一人旅研究会が行く趣のある木造校舎。時が止まった廃校を訪ねてみよう
ソロドライブ! 学校の思い出に浸れるエモい廃校めぐり「廃校」と聞くとどのようなイメージを思い浮かべますか?『学校の怪談』で出てくるようなおどろおどろしい姿でしょうか? それとも、ずっと昔に通っていた、友人たちの声が響き渡るにぎやかな校舎でしょうか? 廃校になってからも維持管理がなされ、見学ができる木造校舎(※)が全国にはたくさんあります。今回は、私が訪れた廃校の中からお気に入りの木造校舎をご紹介します! 通っていた校舎は木造ではなかったという方も、きっと懐かしい気持ちになれると思います。いざ、廃校巡りの旅へ!
※ 豊郷小学校旧校舎群のみ鉄筋コンクリート造となります。
ソロドライブをしたのは
栗原悠人さん(一人旅研究会)
くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。
1. 旧喰丸(くいまる)小学校 / 福島県
イチョウの絨毯がすてきな豪雪地帯の廃校
校庭にある大イチョウが黄色い絨毯(じゅうたん)を広げる
階段。懐かしさに小学生時代を思わず思い出してしまう
廊下。子供たちが雑巾がけしている光景が目に浮かぶ
教室の入り口に掲げられた札。おしゃれなデザインだ
教室には木製の机と椅子が並ぶ
2階建ての木造校舎と校庭
日本国内でも有数の豪雪地帯である、福島県昭和村にある旧喰丸小学校の木造校舎。閉校は1980年。校舎は2階建てで、長い廊下の脇に教室が並ぶおなじみの構造。木造校舎には、なぜこんなにも温かみを感じるものなのでしょうか。長年磨かれてきた木製の床に歴史を感じます。教室は「1、2学年」という具合に、2学年で1つの教室を使っていたようです。こんなに美しい校舎も、維持管理に相当な労力とお金がかかるため何度も解体の話が出ていたといいます。木造建築物を維持するのはただでさえ骨が折れるのに、この地域は豪雪地帯で冬には雪下ろしが必要なため特に管理体制を整えることが問題になったそう。昭和村役場が中心となって校舎の保存のためクラウドファンディングなどを活用し、現在の施設へ改修。教室の机の上に、かつて使用されていた教科書を並べて展示するなど、一般開放され、観光地として活用されています。尽力されている方々には頭が下がります。
2. 旧上岡(うわおか)小学校 / 茨城県
明治時代の建築! だるまストーブがかわいい、平屋の廃校
教室。巨大なそろばんが懐かしい
外観。白色の窓枠がおしゃれ
福島県に隣接する茨城県大子(だいご)町は、日本三名瀑の1つである袋田の滝で有名です。その町に明治43年築(一部校舎はそれ以降の建築)の木造校舎が残されています。 上岡小学校が閉校したのは2001年。当時の備品の多くがそのまま残されており、往時を容易にしのぶことができます。職員室では、だるまストーブを囲むように机が並んでいたのが印象的でした。そして、平成中頃まで現役だった校舎にもかかわらず、令和はおろか平成らしさを感じさせるものが、皆無なことに驚きです。昭和中盤に小学生だった方々には、ほぼドンピシャな景色が広がっているのではないでしょうか。もちろん、それ以外の世代の方々にも響くはずです。誰しもが持つ小学校に通っていたときの記憶やその頃の思い出が、ここを訪れると不思議とよみがえってくるのではないかと思います。
3. 旧木沢小学校 / 長野県
大自然に囲まれたレトロな木造校舎
外観。遊具も残されている
階段には現役だった頃の写真が何枚も掛けられていた
教室。非常に温かみを感じる空間。2011年の引っ越し会社の宣伝に使われた
校舎にすみついていた猫の高峰。私のことを追いかけてくれた
教室前方にはだるまストーブがあった
1932年築、2000年に閉校した長野県旧木沢小学校。ドライブすると気持ちの良い、山々に囲まれた国道152号沿いにあります。小学校へ至る道中の景観の良さからツーリングライダーにも人気で、年に一度ここで、バイク愛好者によるオフ会が開かれるのだとか。木造校舎は昇降口からげた箱、廊下など細部にわたって木のぬくもりに触れられる設計になっていて、教室にたたずむと懐かしい気分がこみ上げてきます。2023年まで、「高峰(たかね)」の名前で親しまれていた猫ちゃんがすんでおり、訪問者に癒やしを与えてくれていたのですが、残念ながら亡くなってしまいました。私が訪れたときも、高峰がついて来てくれました。廃校の守り神のように見えて「なんとすてきな光景なんだろう」と思わずシャッターを切ったことを思い出します。
4. 豊郷(とよさと)小学校旧校舎群 / 滋賀県
外国人建築士が手掛けた華やかな噴水がある校舎
入り口前の噴水
長い長い廊下
階段の手すりに取り付けられたうさぎと亀の話をモチーフにした像
電話室。電話交換手を介して相手と通話していた頃の機種だ
廊下に面する窓もおしゃれだ。随所にデザインが施されている
採光がよく、明るい廊下
旧会議室
アニメ『けいおん! 』の舞台といわれる学校でもある
昔は図書館だった。現在はフリースペースになっている
1937年に建てられた校舎
琵琶湖の東に位置する滋賀県豊郷町には、1937年に建てられた豊郷小学校の旧校舎が残されています。ここまで紹介した木造校舎とは違った風貌で、一見の価値ありです! 丸紅の専務も務められた近江商人、古川鉄治郎氏の寄付によって建てられており、中央にはなんと噴水が鎮座しています。アメリカ人建築家W・M・ヴォーリズ氏によって設計されており、他の校舎と比較しても、ひときわ洋風色が強く、階段の壁がアールを描いていたり、階段手すりに丸型のアイアンワークが設置されたりとモダンなたたずまいです。その一方、他の校舎と同じように、元気いっぱいの子供たちが廊下で騒いで駆けまわる様子が目に浮かび、「小学校」として機能していた当時をしのばせる設(しつら)えも多く見られます。現在は、別棟にある旧図書館で不定期であるが、カフェが営業しており、「そのままカフェに転用できるほどおしゃれな小学校が日本にはあるんだ!」と思わず感嘆してしまいました。
5. 旧遷喬(せんきょう)尋常小学校 旧校舎 / 岡山県
二重折り上げ格天井を持つ豪華絢爛な校舎
明治モダンなたたずまい
この校舎の階段、学校の階段にしては珍しく、半らせん構造をしている
2階の廊下
思わず息をのむほどの美しさ
階段の柱と手すりに施された凝った装飾
後ろにはランドセルが。かなりの年代物のように見える
教室と長机
大きな定規
天井は二重折り上げ格天井になっており、格式の高さと学校教育に対する力の入れ具合が窺える
昇降口
校長室
2階中央部にある講堂
旧遷喬尋常小学校は、なんと約120年前(1907年)に建設された校舎を保存、見学できる小学校です。国指定重要文化財の旧校舎は、完全左右対称な美しい外観を持ち、中央部にある講堂の天井には、書院建築などに使われる二重折り上げ格(ごう)天井が採用されています。明治時代に国が教育に力を入れた頃、全国各地に格式の高いすてきな校舎が建てられました。遷喬小学校の旧校舎の建設には、当時の町の予算の3年分に近い額が投じられたのだとか。教育にいかに大きな熱が注ぎ込まれていたかを窺い知ることができます。階段の親柱にも装飾が施されている校舎はなかなか見かけません。木造校舎の持つ温かみ以外に、「秘湯とレトロ宿を巡るソロドライブ旅! ひなび宿ベスト6を一人旅の達人が厳選」で紹介した木造旅館に見られる名工が手掛けた意匠が残されています。建築好きの方も、思わずうなることでしょう。
6. 布計(ふけ)小学校跡 / 鹿児島県
貸し切りで楽しめる鹿児島の木造校舎
正面から。瓦屋根も含め綺麗に維持されている
旧字体が使われた教室の看板
教室。2年生の教室だったらしい。窓から陽光が優しく入り込む
壁にはいくつもの張り紙が張られては取り外された形跡があり、年月の流れを感じる
黒板。チョークで文字を書く音が懐かしい
1979年までここに子供たちの声があった。だいぶ年月が経っているが、明日からでも、新しい生徒を受け入れてくれそうな雰囲気だった
熊本県と鹿児島県の県境の山奥に、平屋の木造校舎が残されています。閉校したのは1979年で、子供たちの声が校舎に響かなくなってから半世紀近くが経っています。既に廃線となりましたが、かつてはJR山野線の薩摩布計駅が付近にあり、小学校の周辺はにぎやかだったことでしょう。ふと教室の机に目を落とすと、落書きが描かれていました。住む場所や世代が違っても、子供の頃にやることは変わらないんだなぁとクスッとしました。教室からは広々とした校庭がよく見えます。机に座って外を眺めると、子供たちの声が聞こえてくるような気がします。廃校を訪れると、「1週間だけでもいいから、小学生の頃に戻りたいな~」と思ってしまいます。布計小学校の校舎内を見学する場合は、事前に伊佐市役所の大口庁舎で鍵を借りる必要があるのでご注意ください(令和7年5月現在)。
ソロドライブで見つけた! どローカル&レアな道路標識
その地域に住んでいる人にとっては当たり前の光景でも、他の地域に住んでいる人にとっては「何これ?!」と思わず見てしまう道路標示や構造物が全国各地にあります。今回は特にわかりやすい、特定の地域で見られるものを3つ選んでご紹介します!
1. 矢羽根
道路上に赤い矢印がずらりと並ぶ光景が印象的。積雪地、特に北海道で多く見られます。正式には固定式視線誘導柱と呼び、雪が多く降り積もる地域では、道路に描かれた車線が雪で見えなくなってしまうことから、除雪範囲をわかりやすく示すため、車道の端を示すために設置されています。「車線の端はここだよ」、と教えてくれるドライバーにとっては欠かせない存在です。
2. 二段停止線
「四輪」と「二輪」と書かれており、バイクの巻き込み事故を防ぐためのもので車種によって停止線が異なっています。近年、減少傾向にあるものの、現在でも香川県や愛媛県など、西日本を中心に一部地域に残っているそうです。このような標示がない自治体も多いため、「初めて見た!」という方もいるかもしれません。
3. 黄色いガードレール
普段見かけるガードレールの色は白ですが、山口県では黄色いガードレールをよく見かけます。県の名産、夏みかんの色を表現しているそうです。黄色はとても目立つ色ですが、意外と周りになじんでいていい色ですよね!
ソロドライブだからこそ行ける! 一人旅研究会おすすめの行き先
3か月にわたって、ジャンル別に郷愁を感じるおすすめのドライブスポットをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 観光ガイドブックにはあまり載ることはないけれど「ハマる人にはハマる」旅先だったのではないかと思います。こんな所があったんだ! と興味を持ったり、今度行ってみよう! と、ドライブに出かけるきっかけになれば幸いです。みなさまもぜひ、すてきな景色に出会う旅をしてみてくださいね。
その他のソロドライブ旅におすすめのスポットはこちら
ソロドライブ趣のある廃校ベスト6マップ
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