運転と腰痛特集イラスト
文・解説イラスト=渡部早紗(管理栄養士)/イラスト=北極まぐ

ドライブで「腰」を痛めないための食事と栄養

管理栄養士おすすめ! 快適に運転を続けるための腰痛予防食
渡部早紗

秋はドライブに絶好の季節。毎日のように運転している人だけでなく、 普段はあまり車に乗らないという人も、週末になると車で遠出したくなりませんか。そんな時に注意したいのが「腰痛」。慣れない運転で体が緊張していたり、同じ姿勢で長時間座っていたりすると、すぐに腰が痛くなりがちです。 今回は、管理栄養士の渡部早紗さんが、運転をきっかけとした腰痛を予防するための食事や、腰痛になってしまったら避けたい食事について解説します。おすすめの食事メニューも紹介するので、普段の食生活にぜひ生かしてください。

目次

なぜ車の運転で腰が痛くなるの? 腰痛を引き起こす原因

ドライバーのイメージ写真

腰痛の多くは、特定の原因がわからない「非特異的腰痛」と言われていますが、車の運転は腰痛の発生を招く要因を多く含んでいます。運転におけるどのような要因が腰痛を引き起こすのか、詳しく見ていきましょう。

同じ姿勢の維持

長時間同じ姿勢で運転を行うと、腰や背中の筋肉に大きな負担をかけます。特に運転席のシートポジションの調整が不適切である場合、腰椎(ようつい)にかかる負担が大きく、痛みを引き起こすことがあるでしょう 。

特定の筋肉の緊張や疲労

運転中は特定の筋肉が常に緊張状態です、さらに、運転による目や感覚器官の疲労も起こりやすく、腰痛の原因となります。

血行不良

同じ姿勢の維持により末梢(まっしょう)血液の流れが悪くなることで、筋力の調整が不十分になり、関節のこわばりが生じることもあります。

振動と衝撃

運転する道路の状態によっては、車内が絶えず振動し、腰に衝撃を受けることがあります 。

ストレス

ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、腰痛のリスクを高めます。近年では、心理的なストレスも腰痛の原因になることがわかっています 。

睡眠不足

長時間労働や、旅行・レジャーなどの娯楽による睡眠不足は身体の回復を妨げ、腰痛のリスクを増大させます 。さらに、不眠は痛みを増すことがわかっています 。

運動不足と食生活

運動不足や食事バランスの乱れによる肥満も腰痛の原因となります。そのため、腰痛予防には適度な運動とバランスの取れた食事が不可欠です 。

腰に効く食べ物はある? 筋肉や骨を強くして、血流改善や疲労回復につながる腰痛予防におすすめの栄養素と食事メニュー

腰痛予防に効果的な食品のイラスト

運転中の腰痛を予防するためには、運転中の適切なシートの調整や姿勢の維持、定期的な休憩やストレッチなどが大切です。そして、普段の生活における運動や食生活の改善も重要です。安全で快適な運転のために、腰痛予防に大切な筋肉の維持や骨の強化、血流の改善などにつながる、おすすめの栄養素と食事メニューをご紹介します。

1. 筋肉を維持・向上させる栄養素と食品

姿勢を維持するには、体幹の筋力、特に腹横筋などのインナーマッスルが重要であり、 筋力を維持・向上させるには、筋トレはもちろん、筋肉の材料となるタンパク質の摂取が大切です。なかでも、身体に必要なアミノ酸をバランス良く含んでいる、良質なタンパク質を多く含んだ食品がおすすめです。

  • 良質なタンパク質を多く含む食品…肉、魚介類、卵、乳製品、大豆製品など

2. 骨を強くする栄養素と食品

腰を形成する骨である腰椎を丈夫に保つには、カルシウムの摂取が重要です。カルシウムの吸収を促すビタミンDや、カルシウムと同様に骨の形成に関わるマグネシウムも一緒に摂ると効果的です。

  • カルシウムを多く含む食品…乳製品、しらす、葉物野菜、大豆製品など
  • ビタミンDを多く含む食品…鮭、しらす、イワシ、きくらげ、卵、乳製品など
  • マグネシウムを多く含む食品…玄米、わかめ、大豆製品、アーモンド、ごまなど

3. 血流を良くする栄養素と食品

血流が阻害されると、疲れが取れにくくなるため、食事や運動による血流の促進が大切です 。ビタミンEには、血流を改善する効果が期待されています。ほかにも、血流を改善する栄養素として、DHAやEPAが知られています。

  • ビタミンEを多く含む食品…アーモンド、落花生、うなぎ、かぼちゃ、アボカドなど
  • DHAやEPAを多く含む食品…いわし、さば、あじ、さんま、かつおなどの青魚

4. 腰痛の原因をブロック! 末梢神経に働く栄養素と食品

末梢神経がダメージを受けると、腰痛の原因になる場合があります。ビタミンB12は末梢神経に働くビタミンであり、神経を修復させる作用が期待されています。

  • ビタミンB12を多く含む食品…かつお、さんま、レバー、チーズ、納豆など

5. 炎症を抑える栄養素と食品

抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA・C・Eには、炎症を抑える「抗炎症作用」があります。ビタミンCはストレスに対処するホルモン生成にも必要なビタミンです。

  • ビタミンAを多く含む食品…レバー、うなぎ、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草など
  • ビタミンCを多く含む食品…キウイフルーツ、じゃがいも、キャベツなど
  • ビタミンEを多く含む食品…アーモンド、落花生、うなぎ、かぼちゃ、アボカドなど

6. 痛みを抑える栄養素と食品

ビタミンB6は、痛みを感じる神経細胞の興奮を抑えるほか、神経細胞の伝達を行うGABA(ギャバ)の合成をサポートする働きがあるため、痛みの緩和が期待できます。

  • ビタミンB6を多く含む食品…赤身肉、マグロ、バナナ、にんにくなど

7. 疲労回復に役立つ栄養素と食品

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えるときに必要なビタミンであり、疲労回復のビタミンとして知られています。さらに、ビタミンB1には神経組織を正常に保つ働きもあります。

  • ビタミンB1を多く含む食品…玄米、小麦胚芽、豚肉、かつお、うなぎ、卵など

8. ストレスに対抗する栄養素と食品

セロトニンはノルアドレナリンの働きを抑え、ストレスに強い体を作る際に役立ちます。セロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンから合成されるため、トリプトファンを含む食品を摂ることで、セロトニンの増加が期待できます。

  • トリプトファンを多く含む食品…乳製品、レバー、大豆製品など

腰に良い食べ物を組み合わせた、腰痛予防におすすめのメニュー

腰痛予防におすすめのメニュー例イラスト

腰痛予防におすすめのメニュー例

腰痛予防の栄養素が効率的に摂れるおすすめのメニューをご紹介します。腰痛が気になる方は、日々の食事の参考にしてください。

  • 主食…玄米ご飯、胚芽パンなど
  • 主菜…肉料理(豚肉の生姜焼き、レバニラ炒めなど)
       魚料理(かつおのたたき、サンマの塩焼き、マグロの刺身など)
  • 副菜…野菜料理(小松菜のおひたし、かぼちゃの煮物、キャベツサラダなど)
       大豆製品(豆腐の味噌汁、納豆、冷奴など)
  • デザート…ヨーグルト、チーズ、バナナ、キウイフルーツ、ミックスナッツなど

丼ものやパスタなど、一品ものでは栄養素が偏りがちです。おかずを複数組み合わせることで、バランス良く栄養素を補えます。乳製品や果物、ナッツなどは、デザートや間食で取り入れるとよいでしょう。

ドライブの後、腰を痛めてしまった! もし腰痛になったら避けたい食事とは?

腰痛時に避けたい成分や食事

腰痛予防におすすめの栄養素や食事がある一方、特定の食べ物や飲み物が炎症を引き起こし、痛みを悪化させる可能性があります。ここでは腰痛の際に避けたい成分や食事を解説します。

【糖質・糖類】肥満や糖化が腰痛の原因に

肥満は腰痛の危険因子であることがわかっており、腰痛の予防には健康的な体重の管理が求められます。

糖質により血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が急上昇すると、インスリンと呼ばれるホルモンが過剰に分泌され、脂肪を溜め込みやすくなります。糖質の中でも特に、砂糖の主成分であるショ糖など「糖類」と呼ばれるものは、血糖が急上昇しやすい点が特徴です。 そのため、砂糖が多く使われる菓子類や清涼飲料水の摂り過ぎは血糖の急上昇を起こし、肥満の原因となるおそれがあります。

さらに、余分な糖と身体のタンパク質が結びつくと、「糖化」と呼ばれる現象を引き起こします。糖化によって、炎症や痛みが増えることがわかっているため、腰痛を悪化させるおそれがあります。

ただし、糖質が不足すると、タンパク質がエネルギー源として消費されてしまい、タンパク質本来の働きができなくなってしまいます。さらに、極端な糖質カットや自己流の糖質制限による糖質不足は、疲労感や集中力低下を招くおそれがあります。さらに、脳や神経において糖質が不足すると、意識障害を起こすおそれがあるため危険です。 玄米など、血糖値の上昇が緩やかな糖質を適量摂るようにしましょう。

【脂質】高カロリーで肥満の原因にも

糖質と同様に、脂質の摂り過ぎは肥満を招き、腰痛の原因となります。脂質は、1gあたり9kcalと、少量でカロリーが高いため要注意です。 天ぷらやフライなどの揚げ物やスナック菓子、チョコレート、ジャンクフードなど、脂質が多い食品の摂り過ぎに注意しましょう。

脂質は、身体にとって必要な働きもあるため、オリーブ油やナッツ、青魚など良質な油を適量摂るようにしましょう。

【アルコール】腰痛発症のリスク増、不眠の原因

アルコールの摂取頻度は腰痛発症のリスクと関連があることがわかっています。 さらに、アルコールは睡眠の質を下げるほか、不適切な量のアルコール摂取は不眠症状につながることも問題です。不眠によって痛みが増すことが知られており、さらに睡眠障害は、腰痛患者の回復に悪影響を与えることが明らかになっています 。また、アルコールは疲労回復に関わるビタミンB1を消費してしまうことも問題です。

一日の飲酒量を減らす目標より、飲酒日数を減らす目標のほうが達成しやすいと言われています。アルコールの代わりとして、無糖の炭酸飲料やノンアルコール飲料などを活用してみてはいかがでしょう。

【カフェイン】不眠により痛みが増加するリスクも

慢性腰痛の人は、腰痛のない人と比べて2倍以上のカフェインを摂取している傾向があることがわかっています。また、カフェインを摂り過ぎると、中枢神経系が過剰に刺激され不眠が起こるため、アルコールと同様に不眠による痛みの増加や腰痛の回復に悪影響を及ぼすおそれがあります。

コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、エナジードリンクなどカフェインが多い飲料の飲みすぎに注意し、水や麦茶、ルイボスティー、デカフェなどカフェインが少ない飲み物を選ぶとよいでしょう。

腰痛を予防し、安全運転にも重要な「ドライビングポジション」とは?

菰田潔の運転レッスンキービジュアル

運転のコツやポイントをわかりやすく解説する、「ドライバーのお悩み解決! 菰田潔の運転レッスン」。動画では、自動車ジャーナリストの菰田さんが、適切なドライビングポジションの取り方や運転姿勢について解説します

ドライビングポジションとは、運転時にシートに座る姿勢と位置のことを指します。適切なドライビングポジションをとることは、腰へのダメージを抑えるだけでなく、疲れにくい、緊急時に迅速な対応ができる、追突されたときにダメージを軽減できるなど、多くのメリットにつながります。

動画では、モータージャーナリストの菰田潔さんが、ドライビングポジションを整えるための5つのポイントについて、わかりやすく解説しています。

渡部早紗

わたなべ・はやさ 管理栄養士。総合病院・学校給食の管理栄養士を経て、2021年に独立。現在はフリーランスとして食や栄養に関するコラム執筆・監修・健康商材の広告制作を中心に活動し、言葉による健康情報発信を行う。

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