夏のドライブ中に体調が悪くなったら…? 医師が教える熱中症の初期症状と運転時の応急処置マニュアル
6月からの熱中症対策で酷暑を乗り切りましょう!
気温が一段と上がる初夏から夏にかけて、注意したいのが運転中の熱中症です。健康な人でも、寝不足が続いたり疲労がたまったりすると、熱中症のリスクが高まります。自分や同乗者が暑さで具合が悪くなったらどうしたらいいのか。救急医として熱中症の治療にも取り組んでいる三宅康史先生に、初期症状や覚えておきたい応急処置を教えてもらいました。
6月も油断大敵! 梅雨の合間の急な暑さで熱中症に
2024年の夏は、観測史上1位となる記録的な暑さとなりました。気象庁によると、2025年の6~8月の気温も、全国的に平年を上回ると予想されています。厳しい暑さが見込まれる今夏、ドライバーの誰もが気を付けたいのが熱中症です。体調が悪くなったまま無理して運転を続けると、重大な事故につながりかねません。
熱中症の患者数がピークとなるのが、だいたい7月下旬から8月上旬頃。実は、その前の6~7月も危険です。梅雨の合間に、体が暑さに慣れていない段階で気温や湿度が上がると、体温調節がうまくいかず熱中症になるケースがあります。少しでも具合が悪いと思ったら運転を控え、自分の体調に気を配りましょう。
JAFは、エンジンを停止して窓を閉め切った状態で、真夏の車内温度の推移を調べるテストを実施。気温35℃となった8月の午後に、条件の異なる車両(ミニバン)を5台用意し、炎天下に駐車した際の車内温度を測定したところ、サンシェードや窓開けといった対策をしていても温度抑制効果は低く、温度の上昇を防ぐことはできないという結果に。短時間の駐車でも、車内は熱中症の危険があることがわかりました。
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症状は頭痛、倦怠(けんたい)感、吐き気など…直射日光も体温上昇に影響大
熱中症は、気温・湿度の上がりすぎや、炎天下での長時間の運動・作業などによって体温調節がうまくいかなくなり、体に熱がこもることで起こります。
私たちの体の細胞には、エネルギーの消化・吸収・代謝などのあらゆる生命維持活動に使われている「酵素」が存在しています。酵素が最も活発に働ける温度は37℃。そのため通常は、外気温の上昇などによって体温が上がると、血管を拡張して皮膚の表面から熱を逃がしたり、発汗して自動的に37℃になるよう調整しています。
しかし、高温多湿の環境で作業せざるを得なかったり、直射日光を浴びながら長時間過ごしたりすると、体温を正常にコントロールできなくなり、37℃を上回ることに。すると、酵素の機能が低下し、体のあらゆるところに不調が現れ、熱中症が起こります。
熱中症の代表的な初期症状は、頭痛、倦怠感、めまい、こむら返り、手足のしびれ、寒け、下痢、嘔吐(おうと)、腹痛など。時には、けいれんや意識障害などが起こる場合も。まれなケースではありますが、重篤な後遺症のリスクもあります。これらのすべての症状が起こるわけではなく、現れる症状は人によってさまざまで、個人差があります。
夏の運転時にはエアコンを使用するため、涼しい車内で突然熱中症になることはほとんど考えられません。しかし、エアコンによる乾燥や運転中の水分摂取を控えることで脱水が起こり、熱中症になる可能性はあります。多いのは、仕事や運動などで屋外での活動が続いたり、家族で出かけて暑い中で過ごしたりして、クルマに戻った直後に体調が悪くなり、症状が現れるケース。すでに熱中症になっているにもかかわらず、これから運転をしようとするのは非常に危険ですのでやめましょう。
また、車内は涼しくても直射日光が当たると体温は上昇します。窓からの日差しが強いときは、エアコンが効いていたとしても自分や同乗者の体調変化に配慮しましょう。
体調が悪くなったらすぐ駐車して休憩! 水分を補給し、頭と手・脚を冷却
運転中に「熱中症かも?」と思ったら、症状が軽くてもなるべく早く、安全な駐車スペースを探して駐車しましょう。シートベルトを外して座席シートを倒し、ラクな姿勢になったら、水分を補給してしばらく休憩します。20~30分休んで体調が戻り、症状がなくなったら、運転を再開しても問題ないでしょう。
休んでも回復しない、もしくはさらに体調が悪くなってきたと感じたら、20~30分たたないうちに、職場や家族などに連絡をするか、周りの人に助けを求めてください。自分で水分をとれない、意識障害があるなどの場合は、危険な状態ですので救急車を呼びましょう。
熱中症は、最初は軽度でも、急に重症化することもあり得ます。ドライバー一人のときは、体調が悪く停車した時点で、誰かしらに連絡をしておくことをおすすめします。
応急処置で大事なポイントは、涼しい環境をつくり、体を冷やして熱を逃がすこと。エアコンは設定温度を下げ、できる限り車内を冷却。コンビニやスーパーなどがあれば、袋に入ったかちわり氷を買ってきて、タオルに巻いておでこに当てるか後頭部に置いて冷やします。さらに、水で濡らしたタオルをしぼり、腕や脚などをくるんで冷やしましょう。
首筋や足の付け根の鼠径部(そけいぶ)、脇の下には太い静脈が走っているため、そこを冷却するのがベストですが、服を着たままでは冷やしづらく、服を脱げないことも考えられます。そのため、太い静脈に近い腕や脚、頭を冷やせば、効率よく体温を下げることが可能です。
運転する前に体調がすぐれないと感じたときも、応急処置は同じです。運転をせずにエンジンをかけてエアコンを入れ、車内をできるだけ冷やします。涼しい車内で休憩をしながら同様の応急処置を始めます。
夏のドライブ中、最も心がけたいのはこまめな水分補給。そして、適宜トイレ休憩を挟むこと。そのためにも、早めに出かけるなど、ゆとりを持ったドライブスケジュールを組むことが重要です。運転時の熱中症を予防するために、無理せず、睡眠をしっかり確保するなど、日頃から健康的な生活を送っていきましょう。
ドライブの熱中症対策はこちらをチェック!
- ドライバーが知っておきたい7つの熱中症対策は6月11日に公開
- ひんやり快適なドライブに役立つ暑さ対策グッズ7選は6月18日に公開

三宅康史
みやけ・やすふみ 医師、臨床教育開発推進機構理事。専門は、救急集中治療。帝京大学医学部救急医学講座教授、同附属病院救命救急センター長、同高度救命救急センター長などを経て、2025年4月より現職。日本救急医学会専門医・指導医、評議員、熱中症に関する委員会、日本脳神経外科学会専門医・指導医、評議員、日本集中治療医学会専門医。
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