新座市の横断幕
写真・文=高橋 学

関越道の架道橋に埼玉・新座市がクセの強い横断幕を設置。全6種類を一挙紹介!

高橋 学

今回のテーマは「高速道路にかかるシティプロモーション横断幕」です。 高速道路を利用していると道路を跨ぐ橋に掲げられた横断幕を見かけます。PA・SAでの休憩を促すものなど安全に関わるものや、これから開催されるイベントの告知などその種類はさまざまです。そんな中で今回は関越自動車道に掲げられた新座市の「シティプロモーション横断幕」を紹介します。 「日本と世界の道の雑学」では道路にまつわるさまざまなトリビアをお届けします。これまで何げなく利用してきた道路にちょっぴり興味を持ちながら運転を楽しんでもらえれば嬉しく思います。

目次

個性的なキーワードで高速道路利用者に街をアピールする「シティプロモーション横断幕」

高速道路を利用していると、当たり前ですがさまざまな市区町村を通過します。しかしながら多くの利用者は目的地以外の地域のことはあまり意識せずに通り過ぎてしまいます。SA・PAやICの名前になっていれば何となく意識することもありますが、その地域のことを知るところまでは至らないのが実情でしょう。

特急列車のように途中の街を華麗にスルーして、一気に目的地に向かうことができるのは高速道路の大きな利点ではありますが、あっさりと通過されてしまう市区町村が高速利用者にアピールするために掲げているのが「シティプロモーション横断幕」です。神奈川県内を通る東名高速道路には、「神奈川県のほぼ真ん中 綾瀬市」、「70代を高齢者と言わない街 大和市」など、個性的な横断幕が以前から掲示されていましたが、今回は2024年2月に関越道に登場した、埼玉県新座市の「シティプロモーション横断幕」を紹介します。

神奈川県伊勢原市のクセの強い横断幕

東名高速にある、神奈川県伊勢原市のシティプロモーション横断幕。東名高速には伊勢原市の他にも多くの市町が個性的な横断幕を掲げていてなかなか楽しい

関越道の新座料金所周辺に掲示して、同乗者にもアピール

新座市は埼玉県の南部にあり、その多くが東京都に接している市です。市内を貫通する関越道には新座料金所があるので、名前こそラジオなどの交通情報で頻繁に耳にするものの、市内にはICがありません。まさに通過される街であり、高速道路利用者にはちょっとイメージが湧きにくいところがあります。そこで新座市が関越道利用者に向けて市の特徴や魅力をアピールするために考えたのが、今回紹介する横断幕です。

新座市の「シティプロモーション横断幕」全6枚を一挙紹介! ネタバレごめんなさい!

下り線1枚目「関越は 新座市からが 埼玉県」

下り線1枚目「関越は 新座市からが 埼玉県」

まずは下り線から。関越道の玄関口とも言える新座料金所を過ぎると、すぐに1枚目が現れます。ズバリ「関越は 新座市からが 埼玉県」。

埼玉県の玄関口であると同時に、都心に隣接していることをアピールする横断幕。都心のベッドタウンとして発展する新座市が、まずは地理的利便性を強く押し出します。

下り線2枚目「新座クイズ! これはだ~れだ?」

下り線2枚目「新座クイズ! これはだ~れだ?」

地理的利便性をアピールした直後、突然クイズを出されて意表を突かれます。新座市のイメージキャラクターの描かれたイラスト付き横断幕ですが、これがわかる人にはもう新座市をアピールする必要もないのでは、と思われるほどマニアックなもの。かなりクセの強い変化球に戸惑ってしまいます。

下り線3枚目「#ゾウキリン 新座市イメージキャラクター」

下り線3枚目「#ゾウキリン 新座市イメージキャラクター」

2枚目のクイズについて考える暇もなく現れるのが、その答え。

動物のゾウとキリンをモチーフにした姿の“ゾウキリン”は、新座市のイメージキャラクターだそうです。豊かな自然の武蔵野台地に位置する新座市に多い雑木林(ぞうきばやし)を“ゾウキリン”と読み間違えて住み着いちゃったのだとか。なぜここでイメージキャラクターの紹介? と思ったものの、「#(ハッシュタグ)」がついているので一応SNSなどで検索してみると、新座市の情報が出るわ出るわ。ちなみにゾウキリンの誕生日は2月13日、213(にいざ)の日だとか。オヤジギャク的展開とSNSでの発信を横断幕で連動させるとは強引かつ柔軟、そしてなかなか粋な横断幕です。

上り線1枚目「埼玉県最南端 ここは新座市」

上り線1枚目「埼玉県最南端 ここは新座市」

上り線2枚目「東京に半分食い込むまち 新座市」

上り線2枚目「東京に半分食い込むまち 新座市」

さて、次は上り線。まず現れるのは「埼玉県最南端 ここは新座市」。下り線と同様に、まずは地理的な特徴をアピール。埼玉県は南北には短いので南だから温暖だ、という話ではなく、下り線と同様に埼玉県で最も東京寄りというアピール。そして極め付きは「東京に半分食い込むまち 新座市」。隣接しているどころかもう食い込んじゃっています。地図で確認してみると、ホントに清瀬市と東久留米市などの間に食い込んでいます。横断幕に偽りはありませんでした。

太い線が東京都との境目です。ご覧のように新座市の西側は東京都に突き刺さるように食い込んでいるのがわかります(出典=国土地理院ウェブサイト)

上り線3枚目「ICT教育日本一!  新座市」

上り線3枚目「ICT教育日本一! 新座市」

ラストは、これまでとはテイストの違うアピール「ICT教育日本一! 新座市」。かなり唐突な展開ですが、これは単なるイメージのキャッチコピーではありません。文部科学省が全国の公立学校を対象に実施する「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」をもとにインフラの整備状況や教員の指導力の評価を加味し、日経BP社が発表した「公立学校情報化ランキング2021」で小学校、中学校ともに全国1位に輝いたことをアピールするものです。

雑木林の茂る豊かな武蔵野台地の自然と、ICT教育に力を入れた教育環境、そして都心に極めて近く利便性の高い立地条件を併せ持っているのが新座市です! というアピールを6枚の横断幕から理解するのは少々ハードルが高いものの、謎めいた横断幕をきっかけに新座市の魅力を知ったのは筆者だけではないでしょう。まずは「#ゾウキリン」からですね。

全国各地の道路を走っているとさまざまな横断幕に出会います。安全運転を最優先にしながらも現れた横断幕にもちょっぴり目を向けてみてください。街のアピールポイントをギュッと詰め込んだ楽しい「シティプロモーション横断幕」がきっと見つかります。

高橋 学

たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。

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