文=下野康史/撮影=荒川正幸

マツダ・RX-7(FD3S型)の旧車レンタカーに試乗。平成初期のロータリースポーツは、今でも美しさと速さを保っているのか? #29

自動車ライター・下野康史の旧車レンタカー試乗記
下野康史

マツダが1991 年に発売した、RX-7(FD3S型)のレンタカーに試乗。デビューからおよそ10年間にわたって改良を続け、一線級のパフォーマンスを保ち続けたスポーツカーです。そんなRX-7のレンタカーを自動車ライターの下野康史さんが借り受け、走りをレポートします。

目次

RX-7レンタカーの老舗

FD・RX-7のフロント7:3

AS AUTO(アイエスオート) 」でお借りしたRX-7は1999年式で、車検証に記載された車両重量は1280kg。FD型RX-7の登場時の店頭渡し価格は385万円(タイプR)だった
●画像クリックでフォトギャラリーへ

RX-7のリア7:3

レンタルしたRX-7は、99年1月にマイナーチェンジした5型。当時の自主規制値である出力280PSを達成したのはこの型から
●画像クリックでフォトギャラリーへ

マニアの間だと「FD」の型式名で語り継がれている3代目RX-7は、最後のRX-7である。シーケンシャル・ツインターボ化した13Bロータリーを搭載して、91年秋に登場。世紀をまたいだ日本車ハイパワー競争時代を駆け抜けて、2002年までつくられた。世界唯一のロータリーエンジン車は、その後、ノンターボで4枚ドアを持つRX-8が引き継ぐことになる。

排ガス対策の荒波を受けてRX-7が引退してから20年あまり。いまでもFDをレンタカーで味わうことができる。RX-7の整備と販売を行う埼玉県川口市のアイエスオート。ロータリーエンジンが展示されている店内で代表の青木昇一さんに聞くと、FDのレンタカーは十数年前に始めたという。ただし最初は店でチューニングしたクルマの“お試し用”だった。旧車レンタカーのひとつのパターンである。

その後、現存するFDは改造を加えたクルマが多くなったこともあり、現在のレンタカーはノーマル。99年10月初度登録の5型と呼ばれる後期型のMTである。

RX-8と比べてみる

FD・RX-7のインパネ

有機的な曲面で構成されるインパネ。ダッシュボードもコンパクトだ
●画像クリックでフォトギャラリーへ

FD・RX-7のフロントシート

フロントシートはバケットシートながら、タイト感と快適性を両立している
●画像クリックでフォトギャラリーへ

低くタイトなコクピットに収まり、エンジンをかける。あのころの280PSカーとしては、クラッチは軽い。5速MTのシフトは剛性があって、ストロークも短い。脚がほぼ水平に伸びる運転姿勢はスポーツカー気分を盛り立てる。

筆者は新車当時からFDを知っているが、直近で経験したロータリーは、半年ほど前、この連載で乗ったレンタカーのRX-8である。高回転域を高回転域と感じさせない“回りたがり”のキャラクターは共通だ。

白いタコメーターのレッドゾーンは8000rpmから始まるが、その少し手前からコクピットに警告ブザーが鳴り響く。それもRX-8と同じだが、走り出した途端、FDの力強さは別格だ。

下から力があり、上では炸裂感がある。ノンターボのRX-8・Sも数値的には250PSあったが、30PSの差とは思えない。280PSの自主規制値をおもんぱかって、低めにサバ読んでいたんじゃないか、なんて冗談も言いたくなるが、加速に効くのは馬力ではなく、トルクと言われる。最大トルク値はRX-8の22.0 kgmに対して、FDは 32.0kgm。歴然たる差があったのだ。

だが、個人的にはトルク感の薄いRX-8の自然吸気ロータリーに、よりシンパシーを感じる。トルクが細いから、エンジンを回してパワーを紡ぎ出す。それがロータリーの楽しさであり、“らしさ”だと思うからだ。でも、そんなのは極少数意見だろう。ロータリーならではのウルトラスムーズさに問答無用のターボパワーを組み合わせたところが、最強RX-7、FDの魅力だったのだ。

FD・RX-7のエンジン

搭載される13B型エンジンは、排気量654ccの2ローター方式。コンパクトなエンジンながら280PSを絞り出す
●画像クリックでフォトギャラリーへ

“速さ”だけじゃない

たたずむFD・RX-7

緊張感のある曲面で構成されるスタイリングは、登場から30年以上過ぎてもまったく色あせることがない。今の新車では味わえないロータリーターボのスムーズかつ豪快な走りとあいまって、RX-7でしか味わえないドライビングを楽しんだ

あらためて見ると、3代目はスタイリングも傑作だったと思う。先代のFC型はポルシェ924/944にインスパイアされたような印象があったが、FDのカタチはほかに似ているものがない。

これ見よがしなボンネットの低さは、コンパクトなロータリーエンジンだからこそである。ドアのラインはきれいなカーブで跳ね上がる。おかげで、FDはドアを開けてもカッコいいクルマだった。黒いドアレバーをウインドウ後ろのブラックアウトした区画に隠したために、ドアのふくらみもきれいだった。カタマリ感の強いフォルムは、のちにマツダが提唱する「魂動デザイン」の先駆けだったようにも見える。

帰り道は編集部Nさんにステアリングを譲る。FDの助手席に座るのは初めてだったが、明らかに運転席より狭い。測ってみると2cm狭かった。やはりドライバーファーストなクルマである。 

とはいえ、フロントピラーはそれほど極端に寝ていないから、車内に圧迫感はない。後席は事実上、シート型の物入れスペースだが、小さな背もたれを倒せば、荷室床とフラットにつながって、長尺物も積める。

RX-7を新車から25年乗り続けた80歳の女性が、免許返納を機に愛車をマツダに寄贈するというニュースが最近、話題になった。今回、99年式のFDをレンタカーで借りてみると、このクルマの美しさや実用性能といった、新車当時は速すぎて見落としていたものが見えてきたのだった。

・RX-7のスペック(登場時)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4285×1760×1230mm
ホイールベース:2425mm
エンジン:13B-REW型 水冷式直列2ローター 654cc×2
最高出力:280PS
最大トルク:32.0kgm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(前/後):ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
タイヤ:225/50R16

FD・RX-7のフォトギャラリーは、こちらをクリック!

#28 日産ブルーバード(510型)の試乗記はこちらから

JAF Mate OnlineのFD・RX-7の記事は、こちらから

MR2、180SX、アルシオーネ、プレリュード、ロードスター、GTO…懐かしのリトラクタブルヘッドライト車15選の画像

MR2、180SX、アルシオーネ、プレリュード、ロードスター、GTO…懐かしのリトラクタブルヘッドライト車15選は、画像をクリック!


R34GT-R、80スープラ、タイプRシリーズ…昭和世代が憧れた! ネオクラシックな90年代スポーツカー特集は、画像をクリック!

下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!