マツダ・ロードスター パワーリトラクタブルハードトップ(NC型・3代目)のレンタカーに試乗。電動ハードトップと排気量アップで、走りは変わったのか? #40
自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
マツダが2006年に発売した、ロードスター パワーリトラクタブルハードトップ(ロードスターRHT)の旧車レンタカーに試乗。初の3ナンバーボディーとなり、2.0Lに拡大されたエンジンが生み出す「大人のロードスター」として、どのような走りを見せてくれたのでしょうか。
自動車ライターの下野康史さんが試乗しました。
新旧すべてのロードスターをレンタカーで
ルーフを開け放てば、瞬時に爽快なオープンスポーツへと変貌する。スイッチひとつで開閉できる手軽さが魅力だ
新旧11台のマツダ・ロードスターに「わ」ナンバーを付けているのが、茨城県高萩市のレンタカーズSEiWAである。初代(NA)から3代目(NC)までの旧モデルだけで、バリエーション違いを含めて7台ある。ここへ来れば、レンタカーでマツダ・ロードスターの歴史を辿ることができるのだ。
扱いにくいクルマや、壊れやすいクルマはレンタカーには合わない。だれでも乗れて楽しめる、しかも信頼性の高いクルマとして、マツダ・ロードスターをメインにしたかった。2024年秋から旧車レンタカーサービスを始めたレンタカーズSEiWA代表の棚谷泰之さんはそう話した。
そのラインアップから今回借りたのは、NC型のRHT(リトラクタブル・ハードトップ)。2005年に登場した3代目ロードスターの電動ハードトップモデルである。
大人のロードスター
初度登録は2011年2月。すでに20万7000kmをあとにしたクルマだが、内外装ともに、程度はすばらしい。
ガッチリしたロックレバーを外すと、ボタンひとつで開閉するハードトップは、当時、ボルボⅭ70やVWイオス、日本車ではダイハツ・コペンも手がけたドイツのサプライヤー、べバスト(Webasto)社と共同開発したものである。
開ボタンを押すと、まず収納部のフタがせり上がり、Z型に畳まれたハードトップがそこへ収まる。電動ハードトップの“実演”を見て、よくこんなカラクリを考えるものだなあと感心させられるのは、このRHTも同じである。
15年間の経年変化やいかにと思ったが、動作音は今も静かで、開閉ともに約12秒というスピーディーさも変わっていなかった。
走り出すと、RHTは「大人のマツダ・ロードスター」である。NC型は先のNA、NBと比べて、大きくなった。ボディー全幅は1720㎜となり、初の3ナンバーボディーになった。エンジンも刷新され、NB時代の1.6/1.8ℓから2ℓに拡大された。加えて、硬い屋根のRHTは車重(1140㎏)が同グレードのソフトトップより約40㎏重い。
そのため、乗り心地はマツダ・ロードスターとは思えないほどずっしりしている。オープン走行中もボディーの剛性感は高いが、屋根を閉めると堅牢感はさらに増す。
NB型までのライトウェイトスポーツカーっぽさは薄れたが、そのかわりドイツ車っぽい上質感を得たのがRHTの特徴といえる。20年前、モデルチェンジから1年遅れで出たRHTに初めて試乗したとき、これはNCロードスターの完成形かもしれないと思ったものである。
アテンザ用の2リッター4気筒は170PS。7000rpm以上までストレスなく吹き上がる元気なエンジンだが、トルクがあるので、そんなにがんばる必要はない。ふだん使いではMTよりもATのほうがふさわしい感じがする。
電動ハードトップのありがたさ
雨のドライブでも静粛性と剛性感は抜群。日常の足から週末のロングドライブまで、マルチにこなせる一台だ
この日はあいにくの雨だった。しかも5月なのに、真冬の気温だったため、ほとんど屋根を開けずに乗った。上が開けられないとなると、ソフトトップよりハードトップのほうがありがたい。耐候性でも、耐久性でも、安全性でも、あるいはセキュリティでも、硬い屋根のほうが上回るはずだ。
ロードスターの電動ハードトップは、現行の4代目ND型でも“RF”の名で継承されている。96年登場のメルセデスSLKが先鞭をつけて以来、この趣向のオープン機構は一般的になったが、フト忘れがちなのは、マツダ・ロードスターがソフトとハードを併存させていることである。基本はソフトトップ、上級モデルとしての電動ハードトップという位置づけだ。若者のソフトトップ。年配者向けのハードトップと言ってもいい。ロードスターのソフトトップは運転席に座ったまま、片手で開け閉めできる使い勝手のよさを誇るが、五十肩に悩まされるようになると、あれはツライのだ。
SLKにソフトトップ仕様はない。コペンにもない。販売台数の知れたオープン2座スポーツカーなのに、シンプルな手動ソフトトップと高級な電動ハードトップを両立させている。これもマツダ・ロードスターの“さすが”なところである。
NCロードスターは“太ったロードスター”だったかもしれないが、これがあったからこそ、いまのND型が生まれた。エンジン排気量を1.5リッターにダウンサイジングして先祖返りを果たした。モデルチェンジでエンジンを4分の3に縮小したスポーツカーなんて、世界のどこにもない。マツダ・ロードスターは歴史をつくっているのである。
マツダ・ロードスターRHTのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4020×1720×1255mm
ホイールベース:2330mm
エンジン:LF-VE[RS]型 直列4気筒DOHC16バルブ 1998cc
エンジン最高出力:170PS(125kW)/7000rpm
エンジン最大トルク:19.3kgm (189Nm)/5000rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式(前/後):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
タイヤ:205/45R17
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下野康史
かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。
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