ソロドライブ 心が癒やされる「田舎の町並み」5選
旅ライター・一人旅研究会が訪ねるニッポンのレトロな町歩き「日本の町並みはどこも似ていてつまらない」という声を耳にすることがあります。幹線道路沿いにチェーン店が並ぶ光景を見ると、ここが一体何県なのか、わからないこともあります。でも、本当にどの町もそうなのでしょうか? 今回は温泉街、漁師町など、私が訪れてグッときた特色ある町をご紹介します! ノスタルジックな空気感に浸れる町を探検してみましょう。
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ソロドライブをしたのは
栗原悠人さん(一人旅研究会)
くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。
1. 渋温泉(温泉街)/長野県
木造旅館がひしめく、ザ・日本の温泉街!
長野県渋温泉の温泉街
温泉大国長野県には、温泉旅情あふれる宿がたくさんあります。そのなかでも、渋温泉街は雰囲気のある温泉旅館が数多く残っており、散策しているだけでも楽しいので特に好きで、幾度も訪れています。木造4階建ての美しい外観を持つ旅館・金具屋をはじめ、多くの木造旅館・細い路地がひしめき合う町並みは、壮観でグッときます。
せっかくなので、一人旅研究会らしく、表通りを外れた路地もご紹介します。表通りから一本奥へ入ると、観光客はほぼ見かけなくなります。しかし、この路地裏こそが渋温泉の見どころなので、歩かないのはもったいないです! 路地裏へ入ると、建物の壁に温泉を運ぶ管がものすごい密度で張り巡らされていて、管が頭上を通る光景を楽しめます! 圧倒的な管の密度に魅了され、私はしばしうっとりと見入ってしまいました。
「全国うねうね管路密集大会」なるものがあれば、長野県代表として出場できるほどだと思います(笑)。
この時間帯の色合いも好き
気になるごはん屋さんを見つけた。
昼食に来々軒で炒飯を食べた
思わず吸い込まれてしまう
ものすごい密度で、頭上を細い管が通っている
ザ・日本の温泉街の雰囲気
渋温泉で一番有名であろう金具屋旅館の建物
表通りを一本入るとこんな光景が見られる。誰も通らないひっそりとした路地
2. 菅沼・相倉(あいのくら)集落(茅葺屋根)/ 富山県
白川郷だけじゃない、富山県の合掌造りの集落!
大きな茅葺屋根の家屋が並ぶ様は壮観だ
相倉集落
菅沼集落全体像
合掌造りの集落といえば岐阜県の白川郷が有名ですが、富山県南砺(なんと)市にも、壮観な合掌造りの集落があります。白川郷からさほど離れていないので、白川郷に行って菅沼集落・相倉集落に行かないのはもったいないです!
家々は展示されているのではなく、いまも住民の方が生活されている正真正銘の「生きている町」です。生きている町を歩くのは楽しいです。たとえば、小学生がランドセルを背負って歩いている姿を見れば「自分ももしかしたら、こんな素敵な町に生きて、合掌造りの建物に囲まれた道を通学路として使っていた世界線もあったのかな」と思いを巡らせることができます。
相倉集落の端には地主神社があります。鳥居をくぐって集落のほうを振り返ると、鳥居の向こうに合掌造りの家々が見えるという日本中を探してもなかなかない光景が広がります! 感動必至です!
住民たちにとっては、この景色が日常
お土産屋さん
地主神社の鳥居を見つけてしまった。体が自然と吸い込まれる
神社のお堂。優しく光る明かりに誘われる
鳥居越しに見る合掌造りの集落
3. 下津井田之浦(漁村)/ 岡山県
瀬戸大橋の麓にある猫だらけの漁師町
この町には猫が多い。至る所で出会う
四国と本州を結ぶ超巨大な瀬戸大橋。この橋の麓にある漁師町を散策しました。集落にはたくさんの人慣れした猫がおり、カメラを持って路地を撮影していると、いつの間にか何匹もの猫に囲まれて身動きが取れなくなってしまうほどです。
下津井田之浦にはクルマが通れない細い路地が迷路のように張り巡らされています。吸い込まれるように細い路地へと歩みを進めると、角を曲がるたびに、足元に猫が駆け寄ってきます。視線を上げると、「おぉ」と感嘆の声が漏れるほどの石の階段や分岐が道の奥までずっと続いています。限りある敷地の中に家がびっしりと建ち並ぶ様は、建築基準が厳しくなった現在では、もう再現ができないだろうと思うと貴重な風景に見えてきます。住人よりも猫のほうが多くすむ下津井田之浦は、かつて多くの漁師町に見られた、日本らしい景観をそのまま残し、今に伝えています。「そうそう、こんな風景に出会いたかったんだよ」と思われる方も多いはずです。
暗がりの細路地を歩く。こういった路地が縦横無尽に走っている
階段を上り、街を見下ろした
細路地。堪らない
4. 油谷川尻(ゆやかわしり)(漁村)/ 山口県
全国随一の美しい細路地密集地
ザ・日本の町並みという風景
山陰地方では、寒さに強く耐久性に優れた石州瓦(せきしゅうがわら)がよく使われています。瓦は釉薬(ゆうやく)を使うため赤茶色になり、赤茶色の瓦屋根を見るとすぐに山陰の町だとわかるほどです。
私は瓦の中では石州瓦の色合いが一番好きで、そんな色合いに包まれた自転車が通れないほど狭い路地や階段で形成された町を歩くと幸せな気持ちになります。長門市にある油谷川尻地区は、川尻郵便局から半径200m程の中に町がまとまっていて、その範囲の中に、最高の路地が全国一のレベルで密集しています。
個人的には、油谷川尻の景色が日本で一番好きです。手を伸ばせば触れられるくらい近くまで迫った瓦、雑草、海の香り、青空。これらの要素がすべてそろった路地を見て、「好き」と感じてもらえれば、これ以上言葉で説明しなくても十二分に良さが伝わるのではないでしょうか。それくらい圧倒的日本を感じる集落です。住んだことはないけれど、住んでいる姿がイメージでき、ただ歩くだけで心が満たされるようでした。
高いところに上って街を見渡す。橙(だいだい)が目立つ
日本すぎて目に入りきらない
この先がどうなっているのかわくわくする
川にいくつもの橋がかかる
お寺脇の階段から
5. 川内高城(せんだいたき)温泉(温泉街)/ 鹿児島県
提灯がお洒落な川内のひなび温泉街
ひなびた温泉好きにはたまらない町並み
鹿児島県にある川内高城温泉は、ひなびた温泉好きの人たちに人気の温泉街です。日帰り入浴できる極上のひなびた公衆浴場もあるので、町歩きと温泉が楽しめます。無料駐車場から歩くとほどなくして、一目見てときめいてしまう町並みが目に飛び込んできました。桃色の提灯がいいアクセントになっており、歴史を感じる木造旅館等が並んでいます。
大正ロマンを思わせる木造建築は、その時代の人々の暮らしぶりが浮かんでくる気がして、タイムスリップしたような心地になります。私は町歩きが趣味ですが、かなりの方向音痴で、迷路のような町だとすぐに迷ってしまいます。しかし、川内高城温泉街は基本的には一本道沿いに宿や商店が並んでいるので、方向音痴の方々にも優しい町です(笑)。
メイン通りの一本道沿いに宿や商店が並ぶ
熊野神社から町を見渡せる
中央の建物、双葉屋で日帰り入浴可能
ソロドライブは山へ行きがち。山の景色の魅力とは
ドライブに行くなら山派ですか? それとも海派ですか? 私は山一択です! 山々に囲まれた昔からの雰囲気を今に伝える温泉街や秘境駅など、緑に囲まれた景色がお気に入りです。入道雲、蝉の声など……映画や小説の舞台のような、イメージの中の「思い出の田舎町」を探しにドライブするのです。
海辺にぽつんと残る岩場に建てられた小さな社(やしろ)や、木造家屋が密集した石段だらけの漁師町を歩くのも楽しいです。考えてみると海側にも好きな場所、風景はたくさんありますね。あれ、どっちも、魅力的じゃないか‼ こんなにたくさん素敵な場所があるのだから、日本国内を回るだけでも時間が全然足りないのです……。他にも城下町や農村集落など、日本には歩きがいのある町がたくさんあるので、皆さんもぜひ、お休みの日に歩きに行かれてはどうでしょうか?
旅のアルバム ~田舎町の風景編~
海辺の鳥居(神奈川県小磯の鼻)
山あいにある沈下橋(高知県長屋の沈下橋)
山村(徳島県落合集落)
迷路のような町並み(広島県尾道市)
レトロな町並を訪ねてタイムスリップ
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