ひなび宿の内観、温泉
文・写真=一人旅研究会(栗原悠人)

秘湯とレトロ宿を巡るソロドライブ旅! ひなび宿ベスト6を一人旅の達人が厳選

ノスタルジックな宿と秘湯を満喫できる、クルマ旅のすすめ

みなさん初めまして! 旅情と郷愁を求めて全国を一人旅している栗原悠人です。一人旅研究会という名前で、さまざまな媒体でお気に入りの郷愁空間を紹介しております。今月から3回にわたって、ソロドライブ旅におすすめのスポットをご紹介していきます。初回は、私が大好きな“木造の旅情あふれるお宿=ひなび宿”から厳選した6か所をお届け! 日常でたまった疲れを癒やしてくれるはずです! 鉄道やバスなどの乗り継ぎが大変な場所でも、気ままなソロドライブならマイペースにじっくりと楽しむことができます。ぜひドライブ旅の参考にしてくださいね。

目次

一人旅研究会

くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。

1. 青森県黒石市
古くからの温泉旅風情を楽しめる客舎宿

後藤客舎の外観

旅情をそそる宿の玄関

後藤客舎の廊下

宿泊時のサービスとしてリンゴをいただいた

後藤客舎のある温泉街

温湯温泉街にある商店

後藤客舎外観雪

冬に行くと、屋根の上には分厚い雪が積もっていて雪国旅情を味わえる

外湯外観

宿から徒歩10秒の温湯温泉共同浴場。宿泊時にいただいた入浴券を使用して汗を流す

外湯内観

中は奇麗だ。せっけん等は備えつけられていないので要注意

中は奇麗だ。せっけん等は備えつけられていないので要注意

旅情をそそる宿の玄関

宿泊時のサービスとしてリンゴをいただいた

温湯温泉街にある商店

冬に行くと、屋根の上には分厚い雪が積もっていて雪国旅情を味わえる

宿から徒歩10秒の温湯温泉共同浴場。宿泊時にいただいた入浴券を使用して汗を流す

中は奇麗だ。せっけん等は備えつけられていないので要注意

旅情をそそる宿の玄関

1 / 6

●後藤温泉客舎/青森県黒石市温湯鶴泉23 Tel. 0172-54-8318
https://kuroishi.or.jp/stay_onsen/nuruyuonsen/gotoukyakusya

豪雪地帯にある青森県黒石市の温湯(ぬるゆ)温泉街には、客舎(きゃくしゃ)と呼ばれる宿泊施設があります。客舎には温泉がないため、入浴するには温泉街の共同浴場へ行きます。近年では、それぞれの旅館や自室に温泉を構えている所が多いですが、かつては宿泊施設に温泉はなく、共同浴場で入浴するのが一般的でした。温湯温泉では、そんな昔ながらの温泉旅行を楽しむことができるのです。宿泊棟の詳細な建築年はわかっていないものの、少なくとも大正時代、一説には江戸時代後期の建築だといわれています。部屋と外とはガラスサッシと障子で隔てられているだけで、街を歩く人たちの息吹を感じることができる点も、風情が感じられます。冬に行けば、外は銀世界。雪国旅情と木造旅館と温泉の温もりに、存分に触れられるお宿です。

2. 山形県最上郡
建築美あふれる、山形に現存する最古の木造旅館

喜至楼の風呂

多人数で入れるローマ風呂

喜至楼外観

目を引く喜至楼の外観

喜至楼の壁にかけてある旧字体の看板

旧字体が使われた看板

喜至楼の玄関口

夜、旅館の中を一人で歩く

夜、旅館の中を一人で歩く

多人数で入れるローマ風呂

目を引く喜至楼の外観

旧字体が使われた看板の例

夜、旅館の中を一人で歩く

多人数で入れるローマ風呂

1 / 4

●瀬見温泉 喜至楼/山形県最上郡最上町大堀988 Tel. 0233-42-2011

喜至桜(きしろう)は山形県内に現存する、最古の木造旅館。本館の一部は明治時代に築造されたもので、このお宿をひとたび見れば、部材一つひとつに細かい装飾が施された美しさに魅了されてしまいます。外観だけでなく、建物の中にも昔の日本建築らしい特徴が見られます。曲がりくねった廊下とたくさんの階段などなど、迷路のようで思わず館内散策をしたくなってしまいます。宿の中には、旧字体が使われていた時代からある案内看板がいくつもあるので、旧字体をどれだけ見つけられるか、数えてみるのも楽しいかもしれません。

3. 岩手県花巻市
立ったまま入浴! 静寂に癒やされる鉛温泉

藤三旅館の風呂

日本一深い自噴泉

藤三旅館の外観

木造3階建て。圧巻の景色だ

湯治部の部屋

宿泊した湯治部の部屋

藤三旅館の風呂

静かな空間で心が癒やされる

静かな空間で心が癒やされる

日本一深い自噴泉

木造3階建て。圧巻の景色だ

宿泊した湯治部のお部屋

静かな空間で心が癒やされる

日本一深い自噴泉

1 / 4

●鉛温泉 藤三旅館/岩手県花巻市鉛中平75-1 Tel. 0198-25-2311(旅館部) https://namari-onsen-ryokan.com/

鉛(なまり)温泉 藤三(ふじさん)旅館は岩手県花巻市にある木造3階建て旅館です。お部屋は一般の旅館部と、湯治部という一部セルフサービスの簡易部屋に分かれており、私は湯治部に宿泊しました。湯治部の建物は簡素なたたずまいですが、ここで多くの人の体と心が癒やされたのだと思うと、早く温泉に入りたくてわくわくしてしまいます。温泉は日本一深い自噴泉として有名で、なんと、立ったまま入浴します。湯は底からこぽこぽと湧き出ており、浴室にはその音が静かに聞こえるのみです。一切の邪魔のないこの空間でゆっくりと湯に浸かれば、多幸感に包まれること間違いなしです。

4. 長野県下高井郡
町歩きも家族風呂も楽しめるとっておきの宿

つばたや旅館外観

渋温泉街の中心地に位置するつばたや旅館

つばたや旅館の部屋にあった広縁

部屋にあった広縁(ひろえん)

家族風呂の浴槽

家族風呂。人生を振り返るのにちょうどいい一人用サイズの浴槽

パイプが張り巡らされた壁

渋温泉街の裏路地。温泉を運ぶ管が壁にすごい密度で張り巡らされて圧巻の景色だ

パイプが張り巡らされた壁

別の裏路地も温泉の管だらけで大興奮!

別の裏路地も温泉の管だらけで大興奮!

渋温泉街の中心地に位置するつばたや旅館

部屋にあった広縁(ひろえん)

家族風呂。人生を振り返るのにちょうどいい一人用サイズの浴槽

渋温泉街の裏路地。温泉を運ぶ管が壁にすごい密度で張り巡らされて圧巻の景色だ

別の裏路地も温泉の管だらけで大興奮!

渋温泉街の中心地に位置するつばたや旅館

1 / 5

●渋温泉 つばたや旅館/長野県下高井郡山ノ内町平穏2052 Tel. 0269-33-2165
https://www.mountaintrad.co.jp/~tsubataya/

渋温泉街の中心部に位置するつばたや旅館。温泉街も旅情をそそる雰囲気があり、ぜひ町歩きも一緒に楽しんでいただきたい場所です! 特におすすめなのが、表通りから一本裏に入った細い路地にある、密集した温泉パイプが張り巡らされている空間です。この密集具合は、全国見渡しても簡単に見つけられるものではありません。つばたや旅館の離れにある家族風呂(宿泊客で希望の方のみ利用可)も必ず行ってほしいところ。大人一人が入れるだけのこぢんまりとした木製の浴槽は、一人静かにお湯に浸かって今までの人生を顧みるにはちょうどいい大きさです。泊まったお部屋にはすてきな広縁がありました。深夜、お茶を片手に答えの出ない人生の問いについて考えを巡らすのも、ひなび宿を満喫する醍醐味でもあります。

5. 三重県伊賀市
花街で栄えた華やかな意匠が残る伊賀の宿

薫楽荘の外観

外観。「薫楽荘」の文字が夜の闇の中に浮かんでいる

薫楽荘の部屋の様子

目覚めの良い朝。このお部屋に泊まれて素泊まり5,000円(訪問当時)なのが驚きだ

薫楽荘の廊下

廊下。朝日が奇麗

薫楽荘の下地窓

丸形の下地窓。どのように竹を組むのかは窓の形状によって全部違う

薫楽荘の下地窓

他にもいろいろなデザインの下地窓がある。電球の傘もすてきだ

他にもいろいろなデザインの下地窓がある。電球の傘もすてきだ

外観。「薫楽荘」の文字が夜の闇の中に浮かんでいる

目覚めの良い朝。このお部屋に泊まれて素泊まり5,000円(訪問当時)なのが驚きだ

廊下。朝日が奇麗

丸形の下地窓。どのように竹を組むのかは窓の形状によって全部違う

他にもいろいろなデザインの下地窓がある。電球の傘もすてきだ

外観。「薫楽荘」の文字が夜の闇の中に浮かんでいる

1 / 5

●薫楽荘/三重県伊賀市上野桑町1473 Tel.0595-21-0027 instagram@ryokan_kunrakusou

忍者で有名な三重県伊賀市街に、国の登録有形文化財に指定されている旅館、薫楽荘(くんらくそう)があります。かつては花街として栄えており、1958年までは芳真楼(ほうしんろう)の名で営業していました。温泉ではないものの、ゆったり入れる浴室があり、回廊のように巡らされた美しい廊下や、随所に見られる下地窓など、有形文化財らしい風格を感じられます。駅が近いので、ドライブ旅でなくとも行きやすいのがポイント。訪問当日、19時30分という遅い時間にたどり着きましたが、とても親切な女将さんに出迎えていただきました。良いお宿にはやさしい女将あり! 今も多くの方々に愛されている町のお宿でおすすめです!

6. 高知県高岡郡
趣あふれる吉田茂が宿泊した町中の宿

谷脇旅館の外観

敷地の中央には立派な松の木が立っている

谷脇旅館の廊下

吉田茂元首相が宿泊した部屋と廊下

谷脇旅館の下地窓

ここでも登場、下地窓

谷脇旅館の玄関口

床板に刻まれた年季に歴史を感じる

谷脇旅館の二股階段

二股に分かれた珍しい造りの階段

二股に分かれた珍しい造りの階段

敷地の中央には立派な松の木が立っている

吉田茂元首相が宿泊した部屋と廊下

ここでも登場、下地窓

床板に刻まれた年季に歴史を感じる

二股に分かれた珍しい造りの階段

敷地の中央には立派な松の木が立っている

1 / 5

●谷脇旅館/高知県高岡郡越知町甲1612 Tel.0889-26-0008

明治時代創業の谷脇旅館。現在の建物は1938年に建築されたもので、玄関前には立派な松の木が生えており荘厳な雰囲気を醸し出しています。吉田茂元首相が宿泊したこともある由緒あるお宿で、そんなお宿に泊まれるなんて、わくわくします。踊り場から二方向に下りられるようになっている階段があったり、床の間に曲がった木が使われていたり、欄干の装飾が豊かでさまざまな設(しつら)えを見ることができます。100年以上前の腕のよい大工さんが残したすばらしい仕事に触れることができるのです。歴史のあるお宿は、時を超えて当時の方たちと対話ができるような気がして、なんだか不思議な気分になります。

一人旅研究会、ソロドライブの魅力を語る

大学4年の夏、就職活動後に初めてソロドライブをしました。その晩、車中泊をした際に見た満天の星空が忘れられません。それ以降、時刻表にとらわれず、24時間移動可能なクルマ旅が中心になりました。ソロドライブなら、人混みを避けて早朝に観光地を回ったり、真夜中に流星群を見に行ったりすることも叶います。どんな旅程にするかは、一人であれすべて自由です。そう、わがままでいられるのです。日本はとても広いですから、「行きたい」と思う場所はたくさんあります。「行きたい」と思ったが吉日。たとえ公共交通機関だけでは到底たどり着けない、誰も関心を示さない山奥の秘境でも、愛車とであれば行けるのです。大好きなクルマと一緒に、憧れの景色に出会う。その時の胸の高まりは、何にも代えがたいのです。

ソロドライブーひなび宿ベスト6選マップ

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!