朝早起きして、ご飯を炊いて、味噌汁を作って・・・キャンプで脱・自堕落生活!?

バイきんぐ西村瑞樹先生の冬キャンプ論【後編】
バイきんぐ 西村瑞樹

お笑い芸人から俳優、ミュージシャン、文化人まで幅広いジャンルの著名人が「今、とくに夢中になっている趣味」をテーマに、意外な偏愛嗜好について論じます。 第10回は、キャンプ芸人として大活躍中の人気お笑いコンビ「バイきんぐ」の西村瑞樹さんにこだわりのキャンプ飯をご紹介していただきます。


キャンプの朝は和食がおすすめ!

キャンプに行くと朝、おなかが減って目が覚めるんです。家にいるときはそんなことないのに、キャンプではなぜかとてもおなかが減るので、必ず朝飯を作って食べます。朝飯は和食が多いですね。ご飯を炊いて、味噌汁を作って、魚を焼いて。

西村さんが飯盒で炊いたご飯

愛用の飯盒(はんごう)でご飯をふっくらと炊きます。

ご飯を炊くのって難しいと思っていませんか? 失敗してしまう理由は、水を入れてすぐに火にかけてしまうから。そうするとお米の芯が残ってしまうんです。あらかじめお米をしっかり水につけておけば上手に炊けます。朝ご飯で食べるなら、前の晩からしっかり浸水させておけば、ほぼ成功しますし、朝起きてすぐに火にかけられるのでおすすめです。

こだわりのキャンプ飯は「鍋」

夕食はまず冬だったら鍋ですね。最近は「カレー鍋」に凝っています。豚肉をごま油で炒めて、鍋スープはカレーのルウと醤油、みりん、酒、そして鶏ガラスープで作ります。じゃがいもを切らないで丸ごと入れるのがポイント。あとは好きな野菜……ホウレン草、ミニトマト……あと餅巾着(もちきんちゃく)なんかも合いますね。

鍋の締めには青森名物の味噌カレー牛乳ラーメンを作ります。鍋スープを鶏ガラスープで少し薄めて、そこに味噌を溶いて、牛乳を足すとでき上がります。トッピングにコーンやバターがあると格別ですよ。

キャンプで鍋を囲む西村さん

冬キャンプの鍋はあったかくて最高。

「鶏山椒(とりさんしょう)鍋」もおすすめです。醤油ベースの甘くて濃いめの出汁(だし)が合います。めんつゆで代用してもOKです。具材は鶏肉と、鶏団子など。この鶏団子に山椒の実を混ぜるのがポイントです。あとはチンゲンサイ、水菜、シイタケ、セリなんかも入れて食べてください。締めはもちろん蕎麦(そば)を入れて鶏蕎麦にするのが最高です。

家ではやらないメニューにもチャレンジ!

鍋以外なら鉄板焼きもいいですね。「牡蠣(かき)のレモンバター焼き」はとても簡単でおすすめです。鉄板にバターを溶かして、牡蠣を焼いて、レモンを搾ります。このときにレモンの果汁とバターの油が混じって、フランベのように炎が上がります。まさにキャンプ飯ならではの豪快さです。

貝類でもう一つやってほしいのは「鮑(あわび)の塩釜焼き」ですね。塩を卵白で混ぜてドロドロにして、鮑に塗って固めて、アルミホイルにくるんで焚(た)き火にほうり込むんです。焼けたらハンマーで塩釜を叩(たた)き割るんですが、そのときのイベント感も楽しくて、子供も喜ぶんじゃないですか。

鮑の塩竃焼き

ホイルで作る「鮑の塩釜焼き」。ぜひ皆さんやってみて。

鮑の肝を白ワインとバターと醤油で延ばしてソースを作って、日本酒でいただけば最高です。それこそ熱燗(あつかん)を焚き火で作るのもいいですね。焚き火を見ながら焚き火で作った熱燗を飲む。まさに極楽。

焚き火で熱燗を作る西村さん

冬の夜空の下、焚き火で熱燗はいかが?

僕にとってキャンプ飯のこだわりは焚き火調理。家にあるガスコンロだったら、つまみ一つで火加減は変えられますが、焚き火を強火にするには薪を足して、弱くしたいときには薪を抜いて……弱火で魚をじっくり焼きたいときには3時間ぐらい待って、炎が出ずに赤くテラテラした状態、いわゆる熾火(おきび)にしてから、ようやく網を置くわけです。贅沢(ぜいたく)に焚き火を使って、火を操る楽しさ、それこそがキャンプ飯の醍醐味(だいごみ)だと思います。

自分の山で木々や花を愛でる暮らし

キャンプを始める前は、朝まで飲み明かすような不規則な生活をしていたんです。でもキャンプで朝ご飯のおいしさを再認識したこともあって、規則正しい生活をするようになりました。今では家でもちゃんと起きて、朝ご飯を食べています。

また自分でも不思議なんですが、植物を好きになりました。木々や花に四季折々の顔があるということは、キャンプをしていなければずっと気づかなかったと思います。

実はテレビの特番で「山を買いませんか?」というお話をいただいて、面積が455坪、テニスコートに換算すると6面分の山を購入しました。そこに一本だけ栗の木があるんです。栗は9月から10月に実るので、そんな季節が限られているということに儚(はかな)さや切なさを感じるようになりました。

紅葉にも言えますね。本当にタイミングが難しい。木々が赤や黄色に色づいて奇麗に見えるときも、僕たちは遠くからざっと見て奇麗だと思っているだけで、実際は色づいていない木々もある。山の中で見てもなかなか均等にはならないんですよ。だからいつか僕が思い描く、すべての木々が色づいた完全な紅葉の真ん中で、キャンプがしたいんです。それが一番の夢ですね。

余談ですが、焚き火も木の種類によって燃え方が違います。広葉樹のほうが木の目が詰まっていて、密度が高いので長持ちするんです。針葉樹はすぐ火がつきやすいので、焚きつけるのにはいいけれど、すぐに燃え尽きてしまう。だからじんわりゆっくりと炎が上がらない熾火の状態で魚を焼くときは広葉樹のほうがいいんです。

焚き火の様子

薪にも個性があって、サクラを使うとほのかに香ります。

「何もしないキャンプ」のススメ

時々「お仕事でもキャンプをしていますが、プライベートでもキャンプをしたいですか?」と聞かれることがありますが、答えはもちろん「いつでもしたい」。仕事のキャンプはビジネスキャンプと言いますか、やることが決まっているわけです。でも僕はキャンプ場に行ったら何もやりたくないんです。「食う・寝る・焚き火」これだけでいい。このコラムを読んでキャンプに興味を持ってくれた皆さんにも、ぜひ何もしないためにキャンプに行くことをおすすめします。

バイきんぐ 西村瑞樹

バイきんぐ にしむら・みずき SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ) 所属。 1977年4月23日生まれ。O型。広島県出身。右投げ左打ち。座右の銘は「習うより舐(な)めろ」。 エッセイ本『ジグソーパズル』発売中。 YouTube:CAMP西村チャンネル

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