文=下野康史/撮影=荒川正幸

日産・サニートラック(2代目・B120型)を三浦半島で試乗。トラックなのにファン・トゥ・ドライブ #06

自動車ライター・下野康史の旧車試乗記
下野康史

日産が1994年まで国内販売していた2代目サニートラック(サニトラ)に試乗。仕事で使い倒されがちなトラックであるにもかかわらず、いまも旧車愛好家に愛されています。その理由はどこにあるのでしょうか。自動車ライター・下野康史さんがレンタカーを借り受け、その走りをレポートします。

目次

サニトラの外観

日産・サニートラックは、1971年2月に2代目にモデルチェンジをした。発売時の価格は38万9000円~43万5000円(東京店頭渡し価格)で、マイナーチェンジを続けながら国内では1994年まで販売された。日本国内での販売終了後も南アフリカでは「BAKKIE」という名前で販売が続き、2008年に販売終了。37年にわたって現役を続けた。
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サニトラの斜め後ろの姿

旧車専門店・オートショップCATでお借りしたのは1993年式で、この世代のヘッドライトは角目だったが、1989年のマイナーチェンジ以前のフェイスに変更されていた。スリーサイズは全長3845mm×全幅1495mm×全高1405mm。
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運転することを目的にトラックを借りにいくのはあり? それともなし?

1971年に出て、国内では94年まで販売されたのが日産のサニートラックだ。トヨタ・カローラのライバルだった2代目サニーから派生した貨物車である。
トヨタのパブリカ・ピックアップに対抗して、初代サニートラックが登場したのは67年。その後、後継の“カローラトラック”はつくられなかったこともあり、乗用車ベースの小型トラックとして長く活躍した。
その“サニトラ”は現在も旧車趣味の対象として人気を博している。今回のようにレンタカーでチョイ乗りもできるようになった。引っ越しに使うためではなく、運転することそれ自体を目的にトラックを借りる! サニトラとは、いったいどんなクルマなのか?

80年代のモータースポーツでも活躍したA型エンジンを搭載

乗りに行ったのは、神奈川県横須賀市。旧車を修理、販売する専門店“オートショップCAT”がこの春から始めたレンタカーサービスで、2台のサニトラを用意している。
旧車の部品が積まれた事務所で利用約款の説明を受ける。三浦半島のドライブルートや食事処なども教えてもらえる。サニトラのレンタカー料金は1日7500円とリーズナブルである。
ミンミンゼミが鳴く外に出て、店長のSさんからクルマの説明を受ける。白のサニトラは93年に初登録された個体、ということは、前輪がディスクブレーキに変わった後期型のなかでも最も高年式の(新しい)クルマだ。
ホイールやタイヤはアップデートされているが、1.2リッターの4気筒OHVエンジンはノーマルで、ボンネットの中も新車同様だ。この日産A型エンジンは現役当時から非常によく回り、耐久性にもすぐれる“名機”として知られ、80年代はツーリングカーレースなど、モータースポーツでも活躍した。
本来、サニトラにタコメーターは付いていないが、このクルマには今の電気式タコメーターが装備されていた。助手席に人が乗ると、車内に荷物を置くスペースはないため、500kg積みの荷台にはフタ付きの物入れが備え付けてある。“オリジナル”にこだわることなく、ユーザーフレンドリーな改良が施されているのは好感がもてる。

サニートラックのエンジンルーム

初代サニートラックから引き継がれた A12型OHVエンジンは、ほぼノーマルのまま。シンプルで耐久性が高いエンジンでありながら吹けあがりのよさなどが評価され、モータースポーツでも活躍した。
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剛性感が高いボディー、鋭いアクセルレスポンス。サニトラはちょっとしたスポーツカーだった

灯火類の始業点検をすませたあと、店のスタッフ全員に送り出されて走り出す。と、その途端、サニトラが今もクルマ好きの心を捉えている理由がわかった。これはちょっとしたスポーツカーである。
トラックといっても、着座位置や重心感覚は乗用車のサニーと同じだ。エンジンの上に運転台のあるキャブオーバー・トラックとはまったく違う。ふつうのサニー同様、ボディーはモノコック構造で、しかも2ドアふたり乗りのキャビンはコンパクトだから、ボディーの剛性感はむしろサニトラのほうが高い。
キャブレター仕様のエンジンは滑らかで扱いやすく、30年前のクルマという古さは感じさせない。アクセルレスポンスなどは、最新の1.2リッター級エンジンよりすぐれている。
スペシャル装備のタコメーターは、過回転防止のために4000rpmを超すと赤いランプが光る設定にしてあった。しかし、770kgの車重に対して低中速トルクも十分だから、そこまで回せば軽快に加速する。4段マニュアルのシフトは軽く、動きにカチッとした節度がある。クラッチペダルも軽い。積極的にシフトを楽しめるMTである。
ただしトラックだから、足まわりは硬い。平滑な舗装路なら問題ないが、荒れた路面だと、とくにリアサスペンションから突き上げを食らう。しかしそれもスパルタンな旧車のスポーツカーだと思えば許せる。

サニートラックのインパネ

インパネは70年代の雰囲気をよく残している。大きな三眼メーターの左側にタコメーターが追加されていた。ハンドルはMOMOに変更されている。
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サニートラックのシート

トラックではあるものの、乗用車と同じシートが与えられていた。前後スライドやリクライニングも可能。

サニートラックのリアシート

荷台の最大積載量は500kg。客室に入れることができない荷物は、キャブ寄りのボックスに納められるようになっていた。

サニートラックが走り去る姿

名機A型エンジンを載せた後輪駆動で、車重も軽い。トラックでありながらスポーツカー並みに走り、旧車好きに長く愛されるのはこれらのおかげだろう。
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運転を楽しめるサニトラで三浦半島を走るのは、心地よい

整備の行き届いたサニトラのレンタカードライブは楽しかった。この日、東京は猛暑日だったが、三浦海岸周辺は海風が吹いて、思いのほか過ごしやすかった。試乗車にクーラーは付いていないが、三角窓を開けて走れば、2座キャビンの空気はすぐに入れ替わる。現代のクルマにも三角窓の復活を! 旧車に乗るといつもそう思う。
数ある旧車のなかで、サニトラをレンタカーにしたのは、S店長によると、数ある旧車のなかでまずサニトラをレンタカーにしたのは、なにより“乗りやすさ”だという。たしかにこのクルマは、MTさえ運転できれば、とくに旧車を意識せずに扱える。
ダッシュボードには「高速走行禁止」のステッカーが貼ってある。お店は横浜横須賀道路のインターの近くにあるが、高速道路を走るのは禁止である。しかしそれも旧車レンタカーを提供する側の“見識”だと思う。「三浦でゆっくり乗ってもらいたいんです」とS店長。自動車愛と郷土愛に溢れた旧車レンタカーである。

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下野康史

かばた・やすし 1955年、東京都生まれ。『カーグラフィック』など自動車専門誌の編集記者を経て、88年からフリーの自動車ライター。自動運転よりスポーツ自転車を好む。近著に『峠狩り 第二巻』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリより、ロードバイクが好き』(講談社文庫)など。

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