運転中、正面からの眩しい日差しを遮る効果的な方法は?
強烈な太陽光で前方視界ゼロ!?
自動車ユーザーが普段感じている疑問や不安、社会的な課題などを自動車ユーザーの目線で実証・実験する「JAFユーザーテスト」。今回は、朝日や西日が眩(まぶ)しい時の、視界の確保方法について調査しました。ここでは、テストに参加した「ムトゥー先輩」と「イーノ後輩」が、結果について振り返ります。
登場人物
- 先輩・ムトゥー
JAFロードサービスで培った経験を生かし、ユーザーテストの運営やテスト機器の開発に携わる。テストに使うマネキンを素早く組み立てる様子を見た後輩・イーノから「マネキンマスター」の称号を贈られた。
- 後輩・イーノ
2022年からJAFユーザーテストに参加し、ただいまムトゥー先輩のもとで経験を積みながら、テスト結果の分析や映像の記録・編集をこなす。西日の眩しさをテストで知り、度付きサングラスの購入を検討中。
イーノ:秋は日の入りが早くなりますね。会社から帰るときに周囲が真っ暗になっていると、明るい時間が短くなったと感じます。
ムトゥー:「秋の日はつるべ落とし」と言うしね。
イーノ:つるべって何ですか? 落語家の方なら知っていますが。
ムトゥー:そっちじゃなくて、井戸から水をくむときに使う桶(おけ)のことを釣瓶(つるべ)と呼ぶんだ。井戸にストンと落ちる釣瓶の姿を、すぐに沈む秋の太陽に見立てているんだね。
ちなみに、釣瓶とはこのようなもの。
イーノ:さすがムトゥー先輩。釣瓶を使ったことがありそうですもんね。
ムトゥー:いや、使ったことはないよ。でも、秋はそれだけ日が暮れるのが早いということだね。そして、秋に運転していると気になるのは、朝日や西日の眩しい光が直接目に入ってくる時間が増えてくることだ。
イーノ: どうして秋や冬になると、他の季節と比べて太陽の光を眩しく感じるのでしょうか。
ムトゥー:この季節の太陽は高くあがらないからなんだ。東京の場合、冬至の南中高度(太陽が最も高い位置にあるときの角度)は約31°とされている。
たとえば、太陽高度20°未満という低い状態を冬至の日の時間にあてはめると、東京都の場合であれば午前7時から9時頃、午後2時から4時30分頃の太陽の高さにあたる。ちなみに夏至の場合は、午前4時30分から6時頃と午後5時から7時頃だ。
特に冬は、通勤や通学で交通が集中する時間と、太陽が低い位置にある時間が重なることもあって、眩惑による事故が増えるようだね。さらに、冬は太陽高度が低い時間が、夏と比べて長いことも、事故を増やす要因になっているんだ。
テスト1
西日が正面から当たると、どれくらい見えにくくなる?
イーノ:夏至と比べると、冬至は眩しくなる時間が1時間ほど長くなるんですね。私は正面にある太陽が眩しい場合、サンバイザーを使っています。眩しさが緩和されるので助かります。
ムトゥー:太陽光を物理的に遮る方法だね。テスト1では、太陽光と同程度の明るさを再現できる日照装置を使い、正面から少しだけ右にずらしたところからテスト車に向けてライトを当てて、車に備えてあるサンバイザー使用の有無で、前方にいる歩行者を模したマネキンや対向車が見えるかを調べた。また、曇天の日の入りと同程度の明るさとも見え方を比較した。下がその結果だ。
テスト1の状況。
テストで見え方を確認したものは下記の通り。
- A=日なたにいるマネキン(テスト車に近い位置にいる)
- B=日陰にいるマネキン(テスト車に近い位置にいる)
- C=横断歩道上にいるマネキン
- D=横断歩道の横にいるマネキン
- E=対向車(ヘッドライトオン)
- F=対向車(ヘッドライトオフ)
- G=信号機
テスト状況
テスト結果
イーノ:実際にテスト車に座ってみましたが、サンバイザーを使わずに前を見ていると、かなり眩しいですね。西日が当たらない状態では問題なく見えていたものが、強い光に目が眩んでほとんど見えなくなりました。いったん眩惑されると、視力が回復するまで時間がかかる気がしました。
西日が当たらない場合の見え方。テストの対象物を問題なく視認できる。
西日が当たった場合の見え方。サンバイザーを使わないと、明るい光源に幻惑されてほとんど見ることができない。
サンバイザーで光源を遮ることで、マネキンなどが見えるようになった。
ムトゥー:ただ、サンバイザーが万能というわけではない。信号機は、サンバイザーを使うと見えなかった。視界の上方にある信号機は、サンバイザーに隠れてしまう場合があるんだ。高い位置にある標識も、サンバイザーを使っていると見落としてしまうかもしれない。
イーノ:サンバイザーを使うことで、赤信号を見落とすこともあるかもしれないんですね。
ムトゥー: 実際の状況では、大気中のちりや雲などによって、日差しがやわらぐこともあるだろう。でも、条件によっては一時的ながら視力を失うほどの太陽光が正面から差してくる可能性がある、ということを覚えておくといいね。
テスト2
西日が眩しい場合の対策は?
イーノ:テスト2では、正面の眩しい太陽光の対策として使用されるサングラスについてテストしましたね。
ムトゥー:このテストでは、サングラスの濃さ(可視光線透過率)が見え方にどのように影響するのかを検証した。
テスト結果
イーノ:結果をみると、レンズの色が濃い、可視光線透過率が低いほうがより効果的だということがわかりました。
ムトゥー:今回のテストでは光が強烈だったこともあって、歩行者が確認できるほど眩しさを抑えることはできなかった。ちなみに、下から反射してくるような雑光をフィルターでカットしてくれる偏光機能があるサングラスを使うと、フロントガラスの映り込みや路面の反射がなくなって視認性が向上する。サングラスを使う際は、偏光レンズが入ったものにすると安全性が向上するといえそうだ。
可視光線透過率15%のサングラスのテストの様子。可視光線透過率が低いサングラスを使うと、信号機の色の違いがわかるようになった。
左が裸眼、右が偏光サングラス使用のイメージ。路面の反射が軽減し、視認性が向上する。
イーノ:サンバイザーとサングラスを併用するのもいいかもしれないですね。
ムトゥー:冬季は昼間でも太陽光が差し込みやすいので、普段からサングラスを使うのもいいかもしれないね。ただし、薄暮時に可視光線透過率が低いサングラスを使うと、暗いところにいる人などを見落とすことがあるかもしれないから注意すべきだ。
イーノ:歩行者側も、太陽が低い位置にあるときは車に見落とされている可能性を意識したほうがいいですね。
ムトゥー:そんな時間帯に横断歩道を渡るような際は、車が見落としているかもしれないと考えて、車が減速しているかなどの動きに注意すべきだろう。イーノくん、たまにはいいことを言うじゃないか。
イーノ:たまに、が余計ですよ。
- 右左折した先の太陽光にも注意!
右左折の際、曲がった先の道路で日差しが目に入ることもある。眩惑されたり、眩しさに目をそらしていたりすると、横断歩道上の歩行者を見落とすことがあるので気を付けよう。
シートポジションが悪いと、サンバイザーの効果がなくなる?
正しいシートポジションであれば、眩しい光をサンバイザーが遮ってくれる。
不適切なシートポジションの場合、サンバイザーが眩しい光を遮りきれない。
正しいシートポジションと、不適切なシートポジション(シート高さが低く、前後位置はハンドルから遠い)でサンバイザーの効果を検証したところ、不適切なシートポジションはサンバイザーが眩しい光を遮りきれないことがわかった。サンバイザーの大きさにもよるが、サンバイザーで眩しさを遮れない場合は、シートポジションを見直すことも必要だ。