ローリングストック特集のKV

災害時の体調管理は食事から! 「ローリングストック」と栄養の基本

もしものときに困らないために。備蓄食品で栄養バランスを整えるコツを管理栄養士が解説
渡部早紗

2026年は、東日本大震災から15年、熊本地震から10年という節目を迎える年です。災害発生直後はライフラインが止まり、店舗に十分な食材が行き渡らなくなることも少なくありません。さらに、物資が限られた状況下では、食事がご飯やパンなどの炭水化物中心になりやすく、栄養バランスの乱れから体調不良や疲れやすさにつながることがあります。

こうした事態に備えて注目されているのが、「ローリングストック」です。今回は管理栄養士・渡部早紗さんが、災害時の体調管理を支える栄養のとり方と、ローリングストックにおすすめの食材やメニューを紹介します。

目次

災害への備えに役立つ「ローリングストック」とは?

ローリングストックのイメージイラスト

ローリングストックとは、「蓄える→食べる→補充する」というサイクルを繰り返しながら、常に一定量の食品を備蓄しておく方法です。非常食を特別に用意するのではなく、普段の食事で使っている食品や日用品を少し多めに買い置きし、古いものから消費し、使った分を買い足します。

ローリングストックは、日常生活と災害時を切り離さず、無理なく続けられる備えといえます。

ローリングストックの効果

レトルトカレーや缶詰、ペットボトルなどの非常食

ローリングストックは、普段の買い物や日常生活の延長で取り組めるため、特別な準備や手間がかかりにくい点がメリットです。買い置きのスペースも、食品棚や収納を少し見直すことで対応できるはずです。

また、日常的に消費しながら備蓄することで、賞味期限切れを防ぎやすいのも大きな特長です。非常食は日常生活で食べる機会が少ないため、気づかないうちに賞味期限が切れてしまうこともありますが、ローリングストックであれば、こうした心配を減らすことができます。

さらに、ローリングストックなら日常的に調理方法や味を確認できるため、災害時に「食べ方がわからない」「口に合わない」といったストレスを減らせます。食べ慣れた食品で食事と栄養をとれることは、災害時において気持ちの面でも大きな支えになるでしょう。

災害時に必要な栄養素

必要な栄養素が不足した場合のリスク解説イラスト

災害発生直後は、おにぎりやパン、カップ麺など、手軽に食べられる炭水化物中心の食事になりがちです。もちろんエネルギー補給は重要ですが、栄養バランスが偏ると体調不良につながることもあります。災害時こそ、体調管理のために意識して補いたい栄養素があります。

たんぱく質

たんぱく質は、筋肉や内臓、免疫の材料となる栄養素です。災害時は電気やガスが止まり、肉や魚などの生鮮食品が手に入りにくくなるため、たんぱく質が不足しやすくなります。たんぱく質が不足すると、体力の低下や免疫力の低下につながり、感染症のリスクも高まります。

ビタミン・ミネラル・食物繊維

災害時は野菜が不足しやすく、ビタミンやミネラル、食物繊維が十分にとれないことで、便秘や口内炎などの不調が起こることも報告されています。体調管理のためにビタミンやミネラルを意識して補いましょう。

おすすめのローリングストック食材

災害時の食事は主食・主菜・副菜を基本に、調味料や嗜好品まで含めて備えておくこと

主食・主菜・副菜を基本に、調味料や嗜好品まで含めて備えておくことで、栄養バランスが整い、災害時でも通常に近い食事を続けることができます。常温保存しやすく、日常の食事としても使いやすい食品をご紹介します。

主食

ご飯や麺類は、エネルギー源として欠かせません。米、パックご飯、パスタ、餅、乾麺のそばやうどん、カップ麺、ホットケーキミックスなど、調理しやすさや保存性を考えながら、複数の種類を備えておくと安心です。

主菜

焼き鳥缶やツナ缶などの缶詰や、レトルトの牛丼や親子丼、乾物の高野豆腐などは、たんぱく質補給に役立ちます。焼き鳥缶やサバの味噌煮缶などは調理せずに食べられるので、忙しい日常にも役立ち、常備しておくと安心です。

副菜

玉ねぎ、にんじんなど日持ちする野菜に加え、切り干し大根やカットわかめ、とろろ昆布、海苔などの乾物、コーンや野菜の缶詰、野菜ジュース、インスタントスープなどを組み合わせて備えましょう。ドライフルーツや果物缶などは、ビタミン・ミネラル補給だけでなく、食事の楽しみにもなります。

乳製品

乳製品は、カルシウムやたんぱく質の補給源になります。粉チーズや常温保存ができる「ロングライフ牛乳(LL牛乳)」などの乳製品を備えておくと、料理に加えやすく、栄養価を底上げできます。

調味料

塩、砂糖、しょうゆ、味噌、酢、サラダ油、ごま油、鶏がらスープのもとなど、常温保存できる調味料があると、限られた食材でも味に変化をつけやすくなります。災害時でも食が進むよう、ふりかけや海苔も常備しておくと安心です。

嗜好品

嗜好品は、エネルギー補給だけでなく、緊張や不安が高まる災害時にリラックスや楽しみのもととなります。ビスケットや飴、せんべい、冬場であればチョコレートなどのお菓子や、紅茶のティーバック、インスタントコーヒーなどの嗜好飲料を備えておくといいでしょう。

ローリングストックのポイント

カセットコンロ

ローリングストックを実践する際は、誰が、どのような状況で食べるかを想定して備えることが大切です。配慮が必要な人への対応や、調理に必要な熱源・水の確保まで含めて考えておくことで、災害時に戸惑わずに食事環境を整えることができます。

配慮が必要な人の食事

家庭内に乳幼児や要介護者、食物アレルギーのある人がいる場合は、個別の備えが必要です。乳幼児には液体ミルクやレトルト離乳食、要介護者にはおかゆやレトルトの介護食品を用意しましょう。

食物アレルギーがある場合は、アレルギー対応のレトルト食品や缶詰を事前に確認して備えておくことが大切です。いずれも、普段から食べて味や食べやすさを確認しておきましょう。

熱源の確保

災害時はライフラインの中でも、ガスの復旧に時間がかかることがあります。カセットコンロとカセットボンベを用意しておくと、温かい食事や温かい飲み物をとることができ、体調管理にも役立ちます。

カセットボンベには使用期限(おおむね製造から7年)があるため、鍋料理など日常生活でもこまめに使用して、こちらもローリングストックを心がけましょう。

水の備蓄

水は飲料用だけでなく、調理用としても必要です。ペットボトルの水は、開栓前であれば常温保存が可能ですが、開栓後は冷蔵庫での保管が推奨されています。そのため、一度で使い切りやすい500mLペットボトルのほうが扱いやすく、持ち運びの面でも便利です。

調理器具・食器

調理や食事に必要な小物も備えておきましょう。ラップやポリ袋、アルミホイル、キッチンペーパー、ウエットティッシュなどは、調理の効率化や衛生管理に役立ちます。

特にポリ袋は、食材の保存だけでなく、湯せん調理や手袋代わりとしても活用できます。また、災害時は水が限られるため、割りばしや紙皿、紙コップを用意しておくと衛生的です。

ストック食材を活用した食事メニュー例

メニュー例:主食、おにぎり。主菜、焼き鳥缶の肉じゃが。副菜、切り干し大根とツナの中華風サラダ。汁物、わかめ入り卵スープ。 飲み物、野菜ジュース、デザート、フルーツ缶

主食: おにぎり
主菜: 焼き鳥缶の肉じゃが
副菜: 切り干し大根とツナの中華風サラダ
汁物: わかめ入り卵スープ
飲み物: 野菜ジュース
デザート: フルーツ缶


主食のおにぎりは、湯せんで温められるパックご飯を活用すると便利です。温めたご飯をラップで包んでおにぎりにすれば、洗い物を減らせます。さらに、塩や海苔の風味が加わることで、災害時でも食べやすくなるでしょう。

お米から炊く場合は、耐熱性ポリ袋に米と水を入れて湯せんする「ポリ袋炊飯」にすると、鍋を汚さず調理できます。このとき、鍋底に耐熱皿を入れて、袋と鍋が直接接しないようにします。

主菜の肉じゃがは、焼き鳥缶と、比較的日持ちしやすいじゃがいも・玉ねぎ・にんじん を使います。焼き鳥缶は味付けがしっかりしているため、そのまま食べるだけではなく、煮物に加えたり、ご飯に混ぜたりとアレンジできるのでおすすめです。

にんじんやじゃがいもは火が通りにくいため、小さめにカットしましょう。また、耐熱性ポリ袋に材料と調味料を入れて湯せん調理をすれば、少ない熱源で効率よく火を通すことができます。

副菜には、カルシウムやビタミン、食物繊維が豊富な切り干し大根を使います。煮物にすることが多い切り干し大根ですが、水で戻してから、しょうゆ・砂糖・酢・ごま油、ツナと和えることで、シャキシャキとした食感を楽しめる一品になりおすすめです。

また、インスタントの卵スープなど、温かい汁物があると寒い季節でも体を芯から温められます。乾燥わかめを加えて、ミネラルを補いましょう。

デザートには、桃やパイナップル、みかんなどのフルーツ缶を取り入れましょう。甘みのあるフルーツは、緊張や不安が続く災害時の気持ちを和らげる存在になり、お子さんがいる家庭では特に喜ばれるはずです。

生鮮野菜が不足しがちなので、野菜ジュースでビタミンを補給しましょう。コップ不要で飲み切りやすい、200mLのストロー付きタイプがおすすめです。

車内の備蓄について

車内の備蓄イメージ(お菓子やペットボトル、栄養補給ゼリーなど)

外出先で被災した場合に備え、ドライブの際はビスケットなどのエネルギー補給ができるお菓子や、固形・ゼリータイプの栄養機能食品を用意しておくと安心です。

・栄養補給ゼリーやシリアルバー: エネルギーに加え、ビタミン・ミネラルもバランス良く補えます
・ビスケット: やさしい甘さで災害時にお子さまの気持ちを落ち着かせたいときにも役立ちます
・せんべい: 甘いものが苦手な方でも食べやすいエネルギー源です
・ラムネ: すばやくエネルギーに変わるブドウ糖を多く含むため、運転時の糖分補給に適しています
・グミ: 糖分補給に加え、かむことで眠気対策にもなります
・水やお茶: 小さめのペットボトルを複数本用意しておくと、使い切りやすく便利です


ただし、季節によっては車内が70℃以上の高温になることがあり、 常温保存食品であっても長期間置いたままにすると品質が劣化するおそれがあります。安全に備えるためにも、積みっぱなしにせず、クルマに乗るタイミングで持ち込むことを心がけましょう。

渡部早紗

わたなべ・はやさ 管理栄養士。総合病院・学校給食の管理栄養士を経て、2021年に独立。現在はフリーランスとして食や栄養に関するコラム執筆・監修。健康商材の広告制作を中心に活動し、言葉による健康情報発信を行う。

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