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チェリーテール・バナナテール・ロケットサニー……“電球時代”を代表するテールランプ15選

個性的デザインも多かった! 20世紀テールランプ電球世代

2024.01.03

文・構成=ダズ

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1年点検を受けると、だれにでもチャンス

渋滞時、ため息をつきながら周囲を見ると、さまざまな形のテールランプが目に入ります。現在テールランプと言えば赤い尾灯を指しますが、かつてはひとつの赤いランプがブレーキランプとウインカーを兼ねるなど多くの役割を担っていた時代がありました。現代は多くのクルマがLEDを採用しており、ウインカーランプは独立し、電球だった時代と比べるとデザインの幅も広がりました。しかし電球時代には、その時代ならではの魅力と個性が。今回は、電球時代のテールランプのデザインに注目! 個性豊かな電球テールランプをお楽しみください。

テールランプの役割って?

渋滞列のテールランプ

テールランプには、道路運送車両の保安基準で定められた規定があります。デザインの前に、まずは同法で定められた規定をクリアしていることが大前提。尾灯(テールランプ)については、
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第37条
「第1項
車両等は、夜間、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。
第2項
尾灯は、夜間に自動車の後方にある他の交通に当該自動車の幅(二輪自動車にあつては、当該自動車の存在)を示すことができ、かつ、その照射光線が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
第3項
尾灯は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。(抜粋)」
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これに対し、取り付け位置や明るさなどの細かなルールは、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第128条にて「尾灯の灯光の色は赤色、夜間にその後方300mの距離から点灯を確認できるものであり、かつ、その照射光線は、他の交通を妨げないものであること。その照明部の上縁の高さが地上2.1m以下、下縁の高さが地上0.35m以上となるように取り付けられていること(抜粋)」などが定められています。
各自動車メーカーは、これらの詳細な規定をクリアしつつ、日夜個性あるデザインに挑んでいることがわかります。

テールランプの発祥と変遷

トヨダ・AA型乗用車(1936年登場)

トヨダ・AA型乗用車(1936年登場)

豊田自動織機製作所 自動車部(現トヨタ)が1936年に発売した「AA型」を見ると、すでにテールランプが備わっています。また、国内の老舗自動車用電装品(ランプ)メーカーである市光工業によれば、1916年に前身の市川製作所が尾灯の製造販売をしているとのこと。少なくとも100年以上前から日本国内にもテールランプが存在していたことになります。テールランプはそもそも走行の安全を守るための部品なので、あまりにも奇抜すぎる変化球的デザインは少ないものの、1973年に法規が変わる前はレールランプと共同の赤いウインカーも許されているなど、時代によって定番は移り変わってきました。
ここからは、今回取り上げる電球時代のリアランプデザインの移り変わりを見ていきましょう。

覚えてますか? 個性的テールランプ15選

マツダ・コスモスポーツ(1967年登場)

マツダ・コスモスポーツ後部

1967年に登場したマツダのスポーツカー、コスモスポーツ。リアバンパーで上下に分割された独特なデザインのテールランプを採用。ウインカーと兼用になっていて、ウインカーをONにすると赤く点滅する

マツダ・コスモスポーツ前面

東洋工業(現マツダ)が初めて発売したロータリーエンジン搭載車。世界初の2ローター式ロータリーエンジンで、6年の歳月をかけて実用化。低くて未来的なスタイルは東洋工業初の社内デザイナー作

マツダ・ファミリア ロータリークーペ(1968年登場)

マツダ・ファミリア ロータリークーペ後面

それぞれのライトにメッキリングが採用され、独立した丸型4灯テールランプを採用した2代目ファミリアのロータリークーペ。内側のテールランプ下半分には、バックランプが入り、ウインカーはオレンジではなく赤い部分が点滅する

マツダ・ファミリア ロータリークーペ前面

ロータリーエンジン搭載車第2弾として登場したファミリア ロータリークーペ。最高出力は100psと、当時の2Lクラス同等のパワーを発揮。価格はコスモスポーツの半分以下で多くの人気を得た

ダットサン(日産)・ブルーバード(1967年登場)

ダットサン・ブルーバード側面後方

一見、ごく普通のデザインのテールランプだが、1968年に追加登場したスポーツグレードのSSS(スーパースポーツセダン)、及びSSSクーペに装備されていたのは、現代のLED採用のウインカーではおなじみの、2014年に認可された流れるように点灯するシーケンシャルウインカー。「ハミングテール」と名付けられた

日産・ブルーバード側面前方

510(ゴーイチマル)と呼ばれ、今なお人気の3代目ブルーバード(1967年登場)。1970年の第18回東アフリカサファリラリーでは総合優勝を飾るなど、モータースポーツシーンでも活躍した

日産・スカイライン(1968年登場・3代目)

日産・スカイライン3代目後面

角目4灯のシンプルなテールランプを取り入れたのは3代目スカイライン、C10型。1973年以前はウインカー=オレンジ色という法規はなく、今のようなオレンジ色のレンズや電球は使わず、赤いテールランプが点滅するクルマが多かった

日産スカイライン3代目前面

特徴的な角ばった形から「ハコスカ」の愛称で人気に。1969年には量産車としては、世界で初めて4バルブDOHC機構を持った2LエンジンS20型を搭載した初代GT-Rが登場するなど、後継モデルに大きな影響を与えたクルマとなった

三菱・コルト800(1965年登場)

三菱・コルト800後面

デザインはシンプルな丸テールだが、ランプの直上にはサイドのショルダーラインからつながる航空機の尾翼のような「フィンデザイン」を採用。1950年代のアメ車を彷彿(ほうふつ)とさせる洒落(しゃれ)たシルエットだ

三菱・コルト800前面

三菱重工業(現三菱自動車工業)が販売していたコルト800は、843㏄の2サイクルエンジンを採用。2ドアで、流線形が美しいファストバックという独特なスタイリングだった

トヨタ・カリーナセダン(1970年登場)

トヨタ・カリーナセダン後面

縦基調で上まで回り込んだ個性的なテールランプのデザイン。当時のカタログには「エポーレットタイプのリヤコンビネーションランプ。車幅いっぱい、ボデーラインにそって流れるデザインのため、後ろからも脇からも上からも確認しやすく安全です。」と表記されている

トヨタ・カリーナセダン

1970年、セリカと同時発売した初代カリーナセダン。機構面の多くをセリカと共有したセミファストバック(トランク上部のオーバーハングが短い)スタイルで、スポーティなセダンとして人気を博した。1972年に追加された2ドアハードトップのテールランプは横長のデザインに変更された

日産・チェリークーペ(1971年登場)

日産・チェリークーペ後面

チェリークーペのリアビューは、真ん中に長方形のウインカーを備えた独特な丸型テールランプが特徴。チェリーテールと呼ばれ、ケンメリやジャパンなど丸テール車のカスタムにも流用された

日産・チェリークーペ前面

1970年に発売された初代チェリーの翌年に、セミファストバックデザインのチェリークーペが追加された。1973年にはオーバーフェンダーを備えた「クーペX-1・R」というスポーツモデルも登場

日産・スカイライン(1972年登場・4代目)

スカイライン4代目後面

スカイラインのアイデンティティが丸目4灯テールとなったのは、通称“ケンメリ”と呼ばれる4代目、C110型から。丸いリアライトは2重構造になっていて、車端側の丸い部分はウインカー、内側はバックランプが収まる。リング部分は尾灯及びブレーキランプ

4代目スカイライン前面

1972年に登場した4代目スカイラインは、キャッチコピー「ケンとメリーのスカイライン」からケンメリと呼ばれるように。2ドアハードトップ、4ドアセダン、ワゴン、バンがあったが、4ドアセダンはヨンメリと呼ばれることも

トヨタ・セリカリフトバック(1973年登場・初代)

トヨタ・セリカリフトバック後面

テールエンドは縦方向に5分割されたデザインで、その見た目から「バナナテール」や「バナナセリカ」と呼ばれていた。外側がウインカー、内側4本が尾灯&ブレーキランプとなる。1975年のマイナーチェンジで5分割から3分割へとデザイン変更(写真=荒川正幸)

トヨタ・セリカリフトバック前面

1973年4月、セリカのラインアップに追加されたファストバックシルエットの3ドアクーペ。多用途に使えるスポーティ車として開発され、リアシートバックを倒すと、カーゴスペースにはサーフボードやキャンプ用品などの積載も可能だった(写真=荒川正幸)

ダットサン(日産)・サニー(1973年登場)

ダットサン(日産) サニー後面

シルバー加飾のガーニッシュ(装飾パーツ)の中に埋め込まれた左右の3連丸テールは3代目サニークーペの特徴。そのデザインがロケットの噴射口に見えることで「ロケットサニー」とも呼ばれていた

日産・ダットサン サニー前面

3代目ダットサン サニーは当時の代表的ファミリーカー。2ドア/4ドアセダン、3ドアクーペ、バンが設定された。クーペは大開口のリアゲートを持つハッチバックスタイルで、大型化するレジャー用品の積載需要に応えた

マツダ・コスモAP(1975年登場)

マツダ・コスモAP後面

1979年のマイナーチェンジを迎えるまで、コスモAPの後方ランプは、上部にウインカーを配置した個性的なL字デザインを採用。スペシャルティカーらしいワイドなボディラインを強調するデザイン

マツダ・コスモAP前面

コスモAPは、ロングノーズ&ショートデッキの国産車離れしたシルエットや、13Bロータリーエンジンを中心とした高い動力性能と豪華な内装で人気に。CMに登場した「赤いコスモ」が注目を集め、高級車では珍しく赤が人気カラーとなった

日産・エクサ(1986年登場)

日産・エクサ後面

エクサのテールランプは、1983年、日産デザインインターナショナル(現日産デザインアメリカ)が手掛けたコンセプトカー第1号の「NX-21」でお披露目された、ダイアゴナル(対角線)スリットデザインを採用。このデザインは、エクサのリアスピーカーグリルやペダルパッドにも採用されていた

日産・エクサ側面

個性的なパーソナル・スペシャルティカーとして開発された2代目「エクサ」。クーペとキャノピーの2タイプのボディを用意し、どちらもモジュールを脱着することで、北米向けではTバールーフ、フルオープンなどさまざまなオープンボディを楽しめた

日産・パオ(1989年登場)

日産・パオ後面

1980年代後半ともなると、さまざまなデザインのテールランプが登場。そのなかでも際立った個性を放ったのが日産・パオのシンプルな縦3連テール。上からウインカー、ブレーキランプ、バックランプと並ぶ姿は実にかわいらしい

日産・パオ前面

Be-1から始まった日産のパイクカーシリーズの第2弾。1987年開催の第27回東京モーターショーに参考出品したモデルを可能な限り忠実に再現し、「リゾート気分を感じさせるアドベンチャー感覚溢れるクルマ」をテーマに開発された

日産・レパードJ.フェリー(1992年登場)

日産・レパードJ.フェリー後面

同時期のブルーバード同様、日産デザインインターナショナル(現日産デザインアメリカ)によってデザインされた、丸味を帯びた尻下がりなシルエットが特徴。それに合わせてテールランプも両端に向かって絞られていく個性的なデザインが採用された

日産・レパードJフェリー前面

それまでのレパードとは異なり、中型車クラスの新規車種として「乗る人のセンスを語る新高級パーソナルセダン」をコンセプトに高級4ドアセダンとして登場。北米向けには「インフィニティ・J30」として販売されていた

トヨタ・クラウンマジェスタ(1995年登場・2代目)

トヨタ・クラウンマジェスタ後面

エッジを効かせたシャープなデザインを採用した2代目マジェスタ。テールランプも、初代はクラウン同様シンプルな横長のテールだったが、2代目はボディラインに合わせて縦に切られたくさび型のデザイン。まるで猫やうさぎの耳のよう

トヨタ・クラウンマジェスタ前面

クラウンの上級モデルとして登場したマジェスタ。2代目は4Lエンジンや、スカイフック制御(路面状況・車速に応じた減衰力の連続制御)採用のエアサス、重厚なエクステリアデザインなど、同時デビューの10代目クラウンとはプラットフォームを共有しつつも差別化が図られていた

今どきのリアランプはLEDでデザインも緻密

トヨタ・ハリアー

今や主流となった、トヨタ・ハリアーの一文字テール

近年のリアランプは、多くの車種でLEDが採用されています。これにより従来にはない細長いデザインや、光源自体にデザインを取り入れるなど、光源周辺のデザインに自由度が増してきました。トヨタ・ハリアーは左右ランプをつなぐよう一文字に光り、ダイハツ・キャストは八角形に光るテールランプを採用するなど、挑戦的なデザインのものが登場。規定の中で、より個性が試される時代はこれからも続くことでしょう。

ダイハツ・キャスト

後続車の目を引くダイハツ・キャストの八角形のテールランプ


いかがでしたか? 「20世紀テールランプ電球世代」を代表する、懐かしい個性派テールランプをご紹介しました。昔はテールランプのデザインからそのクルマの愛称が付いているような車種もあったんですね。近年はLEDにより、さらにデザインの幅が広がっています。皆さんも渋滞中などには、イライラすることなく(また、十分に安全に配慮していただいた上で!)周囲のクルマの個性的なテールデザインを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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