アーケード国道の入口
写真・文=高橋 学

長崎市の国道324号、アーケード国道の魅力

高橋 学

今回のテーマは「アーケード国道」です。

商店が並ぶ通りに屋根がかかっていて、雨が降っても快適に買い物が楽しめるアーケード商店街は珍しい存在ではありません。ただし、その通りが国道であることは非常に珍しく、大阪府東大阪市の国道170号と長崎県長崎市の国道324号の2か所しかありません。今回は長崎市の国道324号の、アーケード国道を訪ねてみました。

「日本と世界の道の雑学」では道路にまつわるさまざまなトリビアをお届けします。これまで何げなく利用してきた道路にちょっぴり興味を持ちながら運転を楽しんでもらえれば嬉しく思います。

目次

ここが国道?とおもわず疑ってしまう浜町アーケード

アーケード国道の入り口

アーケード国道の入り口。船首をモチーフとしたアーケードの看板は立体的な凝ったもので、青いおにぎり型の国道番号標識もちゃんとあります。長崎電気軌道(長崎市電)の駅も「浜町アーケード」です

長崎市浜町の浜町アーケードは、地元で「浜んまち」の愛称で親しまれている歴史ある商店街です。アーケードの入り口には船首をモチーフとしたようなゲートがあり、港町長崎らしさを醸し出しています。

このアーケード商店街は、長崎市内から熊本県の天草を抜け、熊本県宇城(うき)市までを結ぶ国道324号の一部となっているのが今回のポイント。アーケード商店街の区間は午前10時から翌朝の5時までは歩行者等専用の道路となっているので、自動車が通行できるのは早朝5時から10時までのたった5時間だけです。

しかも、南側には並行する大きな道路がありますので、店舗への搬入・搬出などを行う業者のクルマ以外、わざわざこのアーケード街に進入する理由はあまり感じられないという印象でした。

一日の大半は買い物を楽しむ人々でにぎわう商店街です

国道番号標識と歩行者専用標識

国道番号標識と歩行者等専用標識

ステンドグラス風のアーケードが美しい商店街

ステンドグラス風のアーケードが美しい商店街は終日にぎやかで、ここが国道とは思えない風情です

商店街にかかるアーケードは、ステンドグラス風のデザインで長崎らしさを感じます。飲食から生活用品まで何でもそろう充実ぶりと、街並みの美しさや買い物を楽しむ人のにぎやかさは、自動車が行き交う一般的な国道のイメージとはちょっとかけ離れています。自動車の通行できる早朝には商品搬入のトラックなどを多く見かけますが、それでも国道感はちょっと薄めです。

朝8時ごろの浜町アーケード

朝8時頃の浜町アーケード。足早に駅やバス停へ向かう通勤・通学の人とトラックが入り混じっています

アーケード街を抜けてもしばらくは道幅の狭い裏路地のような区間が続くのですが、なんと途中からは逆方向の一方通行となり、そのまま進めなくなります。一方通行の国道というのも珍しいのではないでしょうか。ちなみに浜町の繁華街は、わが国で国道が整備されるずっとずっと前、江戸時代あたりにはすでにあったそうで、なぜこの区間を国道324号と定めたのかは、地図を見ても実際に歩いてみても不思議な感じがします。

アーケードを抜けた先も国道324号

アーケードを抜けた先も国道324号ですが、進んでいくと進入禁止の標識が! でも、一方通行の標識がある先も国道324号なんです

市電の終着駅(崇福寺電停)の風情がいい感じ

石が敷かれた幅が狭い国道をさらに進むと、国道324号は右に曲がり、広い通りへと出ます。ここから市電の軌道を渡り、写真右奥の上り坂方面へ続いていきます。市電の終着駅(崇福寺電停)の風情がいい感じです

国道324号は高速船で結ばれる海上区間もあり、クルマでの走破は不可能!

国道324号の海上区間に就航している高速船

国道324号の海上区間に就航している高速船

全国に2か所しかないアーケード区間のある国道の一つとして、マニアには知られた国道324号ですが、実は走破の難しい国道でもあります。

起点の長崎市内をスタートすると、すぐに今回紹介したアーケード商店街の区間があります。朝の5時間しか通行できない国道というのも珍しいのですが、早起きして無事クリアしても、今度は途中に逆方向の一方通行の区間があるという、これまた国道としては珍しいつくり。

そして次なる難関は長崎県と熊本県の県境に海上区間(下地図参照)があることです。実はこの海上区間を航行する高速船には車が載せられません。早朝にアーケードを抜けたとしても、その先の海上区間を通ってクルマと一緒に対岸へは渡れないのです。

クルマがなければ走破は難しいけど、クルマだけでは走破できない不思議さに満ちあふれているのが国道324号です。ネット等を眺めていると国道の走破を目指すマニアの方々を目にしますが、そんな方にはぜひ挑戦してみてほしいと思います。

高橋 学

たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!