問:HUD
第6問:ASV
ヒント:先進装備で運転を支援します
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答え:
Advanced Safety Vehicle
アドバンスト・セーフティ・ヴィークル
(先進安全自動車)電子制御や検知機能を活用した先進技術を利用して、ドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載したクルマのことです。1991年から日本での開発が始まり、自動車メーカーだけでなく、学識経験者や関係省庁も加わり、国土交通省が推進しています。衝突による被害を軽減する衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置など多くの機能があり、これらの先進安全運転支援技術の機能を総合して、トヨタは「セーフティセンス」、日産は「プロパイロット」、スバルは「アイサイト」、ホンダは「ホンダセンシング」と呼んでいます。また、機能や性能だけでなく、運転者の扱いやすさなども検討されています。
たとえば衝突被害軽減ブレーキもクルマだけでなく人や自転車を検知できるようになるなど、技術や機能は日々進化している
第7問:CVT
ヒント:滑らかでスムーズな変速が魅力
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答え:
Continuously Variable Transmission
コンティニュアスリー・ヴァリアブル・トランスミッション
(無段変速機)エンジンは、最大の力を発揮できる回転範囲が限られるため、低速から高速まで自在に速度を調節するには変速機が必要です。CVTは一般的な大小の歯車を組み合わせて変速する機構とは違い、ベルトやチェーンと滑車を利用して連続的に速度を上下させることができます。無段変速なので、一般的なAT(オートマチック・トランスミッション)のような変速時のショックがないため乗り心地が良く、またエンジンの力を効率的に活用できるので燃費も改善することができます。
第8問:ESC
ヒント:走行安定性を高める安心の機能
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答え:
Electronic Stability Control
エレクトロニック・スタビリティ・コントロール
(横滑り防止装置)タイヤの横滑りを抑え、走行安定性を高める電子制御機能です。ABSが装備されるようになったことで、4つのタイヤの回転を個別に制御できるようになり、特にカーブを曲がる際にタイヤが横滑りしそうな場面で必要なタイヤにブレーキをかけ、クルマの姿勢が乱れるのを防ぎます。併せて、エンジンの出力も抑えることで、速度を下げ、カーブを曲がり切れるように促します。トヨタではVSC(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)、日産ではVDC(ヴィークル・ダイナミクス・コントロール)、ホンダはVSA(ヴィークル・スタビリティ・アシスト)など、自動車メーカーによって呼称が異なります。
第9問:FCV
ヒント:有害な排出ガスがゼロのクルマです
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答え:
Fuel Cell Vehicle
フューエル・セル・ヴィークル
(燃料電池自動車)燃料電池は車載の水素と空気中の酸素の化学反応から電気を取り出す発電機構で、その電気でモーターを駆動して走ります。化学反応により水蒸気を排出しますが、電気自動車(EV)と同じように二酸化炭素の排出はゼロで、「究極のエコカー」とも呼ばれています。現在、日本の自動車メーカーでFCVを一般的に販売しているのはトヨタだけで、MIRAIとクラウンFCEVがそれ。トヨタは現在、FCEV(フューエル・セル・エレクトリック・ヴィークル)と呼んでいます。普及のカギは、水素ステーションの拡充にあります。
第10問:HUD
ヒント:車両情報が見やすくなります
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答え:
Head-Up Display
ヘッド・アップ・ディスプレイフロントウインドーに情報を映し出す機能です。メーターパネルやカーナビゲーション画面に表示される情報の一部(走行速度やルート情報)、制限速度をはじめとする道路標識情報などをフロントウインドーに映すことにより、運転者の視線の移動や、目の焦点の遠近調節を減らし、前方の危険の見落としなどを予防する効果があります。元は軍事技術で戦闘機に採用され、クルマには1980年代後半から採用例があります。
近年、進歩が目覚ましい機能のひとつで、より多くの情報を表示することが可能になっている(写真は日産エクストレイルのHUD)
これがわかればクルマ通! 〈上級編〉
第11問:ACC、第12問:AFS、第13問:ELR、第14問:HMI、第15問:ZEV
第11問:ACC
ヒント:高速道路で重宝します
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答え:
Adaptive Cruise Control
アダプティブ・クルーズ・コントロール
(定速走行・車間距離制御装置)前を走るクルマとの車間距離を自動調節しながら、ドライバーがアクセルペダルを操作しなくても設定した速度内で加減速して走り続けられる機能。一定の速度を自動的に保って走る機能は、アメリカで1950年代後半から採用されています。国土が広く移動時間の長いアメリカならではの発明です。そのうえで、前を走るクルマとの車間距離を保ち、安全性を高めた機能として、ASV技術の進展により実現。今では先行車に続いて停車まで行える全車速追従機能まで実用化されています。
第12問:AFS
ヒント:夜間走行の視界をサポート
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答え:
Adaptive Front-Lighting System
アダプティブ・フロントライティング・システム
(配光可変型前照灯システム)ハンドル操作に応じて、ヘッドライトの照射方向を進行方向に動かす機能です。街灯の整備された都市や高速道路などでは必要ないかもしれませんが、郊外のカーブや交差点では、暗闇によって死角となる進行方向へ照明が当たることで、歩行者などの存在をより発見しやすくなり、安全運転につながる安心機能です。
第13問:ELR
ヒント:シートベルトの装置のひとつ
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答え:
Emergency Locking Retractor
エマージェンシー・ロッキング・リトラクター
(緊急ロック式巻き取り装置)衝突時など強いG(加速度)がかかったときに、シートベルトの肩ベルトを瞬時に巻き上げることにより、適正なベルト装着状態にして体を拘束する機能です。シートベルトを装着する際は自由にベルトの長さを調節でき、通常は若干のゆるみをもたせることができるため、ベルト装着による窮屈さを和らげます。ただし、装着の際に腰ベルトを正しい位置に添わせることや、肩ベルトの高さ調節があれば適切な位置に設定するなど、正確な装着の仕方が前提となります。
第14問:HMI
ヒント:操作性や視認性が重要
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答え:
Human Machine Interface
ヒューマン・マシン・インターフェース人と機械(ここではクルマ)を結びつける技術のこと。たとえばメーター表示のわかりやすさやスイッチ操作のしやすさなど、古くから人とクルマとのコミュニケーションの円滑化を重視して開発されています。とくに情報・通信の利用が進む現代は、画面操作などを活用し、従来型の物理スイッチが省かれるなどの変化があり、また、渋滞や事故などの外部情報を入手する重要度も高まっています。現代の新たな手法での操作性や情報確認のしやすさが求められ、単に機械的・機能的な良し悪しだけでなく、最新の機器や仮想現実なども加味しながら、いかに人の感性に合い、素早く的確に認識・操作できるかを磨く開発が求められています。
特に先進性をアピールするEVは、運転席まわりにタッチパネル式の大型ディスプレイを配置し、そこに機能を集約して物理スイッチを廃止するケースが多い。これもHMI化の流れのひとつだ
第15問:ZEV
ヒント:無公害
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答え:
Zero Emission Vehicle
ゼロ・エミッション・ヴィークル
(無公害車)走行する際に有害物質をまったく排出しないクルマのこと。温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)をはじめ、エンジン車などの排気に含まれる有害物質が皆無なので、大気汚染の防止にもつながります。ZEVに分類されるのはEV(電気自動車)とFCV(燃料電池自動車)で、つまり排気がないクルマ。FCVは水蒸気を排出しますが、無害であるためZEVにカテゴライズされます。日産リーフをはじめ、EVは各自動車メーカーが力を入れている分野でもあります。
あなたは何問正解できた?
クルマの技術は日進月歩。次々に新しい機能が誕生しています。つまり、3文字アルファベットの自動車用語も増えていくいっぽう。さらに4文字アルファベットもあるので大変。ですが、これらの用語を知っていると、もっと現代のクルマのことがよくわかって面白いのです。
御堀直嗣
みほり・なおつぐ 大学卒業後はレースでも活躍し、その後1984年からフリーのモータージャーナリストに。自動車の趣味性や、工業製品としての側面を語るだけではなく、自動車社会・文化・経済を総合的に捉える丁寧かつ的確な解説に定評がある。また、日本EVクラブの副代表も務め、EVや環境・エネルギー分野にも精通する。