ドライバーが知っておきたい7つの熱中症対策…安全に運転するための夏の体調管理法
6月からの熱中症対策で酷暑を乗り切りましょう!
猛暑日が予想される夏、ドライバーが気を付けたいのが運転中の熱中症です。家族との楽しいレジャーや、大事な仕事の場面での体調不良は避けたいもの。熱中症を防ぐための健康管理や、暑い日の運転で注意したいポイントを、救急医学が専門の三宅康史医師に教えてもらいました。
睡眠と食事に気を付け、疲労をためない…健康管理が熱中症予防に
熱中症予防の基本は、こまめに水分補給をすることですが、大事なのはそれだけではありません。運転する当日だけでなく、日頃からいかに健康的な生活を送れているかも熱中症のなりにくさに関係してきます。
たとえば、仕事で睡眠不足が続いている、疲労がたまっている、食事をとらずに運転するなど、ちょっとした無理が重なると、体力がある人でも暑さに対応できなくなり、熱中症になる可能性は高まります。前日に眠れなかった、体調がなんとなく優れないなども、運転に影響を及ぼします。夏こそ規則正しい生活を送り、暑さに負けない健康的な体を維持することが大切です。
また、熱中症の危険度を示す目安となるのが「暑さ指数(WBGT)」です。暑さ指数は、気温のほか、湿度や日射・輻射(ふくしゃ)、風をもとにした指標。この暑さ指数が「31以上」になると危険、「28以上31未満」だと厳重警戒となり、日最高暑さ指数が「33以上(予測値)」に達する場合、「熱中症警戒アラート」が発表されます。夏のお出かけ前には忘れずにチェックしましょう。
【対策1】こまめに水分補給をしてトイレを我慢しない
ドライバーも同乗者も、最も気を付けたいのが水分補給です。エアコンを使用している車内は乾燥しやすく、自分では気づかないうちに脱水になっている可能性も。
ドリンクは、水やお茶、コーヒーなど、何でもOK。コーヒーには利尿作用がありますが、健康な人であればコーヒーの利尿作用で脱水になることはほとんど考えられません。カフェインによる目覚ましの効果など、運転時に飲むメリットもあります。何を飲むかより、常に自分の近くにドリンクを置いて、こまめに飲むことを意識してください。
長距離の移動の際、トイレに行くのが面倒であまり水分をとらない人もいますが、それが熱中症の危険に。しっかり水を飲んでトイレを我慢せず、水分を循環させましょう。
【対策2】余裕を持ったスケジュールで出かけ、休憩をとる
トイレ休憩を挟むことを考えると、余裕を持った運転計画を立てることは必須です。予定通りに着きたいという気持ちがあるのは誰でも同じですが、食事や休憩をとらずに運転し続けることは体にとっても負担になり、体調悪化の原因になります。
特に長距離移動の場合は、SA・PAや道の駅に寄って休んで食事をとるなど、ゆとりのあるスケジュールを組みましょう。熱中症予防だけでなく、安全に目的地に到着するためにも休憩を挟むことは重要です。
【対策3】走り出しは「窓全開+エアコン」で熱を逃がす
炎天下に駐車すると、短時間で車内の温度が上昇することがわかっています。JAFでは、夏の駐車時、車内温度を最も早く下げる方法をテスト。その結果、窓を全開にし、エアコンを最低温度に設定しながら走行すると、こもった熱が逃げやすく、すばやく車内温度が下がることがわかりました。
走り出しは「窓全開+エアコン最低温度で使用」にして、涼しくなってきたら窓を閉めてエアコンの設定温度を適温に戻すのが効果的。エアコンを正しく使い、車内温度を涼しく保つことが熱中症予防につながります。
【対策4】長袖を羽織るなど直射日光を避ける工夫を
たとえエアコンが効いた車内でも、直射日光を浴びる時間が長いと体温が上がりやすくなります。運転中に窓から入る日差しが強いと感じたら、薄手の長袖を羽織るなどして日光を避けるのも手。夏の衣類は、吸湿速乾性の高いものを選ぶと、汗をかいても快適に涼しく過ごせます。ただし、運転席や助手席の窓にサンシェードを取り付けるのは違反です。
同乗者がいる場合に困るのが、体感温度の違い。同乗者が暑がりで、自分は寒いと感じるなら、靴下やカーディガンなどを羽織って冷え対策をしましょう。また、直接冷風に当たらないようにするだけでも体感温度は変わります。乗車しているみんなの熱中症を防ぐためには、暑がりさんに合わせた温度設定がおすすめ。
【対策5】朝食を抜かずに食事からも水分補給を
睡眠中は水分が不足するため、起床後は十分な水分を補うことが大切です。水を飲むだけでなく、朝食をしっかり食べてから出かけるのもポイント。食べ物から水分や塩分、エネルギーを補給することで、体を目覚めさせ、熱中症を防ぎます。
汗をかきやすい夏は、水分とともにミネラルも失われます。そのため適度な塩分補給は大切ですが、夏だからといって過剰に摂取する必要はありません。朝食にごはんやパンなどから炭水化物を、卵やみそ汁などからたんぱく質をとると、自然と塩分も補給できます。
【対策6】運転前日は十分な睡眠で体調管理を
運転をする前日は、早めに就寝して十分な睡眠時間を確保します。睡眠不足になると、通常ならばコントロールできるはずの体温調節が困難になり、熱中症リスクが高まります。もし、睡眠が足りないまま出かけて眠くなった場合は、SA・PAなどで仮眠をとりましょう。
また、就寝時に寝室が暑いままだと寝つきが悪くなります。エアコンや扇風機で寝室を涼しくしたり、ひんやりする冷感タイプの寝具を活用して、体温を下げるとスムーズに入眠できます。睡眠中の熱中症対策として、寝る前にも水分を補給することを忘れないようにしましょう。
【対策7】子供や高齢者、ペットの体調変化を観察を
熱中症リスクが高いのが、子供や高齢者。子供は汗をかく能力が低く、肝臓の機能が未発達なため、大人よりも暑さに対応しづらいのです。身長が低いため地面からの照り返しによる体温上昇も危険。特に未就学児は遊びに夢中になって水分補給が遅れることがあり、親がこまめに確認する必要があります。
高齢者は、代謝が落ちて体温調節機能が低下し、のどの渇きを感じにくくなります。暑さをあまり不快に思わないのも特徴。高温多湿の空間でも平気で過ごしてしまう、水分補給を忘れるなどして、体調が悪化するケースがあります。
子供や高齢者と一緒に出かける場合は、いつも以上に水分補給に気を配ること。出かける前にすでに体調が悪いときは、思い切って予定のキャンセルも検討を。
また、ペットも同じです。暑い夏に屋外で遊ばせるのは控えて、人間と同じ涼しい空間で活動させましょう。子供、高齢者、ペットとの夏のお出かけは、いつも以上に家族をよく観察し、体調変化を見逃さないようにしましょう。
熱中症になりにくい体をつくるには、規則正しい生活が何より大切です。十分に睡眠をとること、3食しっかり食べるなど、健康的な生活を送り、元気な体で安全に運転しましょう。夏のお出かけ前には、出かける先の暑さ指数(WBGT)を確認することも忘れずに。
ドライブの熱中症対策はこちらをチェック!
- ひんやり快適なドライブに役立つ暑さ対策グッズ7選は6月18日に公開

三宅康史
みやけ・やすふみ 医師、臨床教育開発推進機構理事。専門は、救急集中治療。帝京大学医学部救急医学講座教授、同附属病院救命救急センター長、同高度救命救急センター長などを経て、2025年4月より現職。日本救急医学会専門医・指導医、評議員、熱中症に関する委員会、日本脳神経外科学会専門医・指導医、評議員、日本集中治療医学会専門医。
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