日本と世界の道の雑学

道路の溝がなぜ音楽を奏でられるの? 群馬・栃木・神奈川の音響道路を走ってみた

高橋 学
2023.10.25
2023.10.25
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今回のテーマは「音楽を奏でる道(音響道路)」。車で走っていると、ロードノイズとは違うメロディが足元から聞こえてくる道と出会うことがあります。その仕組みとは?「日本と世界の道の雑学」では、これまで何気なく利用していた道路を通るのがちょっぴり楽しくなりそうなお話をお届けします。

なぜ走るだけでメロディが流れるの?

音響道路に刻まれた溝

音響道路に刻まれた溝。ここをタイヤが通過する際の音が溝の中で反響し、メロディが聞こえる仕組み。

路面に連続した横方向の細い溝を作り、その溝をタイヤが通過する時の音を利用しメロディを奏でるように作られています。ひょうたんや木の表面に連続した細かい溝を作り、棒でこすって音を出すギロという楽器のようなイメージでしょうか。通過する車両のタイヤサイズや種類によって多少音質の違いはあるものの、大雑把に言うと溝から隣の溝までの間隔が広いと低い音(低周波)に、狭くすると高い音(高周波)となり、その間隔の組み合わせでメロディが出来上がります。

決められた速度で走ると最適なリズムで楽しめるよう設計されているので、音楽を聞くためにスピードを抑えて走るようドライバーに促す効果もあるようです。また、溝によるウエット時の排水性も向上します。音響道路は楽しいだけではなく安全性にも寄与する機能的な道路ともいえるのです。

音楽を奏でる道が10か所もある群馬県

群馬県内にはさまざまなメロディーラインが点在

群馬県内にはさまざまなメロディーラインが点在しています。

全国各地に点在する音響道路ですが、群馬県にはメロディーラインと名付けられた音響道路が10か所もあります。ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌「星に願いを」を奏でる道は県立ぐんま天文台のすぐそば。温泉地として有名な草津町では「正調草津節」が流れるなど、設置された地域に関連したものが採用されています。

前橋市内の国道353号では、芳賀村(現在の前橋市)出身の井上武士さん作曲による「チューリップ」、みどり市付近の国道122号ではみどり市出身の作詞家 石原和三郎さんが詞を手がけた童謡「うさぎとかめ」のメロディーラインがあります。ドライブ中に聞いたメロディーの由来を調べて、そのような地域の情報を知ることができるのも、走る楽しみのひとつといえるでしょう。

ちなみに群馬県のメロディーラインをはじめとする多くの音響道路は、既存の舗装ではなく通常より高い耐久性を持つ舗装の上に溝を施工しています。轍(わだち)もつきにくく、溝も特別なメンテナンスをしなくてもその性能を維持し続けるそうです。

最新の音響道路は栃木県のゴダイゴ「モンキー・マジック」

栃木県初の音響道路は「メロディ道路」と表記。曲は1979年の大ヒット曲、ゴダイゴの「モンキー・マジック」。

栃木県初の音響道路は「メロディ道路」と表記。曲は1979年の大ヒット曲、ゴダイゴの「モンキーマジック」。

2023年には栃木県日光市の国道120号(第一いろは坂)に栃木県初の音響道路(栃木県ではメロディ道路と表記)が登場。曲は1979年に大ヒットしたゴダイゴの「モンキーマジック」。その理由はもちろん、この地域にニホンザルが多数生息していることと、日光東照宮の三猿にちなんだもの。国際的な観光地日光らしく国内外で認知度が高い曲であることも選定の理由だとか。音響道路としては比較的アップテンポなポピュラーミュージックというのはなかなか攻めてます。

栃木県初の音響道路(メロディ道路)は溝に凍結抑制剤を充填した高機能タイプのもの

栃木県初の音響道路(メロディ道路)は、溝に凍結抑制剤を充填して冬季の路面凍結を抑える高機能タイプのもの。

第一いろは坂の出口付近、木々のとても美しい道路に設置されています。

第一いろは坂の出口付近、木々のとても美しい道路に設置されています。

ほかにもあります。各地の音響道路

瀬戸内海に面した愛媛県の「瀬戸の花嫁」、鹿児島県には同県出身の長渕剛さんの名曲「乾杯」など様々な形で地域にちなんだメロディーが流れる音響道路が全国各地にあります。箱根町(神奈川県)の有料道路 芦ノ湖スカイラインにはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の「残酷な天使のテーゼ」と童謡「ふじの山」と2曲が設置されています。

「あたまを雲のの上に出し~」と歌いだす童謡「ふじの山」の音響道路 メロディペーブのスタートあたりで見た、まさに歌詞どおりの風景

「あたまを雲の上に出し~」と歌いだす童謡「ふじの山」の音響道路が設置されている芦ノ湖スカイラインでは、歌詞どおりの風景を楽しむこともできる。

ドライブ中にふいに足元からメロディーが聞こえてきたら、なぜこの場所でこの曲が選ばれたのかと考えてみたり、走った後で由来を調べてみるのも楽しいものです。

高橋 学

たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。

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