生豆を煎り始めたのが偏愛の入り口!? 手回し焙煎機購入でコーヒー愛に拍車!!
竹内由恵先生のコーヒー論【後編】お笑い芸人から俳優、ミュージシャン、文化人まで幅広いジャンルの著名人が「今、とくに夢中になっている趣味」をテーマに、まさかと思うような意外な偏愛嗜好について論じます。 第11回は元テレビ朝日アナウンサーで、現在はタレントとして活躍する竹内由恵さんにこだわりのコーヒー焙煎(ばいせん)について語っていただきました。
コーヒーの焙煎を始めたきっかけ
私がコーヒーの焙煎を始めたのは、今から2年ほど前、静岡に移住してからです。コロナや妊娠で思うように仕事をすることができなかったので、この間にカフェを開きたいという夢に向けて準備しようと思いました。
最初はフライパンでコーヒーの生豆(きまめ)を煎(い)るところから挑戦してみました。ガスコンロの上でフライパンを振るのですが、生豆に均一に火を通すのが難しく、仕上がりと味はいまいち。
そこで思い切って購入したのが、手回し焙煎機です。
自分の味を追求できる奥の深い手回し焙煎機。
釜に生豆を入れ、それを人の手でぐるぐる回転させ、焼いていくのです。今、自家焙煎のお店のほとんどは、手回し焙煎機ではなく、扱いやすい機械焙煎を使っています。それでも手回し焙煎機にしたのは、その当時たまたま見た番組の影響です。
そこには大坊勝次さんというコーヒー業界のレジェンドが、手回し焙煎機で自家焙煎されている様子が映っていました。38年もの間、毎日、長いときは5、6時間作業部屋に籠(こも)って、黙々と手回し焙煎機を回している姿は圧巻で、「これぞ職人だ!」と感銘を受けました。もちろん値段が機械焙煎に比べたら圧倒的に安く、3万円くらいで手に入るというのも大きな理由でしたが……。
それからしばらくは手回し焙煎で練習していました。ただ、均一に火が通らない、私の好みとは違う深めの味わいになってしまう、さらに作業中に2度ほど腕に痕が残ってしまうような大やけどをしてしまい、1年くらいで断念。かわりに購入したのが、現在も使っている機械焙煎機「COFFEE DISCOVERY」です。小型サイズではあるのですが、本格的な機能がそろっていて、とっても優秀で、本当においしいコーヒーができるんです!
焙煎に必要な機能を超小型ボディに凝縮した本格派ロースターです。
コーヒー焙煎の楽しさとは
焙煎の楽しさは、豆の微細な変化を感じ取りながら、火加減や空気の入り方を調整していくところです。
まずは弱火からスタートし、ゆっくり豆の内部まで温めていきます。はじめは緑色の生豆が4分ほどでオレンジ色になっていきます。そのうちにシワシワしてきたら、風量を調節します。ちなみにこのシワシワ、本当に一瞬なので見逃せません。その後、豆の香りがカラッとしてきたら、一気に強火に。そのうちに、「ポン」と豆がはじけ、つられるように「ポンポンポン」と他の豆たちもはじけていきます。まるでポップコーンのように。ため込んでいたストレスを吐き出す軽快さがあり、豆たちから「あースッキリした!」という声が聞こえてきそう。
もちろん、焙煎中の香りは格別です。たまに街を散歩していると同じ香りがしてくるんですが、「あーどこかで誰かが焙煎しているんだな」と仲間意識が勝手に芽生え、うれしい気持ちになります。
焙煎の仕方は人それぞれで、正解はありません。私はいろんな方に教えてもらって今の方法にたどりつきました。おいしいと思ったお店の方に「お話聞かせてもらえますか」と直接話しかけるなど強硬手段に出たことも。失礼な奴だ、と一蹴されかねない行動だと思うのですが、幸い私が声をかけさせてもらった方々は優しく教えてくださいました。中には「よかったら焙煎する様子見に来る?」と言ってくださった方もいました。魂のレシピを教えてくださった方々への感謝は一生忘れません!
おすすめの自家焙煎のお店をご紹介
最後に、現時点で私がおいしい! と感じた自家焙煎のお店を3つご紹介します。
- タカムラ ワイン&コーヒーロースターズ……大阪西区にあるワインとコーヒーの専門店。旅行中たまたま通りかかったお店なのですが、日本に約10台しかないスマートロースターという最新鋭の焙煎機を使っていて、扱っている豆の種類もどれも世界最高峰のコーヒー農園から仕入れたもの。まさにワインを選ぶような感覚でコーヒーが選べるお店でした。
- セントベリーコーヒー……静岡のコーヒーフェスで出会ったお店です。富山の自家焙煎店だそうです。「ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ」で審査員を務める父親と優勝した経験のある息子さんが経営されています。雑味のないクリアな仕上がりで、とてもおいしかったです。
- 創作珈琲工房 くれあーる……静岡にあるお店です。ここの店主内田さんはローストマスターズ委員会の委員長を務めており、全国の焙煎業者向けに勉強会を開催される、焙煎士にとっては名の知れた方でもあります。私自身目標にしているような焙煎をされています。
今は子供が小さいので全国各地のコーヒー店を巡るというのは難しく、話題のお店のコーヒーはネットで取り寄せて試していますが、各地の人気店に直接足を運びたいと思っています。いつかタモリさんが行かれたという「紅茶のように薄い色合い」のコーヒーを提供してくれる熊本にある「珈琲アロー」にも行ってみたいなあ。コーヒーを通して、人生に楽しみが増えました。みなさんもぜひ、この奥深きコーヒーの世界を一緒に楽しみましょう!
竹内由恵
たけうち・よしえ 1986年生まれ。東京都出身。2008年、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。同年『ミュージックステーション』のサブ司会に抜擢(ばってき)され、『やべっちFC』や『世界水泳2011』などスポーツ番組のキャスターを経て、『スーパーJチャンネル』や『報道ステーション』などのニュース番組のキャスターとして活躍。33歳で結婚を機に退社し、夫の勤務地である静岡での暮らしをスタート。35歳で長男を出産。現在は、バラエティ番組や情報番組など幅広い分野で活躍中。自分自身で豆を焙煎するほどのコーヒー好き。趣味はカフェ巡り。