冬のまぶしさのイメージカット
文=栗原大智(眼科医)

白内障や角膜炎、ドライアイ…冬の運転で「まぶしい」と感じたら要注意

まぶしいのは季節のせい? もしかすると目の病気かも
栗原大智

冬のドライブ中、急にまぶしさを感じることはありませんか? これは冬の太陽は夏よりも低い位置にあるため、光が目に入りやすくなっていることが原因のひとつ。でも、そうした自然現象だけでなく、まぶしく感じる原因があなたの「目」にある可能性もあります。本記事では“ドクターK”こと眼科医の栗原大智氏が、運転中に感じる「まぶしさ」への対策と、まぶしさを引き起こす可能性がある目の病気について解説します。

目次

目がまぶしさを感じる仕組みと、冬ならではの理由

夜に車を運転していると、対向車のヘッドライトをまぶしく感じることがあります。これは目に特別な異常がなくても起こる、正常な反応です。特に、暗い場所では光が少なくなるため、瞳孔が開いている状態(散瞳)になります。瞳孔が開いているときに光が入ると、いつもより明るく感じますし、その明るさが強ければまぶしいと感じます。

光によって瞳孔の大きさが変わるイメージ図

周囲の明るさに応じて瞳孔が目の中に入る光の量を調整する

そして、季節によってまぶしさが変わることがあるのを皆さんはご存じでしょうか。特に、冬はまぶしさを感じやすい季節とされています。その理由は大きく3つあります。

1つ目は太陽の位置が低いことです。夏に比べて、冬は太陽の通る位置が低くなるため、太陽からの光が目に入りやすくなります。

季節によって太陽の高さが異なるイメージ図

地球の地軸の傾きによって、季節ごとに太陽の軌道は変化する

2つ目は空気が乾燥していることです。空気中の水分は光を遮ってくれますが、空気が乾燥していると、光を遮るものが少なくなるため、光をまぶしく感じやすくなるとされています。

3つ目は雪です。雪は光を強く反射することがあります。そのため、雪道で運転する際は、その反射によっても光のまぶしさを強く感じてしまうことがあります。

ぎらつく雪道のイメージ

降雪によって生じる路面のぎらつき

これら3つの理由が影響するため、冬は特に光のまぶしさを感じてしまうことがあります。では、まぶしさを軽くする予防策には何があるのでしょうか。

運転中にまぶしさを感じたら? その場合の対策

運転中にまぶしさを感じる場合、有効な対策がいくつかあります。

まずサングラスの着用を考える人もいると思います。しかし、一般的な日中用のサングラスは多くの光をカットしてしまい、視界全体が暗くなります。そのため、標識や信号機などが見づらくなり、事故につながるおそれがあります。そのため、ドライブレンズなど運転に適した見え方を保つサングラスが販売されているので、そういったサングラスを選ぶようにしましょう。

また、偏光レンズを用いたメガネも有効な方法です。偏光レンズは2枚のレンズの間に、反射光をカットする偏光フィルターという特殊なフィルムを入れています。そのため、偏光グラスを用いると、ギラギラした光をカットすることができ、まぶしさを軽減させることができます。しかし、偏光グラスにも、視界が暗くなってしまうもの、フレームが視界を遮るものもあるため、メガネ店などで実際に試着して選ぶと安心です。

偏光レンズによる見え方の違い

肉眼と偏光レンズによる見え方の違いの一例(写真はカメラ用偏光フィルター)

また、メガネ以外で光を遮る方法として、ひさしの付いた帽子や車に備え付けのサンバイザーを利用するのもいいでしょう。これらは太陽の角度によりますが、太陽からの光を直接遮るのに役立ちます。サンバイザーは角度を変えられますし、帽子も浅くかぶったり、深くかぶったりして調整しましょう。

また、一時的に視線の向きを変えるのも有効です。『交通の方法に関する教則』には、「対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう」と記されています。ただし、右側前方への注意力が下がってしまうため、長時間そのような視線移動を行うのは避けるようにしてください。

信号機が目安!? ドライアイや眼精疲労がもたらすまぶしさを和らげるには?

光をまぶしいと感じる理由はドライアイであったり、目の疲れであったり、さまざまな原因があります。詳しい病気の説明は次の章で書きますが、この章では普段の生活の中でまぶしさを和らげる方法を解説します。

まぶしさを感じる代表的な病気にドライアイがあります。ドライアイは目の表面の涙が不足、あるいは涙に含まれる油分などの質が低下している状態です。そのため、目薬で涙を補うのが有効な場合があります。市販薬であればどの目薬でもいいですが、人工涙液という目薬は防腐剤などが入っておらず、比較的安心して使えます。

また、目を温めることもドライアイに有効な場合があります。1日2回、1回5分を目安に目を温めます。目を温める際はタオルでも良いのですが、ホットアイマスクといった目を温めるための専用製品は、温度が安定しやすいのでオススメです。ただし、最適な温度は40℃前後です。あまり温度を上げ過ぎると、やけどなどのおそれもあるので注意が必要です。

ホットアイマスクのイメージ

ホットアイマスクは40℃前後が適温の目安

ドライアイのほかにも、目の疲れ(眼精疲労)がまぶしさを感じやすくなる原因となります。40℃前後で目を温めることは目の疲れを軽くします。さらに、目が疲れにくくなるように、普段から目を酷使しないことが重要です。日本眼科学会では、20分間近くを見たら、20秒間は20フィート(約6m)先を見るという「20-20-20ルール」を推奨しています。これはちょうど車に乗っているとき、頭上にある信号を見上げるくらいの距離になります。

加齢やコンタクトレンズも一因? まぶしさを引き起こす病気

光をまぶしく感じることは正常な反応である場合が多いです。しかし、たとえば「今年の冬はなんだかいつもよりまぶしいな」などと感じてしまう場合は、下記のような目の病気が原因の可能性もあることを念頭に置く必要があります。

白内障

白内障は、目の中でカメラのレンズの役割を果たす水晶体が、何らかの理由で濁ってくる病気です。白内障の主な原因は加齢です。早い人では40代から始まり、80代になるとほぼすべての人が発症します。その他にもステロイドの長期間使用や糖尿病、目についた外傷などが発症、進行の原因になります。

正常な眼球と白内障の比較イラスト

加齢等で水晶体が濁ると、光が通りにくくなる、乱反射するなど、うまく結像できない状態が生じる

白内障の症状は、視界がかすむ、物が二重に見える、光をまぶしいと感じるなどがあります。白内障が進行すると視力が下がり、メガネなどでは矯正できなくなってきます。進行を抑えることを期待して目薬を用いることもありますが、根本的な治療には白内障手術が必要です。

ドライアイ

ドライアイは、涙の量が不足する、あるいは涙の質が悪いため、目の表面が乾いてしまう病気です。ゴロゴロする、目が乾くなどの症状が見られます。原因としてはコンタクトレンズの使用や、スマホやPCなどで長時間目を酷使することなどが挙げられます。治療は涙を補うため、状態に合わせて目薬を選択します。目薬を複数用いても効果が乏しい場合は、涙点プラグなどによる治療を行います。これは、涙を排出する涙点に栓(プラグ)をして、涙が目の表面にとどまるようにするものです。

結膜炎

結膜炎は白目(結膜)に炎症が起きた状態です。原因は細菌やウイルス、花粉症などです。原因によって症状の程度は異なりますが、一般的には目やにや充血、涙が出る、まぶたが腫れるなどの症状が見られます。治療は原因に対応する点眼薬を用います。細菌やウイルスが原因として疑わしければ、周りにうつさないよう感染対策が重要です。また、アレルギーが原因として疑わしければ、アレルゲンの除去も行います。

ぶどう膜炎

ぶどう膜炎は、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に炎症が生じる病気です。原因はわからない場合も多いですが、ウイルスや自己免疫疾患などによって生じると考えられます。症状として、視界がぼやける、虫が飛んでいるように見える、光をまぶしく感じる、視力低下、眼痛、充血などが挙げられます。治療は主に炎症を抑える薬物療法で、点眼や注射、全身投与(ステロイド、免疫抑制薬など)など程度や症状に応じて使い分けます。

角膜炎

角膜炎は、目の黒目部分である角膜に炎症が生じる病気を指します。原因として、細菌やウイルス、真菌、アカントアメーバなどがあります。特に、コンタクトレンズが普及してから、その使用者を中心に患者数は増えています。主な症状には、目の痛み、充血、視力低下、光をまぶしく感じるなどがあります。

なかには、病気が急速に進行してしまい、角膜に穴が開いてしまい(角膜穿孔)、大きく視力が下がることもあります。治療は、原因に応じて抗菌薬、抗ウイルス薬の内服や点滴、抗真菌薬の点眼といった治療が行われます。また、治療後に視力低下などの症状が残れば、角膜移植を行う場合があります。

いつもと違う冬のまぶしさを感じたら、眼科を受診しよう

夏はまぶしさを感じていなかった方の中にも、この冬になってまぶしさを感じた方もいると思います。それは冬という季節のせいかもしれませんが、なかには病気が隠れている場合があります。「きっと冬の日差しのせいだ」と思うのではなく、「病気のせいかもしれない」と思っていただけたらと思います。

まぶしさの程度が強くなければ紹介した対策を試してください。そして、それでもまぶしさがある場合は、まぶしさを我慢せず、眼科でご相談ください。

栗原大智

くりはら・だいち よこすか浦賀病院眼科医長。2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍ら“ドクターK”としてライター活動もしており、m3.com、日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of Vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。

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