日産スカイラインGT-R オーテックバージョン40th ANNIVERSARYの旧車レンタカーに試乗。4ドアセダンはGT-Rの称号にふさわしい走りをしているのか? #38
自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
日産が1998年に発売した、スカイラインGT-R オーテックバージョン40th ANNIVERSARYの旧車レンタカーに試乗。スカイライン誕生40周年を記念して限定販売され、“ハコスカ”と呼ばれる初代以来の、そして現時点では最後の4ドアGT-Rとなりました。
そんなスカイラインGT-R オーテックバージョンのレンタカーに、自動車ライターの下野康史さんが試乗します。
羊の皮を被ったスカイラインGT-R
1969年登場の初代から5代にわたるスカイラインGT-Rのなかでも、最もマニアックな成り立ちと言えるのが、このモデルではないだろうか。4代目にあたるR33スカイラインの最終盤に、オーテックバージョンの名で受注生産されたGT-Rのいわば“ファクトリーカスタムカー”である。
スカイライン生誕40周年記念と車名で謳っているが、98年1月の発売時、最大の売りは「4ドアのGT-R」だった。車検証記載の「E-BCNR33改」という型式名が示すとおり、GT-Rの2ドアクーペボディーに改造を加え、全長を8cm延ばして4ドアセダンに仕立てた。リアフェンダーには控えめなふくらみを盛ったが、派手なテールウイングは無し。GT-Rのエンブレムもそう目立たない。羊の皮を被ったGT-Rである。
価格は498万5000円。2ドアGT-R標準モデルの10万円高とは、当時、大バーゲンプライスだったはずで、トータルで約400台が生産されたという。
極上コンディションも4ドアゆえか
新車時に試乗していた筆者も忘れていたレアな33GT-Rに「わ」ナンバーを付けたのは、千葉県野田市の「おもしろレンタカー」。旧車レンタカーのパイオニア的存在で、この連載でも過去にホンダ・S2000や三菱GTOを借りている。
地味なシルバーの “さんさんGT-R”の4ドアセダンは、初度登録98年4月。28年前のクルマだが、走行距離はまだ13万2000kmに届かない。年平均5000kmも走らずに過ごしてきた個体である。
乗り込むと、内装の程度もよかった。ダッシュボードの上面に、紫外線による劣化は見られない。屋根付きの車庫に入っていたのだろう。灰皿は使った形跡がない。メーカーが貸し出す新車の広報車を思わせるコンディションである。
クラッチペダルは、最初、「おもっ」と思ったが、慣れると気にならない。初代と2代目GT-Rのこの世のものとは思えない重さに比べたら、21世紀の現代人でも踏めるクラッチペダルである。
2.6リッターの直列6気筒ツインターボエンジンは、32用をブラッシュアップしたもので、最大トルクは微増したが、280PSの最高出力は変わらない。
一方、車重は1400kg台の32GT-Rより重くなり、標準モデルの2ドアクーペでも1530㎏ある。4ドアのカタログ値は1560㎏だが、車検証には1610㎏とあった。そもそも、ちょっと太ったのが33GT-Rの特徴だったから、ボディー全長を延ばして4ドア化するのは、自然な流れでもあっただろう。
だが、走り出せばやはり豪快きわまりないスカイラインGT-Rである。重いボディーを怒涛のようなトルクで帳消しにするかの如く、轟然と加速する。名機RB26DETTはいまも健在で、高回転では独特の金属音を残し、8000rpmのレッドゾーン近くまでキッチリ回る。
MTはコミュニケーションツールである
ところどころ経年を感じさせる部分はあるものの、走りはまだまだ現役。ネオクラ車として人気があるのもうなずける
280PSの高性能車といえば、2か月前に借りた三菱ランサー・エボリューションⅨ・MRもそうだった。「どっちがいいですか?」。助手席に座る編集部Nさんに聞かれた。あちらはひと世代新しく、ボディーはよりコンパクトで、4気筒の2リッターと、キャラが異なる。いちばん違うのは、ATもあることだった。
スカイラインGT-Rは初代から最後の34までMTのみである。いま思えば、それがスカイラインGT-Rの勲章だった。2ペダルの自動変速機は踏んでりゃ速度が上がるが、MTは自分で変速しないとスピードアップしない。それはクルマのほうから「スピード出すんだな?」と確認してくることでもある。MTのおもしろさは、そういうコミュニケーションが人肌を感じさせることだと思う。
Nさんにハンドルを代わり、後席にも乗ってみた。リアシート中央には高さ30cmもある山がそびえ、左右を画然と分けている。定員は4名である。
しかし、後席空間は広く、ボディーがやはり経年変化で少しヤレているせいか、乗り心地も新車時ほどキツくなかった。高反発ウレタンのアームレストに肘を掛けていると、“GT-Rリムジン”のようでもあった。
3代目の32以降、4WD化されたGT-Rのなかで、筆者は32世代が最もスポーツカー的にファン・トゥ・ドライブだったと思うが、Nさんは32 GT-Rや先日のランエボⅨよりこのクルマが気に入ったという。
これが出た98年は23歳。「その時買っていれば……、と思わなくもないです」。遠い一点を見ているようなメールを返却後に送ってくれた。そんなふうに、時を超えた試乗体験を提供してくれるのも、旧車レンタカーの魅力である。
・スカイラインGT-R オーテックバージョン 40th ANNIVERSARYのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1780×1380mm
ホイールベース:2720mm
エンジン:RB26DETT型 直列6気筒DOHC ツインターボ 2568cc
エンジン最高出力:206kW(280PS)/6800rpm
エンジン最大トルク:368Nm(37.5kgm)/4400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(前/後):マルチリンク/マルチリンク
タイヤ:245/45ZR17
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日産が1985年に発売した(クーペの発売は翌86年5月)、スカイラインGTSクーペ(R31型)。この世代のスカイラインは「セブンス(7th)・スカイライン」や「都市工学スカイライン」という愛称でも呼ばれ、当時流行していたハイソカー路線を取り入れ、大きく立派なモデルでした。
日産が1989年から1994年まで製造していた日産・スカイラインGT-R(BNR32型)。モータースポーツでも大活躍し、当時も今も国内外の自動車ファンから羨望(せんぼう)のまなざしを向けられています。
下野康史
かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。
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