夜間に道路を横断する人々、近づいてくるクルマ、ヘッドライトに浮かぶ人々

夜間の運転「危険の見えにくさ」と安全運転のポイント

夜の運転に要注意! 視界確保編
栗原大智

夜間の運転は昼間とは異なり、視界が暗く色の識別が難しくなるため、黒い服の歩行者や無灯火の自転車が見えにくくなったり、対向車のライトによる幻惑も起きやすくなったりといった、特有のリスクが伴います。
本記事では眼科医の栗原大智氏監修のもと、夜間の安全運転に向けた視界確保の方法を紹介します。

目次

昼間と夜間の「ものの見え方」はどう変わる?

夜間の交差点で飛び出してくる無灯火の自転車

昼間の視界は太陽光による明るさが十分にあり、色や形、距離感を細かく識別しやすくなっています。これは、人間の視覚が「錐体(すいたい)細胞」と呼ばれる明所視に適した細胞を主に使っているためです。錐体細胞は色の識別能力に優れ、動きの把握も得意で、周囲の情報を鮮明にキャッチできます。

一方、夜間は光量が不足し、「桿体(かんたい)細胞」を中心に働かせる“暗所視モード”に切り替わります。この桿体は光には敏感ですが、明暗の識別はできても色の識別は苦手。結果として、

歩行者の黒い服が背景に紛れる
無灯火の自転車が影のように見える
速度感がつかみにくくなる


といった変化が起きます。

また、瞳孔が開いて光を多く取り込もうとするため、対向車のライトなどの強い光を浴びるとまぶしさが増し、視界回復が遅れる「グレア(幻惑)」も発生しやすくなります。 つまり、夜間は「そもそも見えにくい」に加えて、「まぶしさで見失う」という条件が重なるため、昼間の運転とは別の注意が求められます。

夜間運転の視界不良で注意すべきポイント

対向車のライトで照らされる道路

夜間の視界不良の原因は単に「暗さ」だけではありません。下記のような要因が同時に発生し、事故につながりやすくなります。

歩行者・自転車の発見遅れ
黒・濃紺などの衣服は背景と同化しやすく、街灯の少ない場所では数m手前に来るまで気づけないこともあります。特に横移動する歩行者や無灯火の自転車は“影”のように見え、視認が大幅に遅れます。

対向車のライトによるまぶしさ
ヘッドライトを直接見ると暗順応が妨げられ、視力が数秒間低下します。この“見えない数秒”の間に、歩行者の横断が始まることもあります。

生活道路での急な照度変化
商業施設などで明るい幹線道路から街灯のまばらな住宅街の道路に入ると、急激に暗さが増して見落としが起こりやすくなります。特に路駐車両や電柱の陰は、歩行者や自転車の飛び出しの死角になりやすいです。

雨に濡れた路面による反射
夜に降る雨は最も視界を悪化させる要因の一つ。路面にライトが反射して光が散乱し、歩行者などの輪郭がぼやけてしまいます。

こうした状況をあらかじめ理解しておくことで、夜間運転特有の危険に備えることができます。

雨の日の夜間の道路

夜間運転中の視界を確保する方法

視界を改善するには、「クルマの準備」「運転操作」「目のコンディション」の3つの対策が効果的です。

1. 車両側の対策

クルマのフロントガラスにガラスクリーナーを使用

・ヘッドライトの早め点灯
夕暮れ時からロービームをつけて自車の存在を周囲に知らせ、早めに視界を確保します。

・ライトの光軸調整・レンズの黄ばみ除去
黄ばみや曇りは光量を低下させます。クリーナーでの定期メンテも効果大。

・フロントガラスの油膜除去・撥水(はっすい)加工
油膜は乱反射を生み、雨天時の視界を大きく低下させます。定期的に油膜クリーナーで油膜を除去した後、撥水剤を塗布することが有効。

・ワイパーゴムの交換
1年に1回は交換を推奨。拭きムラは夜の視界を著しく悪化させます。

2. 運転で注意すべきポイント

・視線の外しかたを覚える
対向車のライトがまぶしいときは、視線をやや左前方にそらすとグレアを軽減できます。

・速度を昼間より意識的に落とす
見落とし防止には対象を認知してから接近するまでの時間を稼ぐのが最重要。減速は最も効果的な視界確保の方法です。

・車間距離を通常より長めに
万が一の際に反応の遅れを吸収でき、ブレーキを踏むタイミングにも余裕ができます。

3. 目のコンディションを整える

・エアコンで車内を乾燥させない(ドライアイ防止)

・運転前にはスマホ画面の見過ぎを避ける(暗順応を妨げるため)

・まばたきを意識し、涙膜の潤いを保つ

・眠気や疲労を感じたら小まめに休憩を取る

目の状態が悪いと、どれだけクルマを整備しても視界は回復しません。

夜間の運転におすすめのサングラス・レンズ、アイケアグッズやサプリ

上記の対策に加えて、夜間の視界確保にサングラスを用いるといった運転対策用グッズやアイケアグッズを活用するのもおすすめです。夜間にサングラス?と思われるかもしれませんが、「夜間運転に適したレンズ」は存在します。ただし選び方には注意が必要です。

1. 夜間向けのレンズ選び

・高透過率の薄色レンズ(イエロー系など)
一般的なサングラスなどでは、日本産業規格(JIS)でレンズの視感透過率が75%以上でなければ「夜間(薄暮含む)の使用は不可」とされ、道路交通法上の安全運転義務違反に問われる可能性があります。 この基準を満たしたイエロー系のサングラスは、対向車のライトの青白い光を和らげる効果があります。

・透明~ごく薄い色の夜間運転用ドライブレンズ
クルマのライトのまぶしさを抑えつつ、視界を暗くしすぎないモデル。「夜間運転対応」と明記された製品を選ぶのが安心。

・反射防止コート(ARコート)レンズ
レンズ表面の映り込みやゴースト反射を抑え、対向車のライトの影響を抑えて視界を見やすくします。

・偏光レンズは夜間の使用に注意が必要
偏光レンズを用いたサングラスは日中のまぶしさには効果的ですが、夜は光量が不足するため、視界を暗くしてしまう可能性があります。

2. アイケアのためのグッズや栄養素

・ホットアイマスク
40℃前後で目元を温めると眼精疲労の回復に効果的。

・人工涙液系の目薬
涙液不足を補い、光のにじみを抑える。

・夜間視力やピント調整に関係する栄養素
ビタミンAやアントシアニンを含む食材・サプリを摂取。

夜間運転の三重苦「暗い」「まぶしい」「ぼやける」は4つのポイントで解消!

いかがでしたか。夜間の運転は「暗い」「まぶしい」「ぼやける」といった、昼間とはまったく別の視界環境になります。

そのため、 1.見え方の違いを理解し、2.危険ポイントを予測し、3.クルマと目の両面から視界を整え、4.適切なレンズやアイケアで視力を補うことが、安全運転の必須条件です。

栗原大智

くりはら・だいち よこすか浦賀病院眼科医長。2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍ら“ドクターK”としてライター活動もしており、m3.com、日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of Vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、眼科関連の情報発信の重要性を感じ、SNSなどを通じて日々情報発信にも努めている。

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