雨の峠道のコーナリングを攻める、シルバーの三菱ミラージュ サイボーグZR。流し撮りで躍動感を表現
文=下野康史/撮影=荒川正幸

三菱ミラージュ サイボーグZR(CJ4A型) のレンタカーに試乗。90年代に流行したホットハッチの走りは、いまでも熱いのか? #41

自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
下野康史

三菱が1995年に発売した5代目ミラージュの、サイボーグZRの旧車レンタカーに試乗。ホンダ・シビック タイプRや日産パルサー VZ-Rなど、高出力を競った90年代ホットハッチブームをけん引した一台です。
そんなミラージュ サイボーグZRに、自動車ライターの下野康史さんが試乗しました。

目次

「乗りこぼし」を旧車レンタカーで

雨に濡れた新緑の中で佇むミラージュ サイボーグZR。コンパクトながらも存在感を放つ、洗練された3ドアハッチバックスタイル

茨城県高萩市のレンタカーズSEiWAでお借りしたミラージュ サイボーグZRの旧車レンタカーは1997年式で、車両重量は1040kgだった
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雨に濡れたアスファルトの上に停車している、シルバーの三菱ミラージュ サイボーグZR(E-CJ4A型)を右斜め後方から捉えた写真

かわいらしさのあるスタイリングに加えられた、ルーフエンドのスポイラーや大径マフラー、サイドの「MIVEC」デカールがホットハッチであることを主張している
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長いこと自動車ライターをやってきたが、「乗りこぼし」のクルマもある。三菱ミラージュの高性能モデル、サイボーグもその一台だった。

登場したのは87年の3代目ミラージュから。最初は1.6リッターターボだったが、92年からは、ホンダがVTEC(ヴイテック)の名で先鞭をつけた可変バルブタイミング/リフトと同種の機構を三菱車として初めて導入した自然吸気1.6リッターに変わった。ヘッドカバーに記されるMIVEC(マイベック)の名称は、その後、三菱のエンジンの代名詞として広がってゆく。

新車のとき乗り損ねたミラージュ サイボーグに“試乗”できる。まさかの幸運を与えてくれたのは、茨城県高萩市のレンタカーズSEiWA。この連載ではすでに何度もお世話になっている旧車レンタカー店だ。

2025年9月にスバル・インプレッサ ホンダ・インテグラ タイプR を借りに行ったとき、「こんど、これもレンタカーにしますから」と、うれしそうに言いながら、同社代表の棚谷泰之さんが見せてくれたのがこのクルマである。最後のサイボーグとも言える97年4月初度登録/車検なしの個体をだいぶ前にヤフオクで手に入れ、今回「わ」ナンバー登録してラインナップに加えた。

“オリジナル”ではないけれど

三菱ミラージュ サイボーグZRの運転席周り。モモ製ステアリングやホワイトメーター、オーディオ、シフトノブが並ぶ

機能的にまとめられたコックピット。インパネは兄弟車のランサーと共通のデザインとなっている
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三菱ミラージュ サイボーグZRの室内。運転席と助手席には、青と赤の幾何学模様のレカロシートが装着されている

フロントシートはレカロを採用。ワインディングでもドライバーの体をしっかりと支えてくれる
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ボディーは3ドア・ハッチバック。ホットハッチと呼ぶには地味なフォルムだが、サイボーグにはルーフスポイラーが付いている。

白い盤面のメーターが並ぶ運転席で、知らないと戸惑うのは、サイドブレーキのレバーを引いても、ギリギリギリッというクリック感がないこと。なんの抵抗もなく引けて、戻せる。後輪を簡単にブレーキロックさせて旋回できるフライオフ式に改造してある。ボディー剛性を高めるタワーバーがエンジンルームにも荷室にも装着されている。おそらく、前のオーナーがジムカーナか何かに使っていたのだろう。

車高調整機能の入ったスポーツダンパー、小径ステアリングホイールやスポーツマフラーなどは、こうして乗ったほうが楽しいよというメッセージのこもった“レンタカーズSEiWA仕様”である。オリジナルのテイストはわからなくなるが、旧車レンタカーの“商品性”を高めるためには“あり”だろう。

三菱ミラージュ サイボーグZRのエンジンルーム。「MIVEC」のロゴが入ったヘッドカバー、社外品のエアクリーナーとタワーバー、ブルーのバッテリーが見える

最高出力175PSを発揮する4G92・MIVECエンジン。クスコ製のストラットタワーバーが装着されている
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こんなに楽しいクルマだったとは!

濡れた山道を走行するシルバーの三菱ミラージュ サイボーグZRのリアビュー。流れるような木々の緑に囲まれた道路を走っている

雨のワインディングを軽快に駆け抜けるミラージュ サイボーグZR。トルクフルなエンジンと軽量なボディー、締め上げられた足回りが、ホットハッチならではの軽快なドライブフィールをもたらしてくれた

あいにくの雨のなか、マフラーをブウォンとうならせて走り始めると、最初のひと加速で、ノックアウトされる。技術的にこうだから、こうスゴイんだ、というような「考えオチ」ではない。走り出した途端、なんだこりゃー! と叫びたくなるほど直感的に楽しいクルマだった。

エアクリーナーを“抜け”のいいスポーツタイプに交換した以外、ノーマルという175PSの16バルブ4気筒がまずすばらしい。ホンダVTECのようなはっきりしたバルブ機構の切り替わり感、よく言えばドラマチックさはないものの、低速トルクはむしろより豊かで、しかも天井知らずによく回る。5段MTでつむぎ出すパワーは十分過ぎるほどだが、かといって空恐ろしいほどではない。サイボーグでも、人肌だ。

これだけパワフルなFFでも、発進時に前輪がジャダーを起こしたりしないのは、もともとの足まわりのしつけのよさプラス、硬いスポーツダンパーのおかげだろう。身のこなしはホットハッチらしく、実にキビキビしている。ただ、あくまで“走るためのアシ”であって、乗り心地はデートカー向きではない。

体の当たり面が適度に柔らかくて快適なレカロ・シートは純正だという。フロントウインドウは大きく、左右のピラーも細いから、視界がいい。ステアリングにはハンドルの位置を上下に変えられるチルト機構がついていた。実用コンパクトカーの派生モデルながら、運転に専心するホットハッチとしてちゃんと考えられていたクルマだと感じた。
そんなサイボーグを乗りこぼしていたのは、自分の都合だが、しかし現役当時、このクルマが一世を風靡していた実感はない。仮想敵のシビックSiRと比べても、印象はだいぶ地味だった。なぜだろう。

MIVECエンジンのサイボーグが出た92年には、同じ三菱からランサーGSRエボリューションが発売された。スバルからはインプレッサWRXが出て、90年代はこの2台によるラリー用ホモロゲーションモデル対決が火花を散らすことになる。サイボーグも“ランエボ”にはかなわなかったのである。

旧車レンタカーのおかげで、隠れた名車をまた1台発見することができた。運転してイイと、曖昧なスタイリングにもキャラが見えてくる。とくに後ろ姿は、おにぎり煎餅みたいに可愛くて、気に入ってしまった。

三菱ミラージュ サイボーグZRのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3890×1680×1365mm
ホイールベース:2415mm
エンジン:4G92型 直列4気筒DOHC16バルブ 1597cc
エンジン最高出力:175PS(129kW)/7500rpm
エンジン最大トルク:17.0kgm (167Nm)/7000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(前/後):ストラット/マルチリンク
タイヤ:195/55R15

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雨の峠道を疾走するシルバーの「三菱 ミラージュ サイボーグZR」のコラージュ画像。ヘッドライトを点灯して走行するフロントビュー、特徴的なリアスポイラー、青い幾何学模様のレカロシートが並ぶスポーティーな内装の3カット

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3つのカットを組み合わせたコラージュ画像。上部は濡れたワインディングを走る白いロードスターのフロントビュー。左下は黒のレザーシートを備えたコックピットの内装、右下はボンネット内のエンジンルーム

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高速道路を走るGTO

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三菱自動車が1990年から2001年まで販売していたGTOに試乗。4輪駆動や4輪操舵、4輪ABSなどを備え、当時の三菱自動車が得意としていたオールホイールコントロール(AWC)の考え方を具現化した一台でした。


三菱が2006年に発売した、ランサーエボリューションⅨ MRの旧車レンタカーに試乗。最高峰スポーツモデルの称号であるMR(Mitsubishi Racing)を車名に冠し、初代ランエボから熟成を重ねてきた4G63型DOHCインタークーラーターボエンジンを搭載した最後のモデルでもあります。

下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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