道流帯の脇を通行するバイク
文=山岸朋央 / 撮影=乾 晋也

ゼブラゾーンは、空いていて駐停車や通行はしない!

道路に白い斜線で標示される白いゼブラゾーンの導流帯。本来の意味を考えずに駐停車すると、事故の原因になることも。過去の事故事例から道流帯での事故の予防法を探る。

目次

※写真はイメージです。車種や撮影場所は記事内容と関係ありません。
「JAF Mate」2020年4月号で掲載した「事故ファイル」の記事を再構成しています。役職・組織名などは当時のものです。

導流帯は、車が通らないよう指示された場所

交差点の右折レーンの手前や、車線が減少する場所などに標示されているゼブラゾーン。斜めに白線が引かれている、この道路標示を見たことがないというドライバーは皆無であろう。

ゼブラゾーンは正式には「導流帯」という。導流帯とは、車の通行を安全で円滑に誘導するため、車が通らないように指示している部分。立入り禁止部分と違い、通行が禁止されているわけではないが、導流帯の本来の意味を考えず、不用意に通行したり駐車したりすると、思わぬ事故を招くことがある。

晩秋のある朝、大阪府北部の市道トンネル内で、1件の事故が発生した。トンネル入口付近に駐車していた大型トレーラーの右後部に、後方から走行してきたスクーターが、ブレーキをかけることもなく突っ込んでしまったのだ。これだけ聞けば、典型的な追突事故を思い浮かべるかもしれない。しかし、この事故が発生したのは走行車線上ではなく、その左側に設置された導流帯上だったのである。

大阪府警察本部によれば、今回の事故が発生した市道トンネルは、鉄道を立体交差にするためのもので、当初は片側2車線で整備されていた。しかし、周辺の道路整備計画が頓(とん)挫し、トンネル前後の道路が片側1車線のままになってしまった。そのままではトンネルから出る際に車線数が減り、トンネル内で車線変更を余儀なくされるため、片側2車線のうち左側の車線を導流帯にして1車線を減らすことで、安全で円滑な交通になるようにしたのだという。

トレーラーを運転していた50歳代の男性は、取引先の営業開始を待つ間、30t超の大型車両を待機させられる広くて止めやすい場所として、午前6時過ぎからトンネル内の導流帯に駐車していた。導流帯は、トンネル内はもちろんのこと、トンネル内へと至る道路部分から設置されており、トレーラーはトンネル入口から3mほど内側に駐車していたという。

「トンネルは、導流帯の有無とは別に、駐車禁止の規制がされているので、トレーラーの行為は駐車違反になります。しかし、それはドライバーも自覚はしていたようで、いつでも移動できるようにと、駐車中は運転席に座っていたようです。けれども、導流帯の中であれば他の車両に迷惑もかからないし、そもそも走行する車両はいないものと思い込んでいたのか、ハザードランプは点灯せずに駐車していました」(大阪府警交通部・桂木一幸調査官)

一方、スクーターを運転していた50歳代の女性は出勤途中で、理由は不明だが、トンネル内へと向かう片側1車線内を走らずに、時速40㎞前後で導流帯内の右寄りを走行し、そのままトンネル内へと進入した。

「スクーターの女性は、ノーブレーキのままトレーラーの右後部に衝突して頭部などを強打し、搬送先の病院で間もなく死亡が確認されました。事故直後に通りかかったドライバーらの証言などによると、事故当時は通行車両が少なく、導流帯右側の走行車線を走る車両が妨げとなって、スクーターが前方に駐車していたトレーラーを避けられなかったということはないようでした。そのため、事故の直接的な原因はスクーター側の前方不注視と考えられます。しかし、トレーラーがハザードランプなどをつけずに、トンネル入口付近に駐車していたことで、スクーターからは存在が見えづらかったのかもしれませんし、駐車禁止でもあった導流帯にトレーラーが止まっていなければ起きなかった、いわばトレーラーが誘発した事故とも言えるかもしれません」(桂木調査官)

緊急時を除き、導流帯には入らない

導流帯は、複雑な形状の交差点の手前や車線数が減少する道路などにも設置されていることがある。

「導流帯内への車両の進入は、法的には禁止されていません。しかし、事故を防ぎ、スムーズな走行を助けるために設置されたものなので、導流帯の示す道路形状に沿って走行し、緊急時や危険回避の場合を除き、走行や駐車はしないことが基本です」(桂木調査官)

大型車両が時間どおりに納品するための待機場所がほとんどないという現実も事故の遠因、という指摘もある。しかし、「導流帯に駐車しても問題ない」「導流帯を通行しても問題ない」といった自分勝手な思い込みが、事故の原因になるということを忘れてはならない。

停止禁止部分の画像

白い斜線の道路標示は、導流帯に限らない。消防署や警察署の出入口にある「停止禁止部分」は通行可能だが、枠内での停止は禁じられている

立入り禁止部分の画像

黄色の線で囲われた「立入り禁止部分は進入禁止

まとめ

導流帯は、事故を防ぎスムーズな走行を誘導するもの。たとえ空いていたとしても、原則駐車や通行はしてはならない。

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