文=下野康史/撮影=奥隅圭之

マツダ・ロードスター(NB・2代目)。NAから正常進化した一台 #02

自動車ライター・下野康史の旧車試乗記
下野康史

自動車ライター・下野康史さんが懐かしい旧車を借り受け、その走りをレポートします。前回の初代ロードスターに続き、2代目ロードスターをドライブ。1998年にモデルチェンジしたこのクルマは、デビューから四半世紀を迎えてどんな走りを見せてくれたのでしょうか。

固定化されたヘッドライトを採用することによって、フロントオーバーハング部の軽量化を実現。点灯時にライトをポップアップする必要がなくなり、前方視界と空力性能が向上したという。

固定化されたヘッドライトを採用することによって、フロントオーバーハング部の軽量化を実現。点灯時にライトをポップアップする必要がなくなり、前方視界と空力性能が向上したという。

マツダからレンタルしたのは、1998 年式のRSというスポーツ系のグレードで、ビルシュタイン社製のダンパーやトルセンLSDが標準装備となる。スリーサイズは全長3,955mm×全幅1,680mm×全高1,235mmで、初代とほぼ変わらない。

マツダからレンタルしたのは、1998年式のRSというスポーツ系のグレードで、ビルシュタイン社製のダンパーやトルセンLSDが標準装備となる。スリーサイズは全長3,955mm×全幅1,680mm×全高1,235mmで、初代とほぼ変わらない。

新車のようなコンディションは、25年前にワープしたかのよう

前回の89年型ユーノス・ロードスターに続いて、98年型マツダ・ロードスターにも乗ってみた。この年にモデルチェンジした2代目ロードスターである。こちらもマツダの広報車両で、生みの親が整備しているだけあり、旧車なのにまるで新車のコンディションだ。今まで売ってた新車と、出たばかりの新車。新旧2台を並べると、25年前の昔にワープしたような気持ちになった。
2代目はヘッドランプがポップアップ式から固定式になった。そのほうが部品点数を減らして軽量化できるし、この頃から欧州の一部で始まったヘッドライト常時点灯の動きにも対処した結果だ。
狭いトランクのなかで場所をとっていたスペアタイヤとバッテリーは床下に収められた。文字通り“トランクのお荷物”がなくなったわけである。いずれもこれぞ改良と言うべき、意味のある変更だ。
エンジンは初代の途中から加わっていた1.8リッターが主力になり、しかも2代目の1.8モデルはマニュアル変速機(MT)が5段から6段に変わった。計器盤のレイアウトなどは初代と同じだが、タコメーターの盤面には“6 SPEED”と誇らしくレタリングが入る。

プラス200ccの余裕、だけじゃないNBロードスターの進化

89年型初代モデルから乗り換えて走り出すと、排気量アップの余裕は明らかだ。最高出力では120馬力から145馬力に向上している。同じアクセルの踏み込み量でも、より力強い加速が返ってくる。エンジンの回転も1.6リッターよりなめらかで軽やかだ。
時速100km時の回転数は6速トップで3,100回転。初代1.6リッターの5速は3,200回転だからほとんど変わらない。つまりこの6段MTはトップギアのギア比を上げて燃費をよくするのではなく、ギア比を接近させてもっとシフトチェンジを楽しませることに重きを置いている。2代目で1.8リッターモデルの人気が高まったのも当然だ。
ボディーの剛性感も初代よりアップした。荒れた舗装路で床がワナワナする感じがほとんどなくなった。直進性も向上した。とくに高速域での直進安定性だ。最新のクルマのように、カメラの“目”と、自動操舵の“手”を使った“レーンキープアシスト”なんていうハイテク装備が付いているわけではもちろんないが、高速道路では初代モデルより一段リラックスして巡航することができた。今回乗って、そこがいちばん大きな2台の差だと感じた。

RSに搭載される1.8リッターのBP-ZE(RS)型エンジンは最大出力145馬力。フロントサスタワーバーはRSの標準装備となる。

RSに搭載される1.8LのBP-ZE(RS)型エンジンは最大出力145馬力。フロントサスタワーバーはRSの標準装備となる。

ステアリングホイールはNARDI社製で、エアバッグが標準装備となる。オーディオはBOSEサウンドシステム+FM・AM電子チューナー付きCDデッキが搭載されていた。

ステアリングホイールはNARDI社製に変わり、エアバッグが標準装備となる。オーディオはBOSEサウンドシステム+FM・AM電子チューナー付きCDデッキが搭載されていた。

正常進化を感じられるNBロードスター

2代目ロードスターといえば、筆者は2003年に出た“ロードスター・クーペ”を所有していたことがある。ロードスターにわざわざ鉄の上屋を溶接したクーペモデルである。スタイルにひと目ぼれして買ってしまったのだが、その経験から言うと、マツダ・ロードスターの基本はやはりソフトトップのオープンボディーにこそあると思う。
2代目ではリアウインドウがビニールからガラスに変わった。ビニールは経年変化でどうしても透明度が下がる。ガラスならプリント熱線を入れて曇らないようにもできる。ポルシェ・ボクスターも2代目でガラス製に変わっている。
そんなふうに、あらためて乗ってみた2代目マツダ・ロードスターは“正常進化”を絵に描いたようなクルマだった。スタイルは初代のほうがキュートだと思う。ボディーサイズもほとんど変わっていないが、運転するとなぜか初代のほうがちょっと小さく感じる、そのコンパクト感もユーノス・ロードスターの魅力だ。でも、2023年のいま、ガンガン実用に使うなら、やはり9年分新しい2代目がいい。

下野さんが一時期所有していたロードスター・クーペ。屋根が開け閉めできないクーペをカタログモデルとしてラインナップしたのは、いまのところこの2代目だけ。(写真=マツダ)

下野さんが一時期所有していたロードスター・クーペ。屋根が開け閉めできないクーペをカタログモデルとしてラインナップしたのは、いまのところこの2代目だけ(写真=マツダ)。

高剛性・安全ボディ「MAGMA」を採用。ボディ剛性も高まり、衝突時の安全性も高まった。

高剛性・安全ボディ「MAGMA」を採用。ボディ剛性も高まり、衝突時の安全性も高まった。

その後、世紀をまたいで2005年まで続いた2代目ロードスターは、後期に1.8リッターターボを加えたりした。ロードスターも御多分にもれず拡大路線を歩んじゃうのか!? と思ったら、さにあらず。3代目ではボディー全幅を3ナンバーに広げ、エンジンも2リッターに拡大したものの、2015年に出た現行の4代目ではなんと1.5リッターにダウンサイジングするという、初代への先祖返りのようなモデルチェンジを果たした。世界的にみても、モデルチェンジで排気量を4分の3にしたなんていうクルマは、ましてやスポーツカーは前代未聞である。「人馬一体」のスピリットは健在だ。
なぜマツダが過去3代の旧車ロードスターを広報車両として揃えているのか? それはいまやこのクルマがライトウェイトスポーツカーの歴史そのものだからだろう。

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下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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