日本からトルコを結ぶアジアハイウェイ1号線
写真・文=高橋 学

東京・日本橋からトルコまで道がつながっているって本当?

高橋 学

今回のテーマは「アジアハイウェイ(Asian Highway)」です。

この、ちょっと聞きなれない「アジアハイウェイ」とは、南北のアメリカ大陸を結ぶパンアメリカン・ハイウェイやヨーロッパの各国を結ぶヨーロッパ・ハイウェイのような国際道路網のアジア版です。現在アジア地域の32か国を結んでいて、その総延長は約14万2000kmにも及びます。

「日本と世界の道の雑学」では道路にまつわるさまざまなトリビアをお届けします。これまで何げなく利用してきた道路にちょっぴり興味を持ちながら運転を楽しんでもらえれば嬉しく思います。

目次

アジアハイウェイ1号線は、東京・日本橋から始まる

アジア地域を結ぶ国際道路網といっても日本は島国ですから、陸続きの国境がなく、道路を使って隣の国と行き来はできません。ところが「AH」と記載されるアジアハイウェイの1号線「AH1」の起点は日本国道路元標のある東京の日本橋なのです。

このAH1、日本橋から首都高~東名高速~名神高速~中国自動車道などの高速道路を共用する形でひたすら西へ向かいます。博多港~釜山港を結ぶフェリーを海上区間として、韓国でユーラシア大陸へ。その後、中国やベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーなどアジア地区の各国を通りながらインド、中東を経由してアジアの最西端・トルコで終点となり、そのままヨーロッパの道へとつながります。

時代は違えど京都、江戸と、かつてオスマン帝国の首都であったトルコ・エディルネの地がアジアハイウェイという1本の道でつながっていることに何だか不思議なロマンを感じてしまいます。

日本橋にあるアジアハイウェイ1号線の標識

アジアハイウェイの1号線「AH1」の起点は首都高速都心環状線の日本橋の上。「日本橋 道路元標」の標識の下にアジアハイウェイを示す標識(AH1)があります

カンボジア、ポイペトの街の「AH1」

カンボジア、ポイペトの街の「AH1」。写真はタイとの国境付近。日本の首都、東京が起点の「AH1」はカンボジアの首都プノンペンもタイの首都バンコクも通過します

国によって異なる、アジアハイウェイの標識

起点となる東京・日本橋にある首都高速道路上のアジアハイウェイの標識は白地に黒い文字で「AH1 ASIAN HIGHWAY」とありますが、東南アジアでは青地に白文字で「AH●●」という日本の国道番号標識のような色使いが多いようです。

また国によっては道路案内の標識にも表示がありますし、ナビ画面にもアジアハイウェイが表示されることもあります。それに比べ日本では冒頭に記したように「アジアハイウェイ」という言葉はあまりポピュラーではありません。他国へは飛行機を使うことが多いわが国ならではの傾向なのかもしれません。

タイ国内のこんな風景も「AH1」

タイ国内のこんな風景も「AH1」

ミャンマー、ミャワディの街の「AH1」

ミャンマー、ミャワディの街の「AH1」

ラオスで見たアジアハイウエイの標識

ラオスで見たアジアハイウエイの標識

アジアハイウェイは、まるで現代のシルクロード⁉

とはいえわれわれだってアジアの一員。そもそもアジアハイウェイは「アジア諸国を幹線道路網によって有機的に結び、国内及び国際間の経済及び文化の交流や友好親善を図り、アジア諸国全体の平和的発展を促進させることを目的としています」(国土交通省ウェブサイト)と、その目的はきわめて明確です。現実的には20,322kmという非常に長いアジアハイウェイ1号線(日本~トルコ)の総延長だけではなく、通過国それぞれの国情を考えれば、現状、起点から終点までの完走は現実的ではないかもしれません。

でもクルマ自体のグローバル化が進んでいる今、クルマでの移動においても、さまざまな障壁がなくなればいいなと思います。国内で「AH1」の標識を見かけたら、そこはヨーロッパにつながる道の起点というわけです。そして海外で「AH1」の標識を見つけたら、その道路は日本までつながっている一本の道と覚えておくと、旅先でちょっと感慨が深まるかもしれません。

今回は、そんなアジアハイウェイのお話でした。

タイでは地図アプリでも「AH123」が表示されていました

タイでは地図アプリでも国道3229号線とともに「AH123」が表示されていました

同じくタイ国内の「AH1」

同じくタイ国内の「AH1」。道路案内の標識にも表示があります

高橋 学

たかはし・まなぶ 1966年北海道生まれ。下積み時代は毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下でレーシングカーをはじめとするさまざまな自動車の撮影を中心に活動。ウェブ等でカメラマン目線での執筆も行いながら現在に至る。

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