地震発生! 停電によって信号機が消灯したら、注意すべき交通事故とは?
写真はイメージです。車種や撮影場所は記事内容と関係ありません。
※「JAF Mate」2023年春号で掲載した「事故ファイル」の記事を再構成しています。役職・組織名などは当時のものです。
文=山岸朋央 / 撮影=乾 晋也

地震発生! 停電で信号機が消灯したら、注意すべき交通事故とは?

信号が消えたらどうする? 地震で発生する交通事故例から安全対策を探る

世界で発生するマグニチュード6以上の地震のうち、約2割が日本周辺で起きているともいわれる「地震大国ニッポン」。いつ、どこで、どのくらいの大きさで発生するのか予測できない地震は、日本で暮らす人々にとって最も厄介な天災だろう。

大地震が発生した場合、道路や信号機などに被害が生じ、回復させるには数日間から数週間以上を要することもある。そして当然ながら、地震発生時に車を運転していることもある。大地震発生時の土砂崩れや地割れなどに走行中の車が巻き込まれた場合は交通事故にはカウントされないが、発生後に瓦礫(がれき)や倒木、土砂などに車を乗り上げたり突っ込んだりした事故や、滅灯した信号交差点での衝突事故などは、平時同様、交通事故扱いとなる。過去の事例から、事故の防止法を探る。

目次

信号の消えた交差点で衝突事故が発生

2018年9月6日午前3時7分に発生したマグニチュード6.7の北海道胆振(いぶり)東部地震。その揺れは凄(すさ)まじく、厚真(あつま)町では北海道初の震度7、安平(あびら)町とむかわ町で震度6強、札幌市東区などで震度6弱を観測した。内閣府によると、死者42名、重軽傷者762名。住宅被害は、全壊462棟、半壊1,570棟、一部損壊1万2600棟。大規模な土砂崩れ、宅地地盤の液状化、地盤沈下による道路の陥没などの被害のほか、特徴的な被害として、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ「大規模停電(ブラックアウト)」が発生した。

大手電力会社が管理する地域のすべてで停電が起こる現象を意味するブラックアウト。胆振東部地震では、地震発生から18分後の午前3時25分、北海道全域で停電が発生。被害は最大約295万戸におよび、ほぼ全域で復旧するまで約45時間を要した。被害を受けたのは、住宅や店舗などだけではない。自家発電機を備えたものを除く98%の信号機も停止したのである。

この状況で交通事故が起きずに済むはずもない。ブラックアウト発生から約3時間後の午前6時半頃、朝の太陽が照らす札幌市内の交差点の横断歩道上で、自転車と軽ワゴン車が衝突してしまったのである。

片側2車線の国道を東進していた60歳代の女性が運転する軽ワゴン車は、前方に見えてきたY字路交差点の手前に設けられた2本の右折レーンの左側へと進入した。一方、20歳代の女性が乗る自転車は、軽ワゴン車の右折先の片側2車線の道路に設置された横断歩道を南から北へ横断しようとしていた。

平時ならば、軽ワゴン車側は縦型信号の赤灯の右横に設置された青灯の矢印信号で直進か右折の指示がなされ、自転車側は歩行者と自転車用の縦型信号で横断の可否が管理されていた。しかしこのときは、ブラックアウトにより交差点内の信号機はすべて滅灯。国道の対向車線の直進車と左折車の動向を視認しつつ、右斜め前方へと続く道路に車首を向け、右折を開始した軽ワゴン車。

一方、右から来る車の有無を視認しつつ、横断歩道上を渡り始めた自転車。ドライバーは対向車両に、自転車の女性は右から来る車にそれぞれ注意が強く向いてしまったのか、両者は横断歩道上で衝突。当然ながら被害は自転車に集中し、顔を強打した女性は重傷を負った。

北海道警察本部の調べによれば、地震発生時間帯を含む午前2時から4時までの間には、真夜中ということもあり道内での人身事故の発生はなかったが、それ以降のブラックアウト中の6日から9日までに発生した人身事故は72件だったという。

「今回の事故例のような信号機滅灯中の場所では、16件の人身事故が発生しておりますが、発生日は6日と7日の2日間のみ。また、類型別では、出会い頭が8件、自転車対車が4件、追突が4件。原因別では、交差点安全進行義務違反が6件、動静不注視が3件となっています。この2日間で発生した人身事故全体から見れば、その割合は35%弱と突出して多いわけではなく、死亡事故が1件もなかったことは幸いでした」(北海道警察本部交通企画課・米田雅史課長補佐)

停電時、地震発生時には極力運転を控えよう

道内全域でブラックアウトが発生した4日間、道警は延べ約1800人を動員して交通整理を実施。しかし警察官の手信号等で誘導できたのは、約1万3000か所のうち約500か所にとどまったという。

「停電時は車による移動を極力控えることが基本です。警察官が交差点で交通整理を行っている場合はその指示に従い、いない場合は交差点手前で徐行、必要に応じて一時停止をして周囲の安全を確認すること。速度を落とした慎重な運転を心掛け、譲り合いの精神を持つことが肝要です」(米田課長補佐)

なお、走行中に大地震が発生したら、急ハンドル・急ブレーキを避けできるだけ安全に道路左側に停止すること。停止後はカーラジオ等により地震情報や交通情報を収集し、引き続き車を運転する場合は道路や信号等の状況に十分注意すること。また、車を置いて避難する場合は車を道路外に移動するのがベスト。他者の避難や災害応急対策実施の妨げにならないよう留意することが大切だ。

  • 地震発生時に車を置いて避難する場合は、道路外に移動するか道路左端に寄せ、キーは付けたままか見える場所に置く。窓を閉め、ドアはロックしない。車検証などの貴重品は持ち出す。

まとめ

地震発生時は大規模停電が起こり、信号機が点かなくなる可能性がある。信号機が点いていない時は車移動を控えよう。運転しなければならない場合は、安全確認をしながら慎重に。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!