フォルクスワーゲン・ゴルフⅡの旧車レンタカーをワインディングロードで走らせる様子
文=下野康史/撮影=荒川正幸

フォルクスワーゲン・ゴルフⅡの旧車レンタカーに試乗。 ネオクラ車として人気の2代目ゴルフは、クラシックな走りのクルマなのか? #37

自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
下野康史

フォルクスワーゲン(VW)が1983年に発売した、ゴルフⅡの旧車レンタカーに試乗。現在、「ネオクラシック」「ヤングタイマー」などと呼ばれる1980年代から90年代の旧車の中でも人気が高まっているモデルでもあります。
そんなゴルフⅡのレンタカーに、自動車ライターの下野康史さんが試乗します。

目次

最後の質実剛健ゴルフ!?

海沿いのロケーションに映えるゴルフⅡ。直線基調のデザインは懐かしくもあり、新鮮でもある

静岡県焼津市のGoatbros Factory でお借りしたゴルフⅡの旧車レンタカーは1991年式と最終モデルにあたる。車両重量は1050kgだった
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フォルクスワーゲン・ゴルフⅡのリアビューと海岸の風景

リアから見たゴルフⅡ。コンパクトなハッチバックらしくスタイルは端正で無駄がない
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ゴルフⅡ。2代目ゴルフのレンタカーを用意しているのは、静岡県焼津市にある古いフォルクスワーゲンの専門ショップ“ゴートブロス”である。工場の敷地には、ビートル(タイプ1)やワーゲンのバスや、珍しい1500ヴァリアントなど、タイプ1から派生した空冷リアエンジン時代のVW車が並んでいる。修理や整備で預かっているクルマだという。

代表の八木健人さん曰く「ゴルフⅡのよさをもっと知ってもらいたくて」昨年9月に“わ”ナンバー登録したのがこの旧車レンタカーである。古い空冷ワーゲンを楽しむ人たちに、普段使いできるセカンドカーとしていかがですか、という提案の“お試し用”でもあるらしい。

ビートルに代わるフォルクス(大衆)のワーゲン(クルマ)として、ゴルフは74年に登場した。2代目に切り替わったのは83年。「ゴルフからゴルフへ」という当時のスローガンどおり、初代よりひとまわり大きくなった新型は、まさに正常進化のモデルチェンジだった。

その後のゴルフはワールドベストセラーカーに向けて、洗練を重ねていくが、ゴルフに「質実剛健」という言葉が似合ったのは、2代目が最後だったような気がする。コンピューターはまだ燃料噴射装置にしか使われていないから、アナログ技術で直すことができる。そうしたことから、日本でも「ゴルフ・ツー」の呼び名で根強い人気を持つ。

アウトバーン仕込みのアシ、健在

フォルクスワーゲン・ゴルフⅡのシンプルなインパネとメーター類

実用性を重視したゴルフⅡのインパネ。操作する頻度が多いオーディオとエアコンは手が届きやすい、高い位置にレイアウトされている
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フォルクスワーゲン・ゴルフⅡのフロントシートと車内空間

厚みのあるシートと直立したポジションが特徴のゴルフⅡの前席
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白いBBSホイールを履いた紺色のゴルフⅡは、1.8リッターのGLi。左ハンドルのAT。ヤナセが輸入していたこのころは、まだ左ハンドルもあったのだ。初度登録91年3月だから、最後の最後のゴルフⅡである。10年前に手に入れて、八木さんの奥様がアシに使っていたこともある勝手知ったる個体だという。

だが、もちろん新車ではない。エンジンやクーラーが止まった場合に備えて、対処法を記したマニュアルが積んである。必要なヒューズも備えてある。旧車をレンタルする人は、その間、旧車のオーナーになったと思うべし。

ふた昔より古いクルマの“あるある”で、陽の当たるダッシュボードの上面には亀裂が入っている。ゴルフⅡのドアは、握ったドアハンドル内側にあるツメが押されることで開く。しかし、このクルマは中のリンク機構が伸びているのか、指でツメを力いっぱい押し込まないと、開かない。といったような、中古車で言えば「現状渡し」みたいなところもあったが、走り出すと、まごうかたなきゴルフⅡだった。

25万km近い走行距離と35年の時を重ねても、色あせていなかったのは、アウトバーン仕込みの足まわりである。車重は1050㎏(車検証記載値)。いまのマツダ・ロードスターと大差ない軽さに驚くが、走りはドシっとしている。しかも、速度を上げるにつれて、乗り心地がよくなる。デコボコやうねりでサスペンションが上下しても、ボディーは動じない。英語でいう“フラットライド”は、同時代の国産車にはなかったゴルフⅡのアドバンテージだった。

フォルクスワーゲン・ゴルフⅡのエンジンルーム

コンパクトなエンジンルーム内にはエンジンや補器類がぎっしりと詰まっている
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“クルマの町”の旧車レンタカー

コーナーを走行するフォルクスワーゲン・ゴルフⅡのリアビュー

ところどころ経年を感じさせる部分はあるものの、走りはまだまだ現役。ネオクラ車として人気があるのもうなずける

エンジンもかくしゃくとしている。変速機は3段ATだが、日本平への上り坂でも、高速道路でも、ゴルフⅡってこんなに力があったっけ!? と思った。21世紀はダウンサイジング・ターボの時代だから、8代目を数える最新型ゴルフは3気筒の999ccターボからあるが、こちらは4気筒の1780cc。エンジン本体の大きさからくる豊かな実効トルクが力強さのミナモトだろう。昔のFFだから、停車中でも走行中でも、エンジンの細かな振動がハンドルに伝わってくるが、それも元気の演出だ。

パワーステアリングだが、現代の軽い電動パワステと違って、ズッシリした手応えがある。ブレーキペダルも踏み応えがある。とくに停車中は意識してしっかり踏んでいないと、クリープ現象に負けて前進してしまう。しかし、そういうことを知るのも、旧車を体験する意味である。

試乗中、止まる気配はまったくなかった。細かいところはちょっとくたびれていても、背筋はしゃんとしている。昔のきちんとした教育を受けたクルマ、という感じだ。そして、やはりゴルフⅡは“残るクルマ”だなあと再確認した。

静岡県の沿岸部には大型の中古車店が多い。“クルマの町”である。片側2車線の国道を走っていると、新型ゴルフが斜め後ろに追いつき、しばらくロックオン走行された。

稀少な、というか、国内唯一かもしれないゴルフⅡレンタカーの料金は、8時間で2万1000円(保険込み)だった。

ゴルフⅡが出たとき、まだ生まれていなかった八木さんは40歳。整備工場の上は住居で、小さな子どもの元気な声が聞こえた。いつのまにか古いVWの名前をぜんぶ覚えていてびっくりしたそうだ。ゆくゆくは空冷リアエンジンワーゲンにも“わ”ナンバーを付けてみたいという。そのときはまたぜひ借りに来よう。

・VW・ゴルフⅡ GLiのスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3985×1665×1415mm
ホイールベース:2475mm
エンジン:RV型 直列4気筒SOHC 1780cc
エンジン最高出力:77kW(105PS)/5400rpm
エンジン最大トルク:148.1N・m(15.1kg・m)/3800rpm
トランスミッション:3速AT
サスペンション形式(前/後):ストラット/トレーリングアーム
タイヤ:175/70R13

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走行中のVW・ゴルフⅡの旧車レンタカーのフロントビュー/BBSホイール/エンジンキー

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#36 三菱ランサー・エボリューションⅨ MRの試乗記はこちらから

走行中の三菱ランサー・エボリューションⅨ MRのフロントビュー/名機・4G63型エンジン/インパネ

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下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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