【2025年版】一本桜ドライブ絶景5選|東日本の名桜を巡る春旅

須藤英一

桜の開花予想が聞かれる頃になると、桜を眺めるドライブに出かけたくなります。そこで、クルマで訪ねることができる一本桜を、当サイト連載「日本の絶景ドライブルート」に寄稿する写真家の須藤英一さんに推薦していただきました。長い風雪に耐え、すっくと立つ一本桜に会いにハンドルを握ってみませんか?

目次

小岩井農場の一本桜(岩手県雫石町)

小岩井農場の一本桜

小岩井農場は、岩手県岩手郡岩手町にある日本最大級の民間総合農場で、1891年に創業した。農場内には広大な牧草地や森が広がり、酪農や畜産はもちろん、牛乳や乳製品を中心とした農産物の生産・販売も行われている。観光施設としても人気があり、四季折々の美しい風景を楽しむことができ、また動物とのふれあいや季節のイベントが楽しめる「まきば園」があり、乗馬などさまざまなアクティビティが楽しめる。

こんな小岩井農場の広大な牧草地に一本桜が立っている。岩手山を背景に美しくそびえる桜は樹齢約100年ともいわれるエドヒガンザクラで、例年4月下旬から5月上旬にかけて見頃を迎える。

放牧される牛たちを日差しから守るために植えられたものだが、現在では農場の象徴的な存在として開花時期には多くの人が訪れる。岩手山の雄大な姿と牧草地の緑、そして淡いピンク色の桜のコントラストが見せてくれる景観は一枚の絵のようである。

三春滝桜(福島県三春町)

三春滝桜

福島県には多くの有名な桜の木がある。寒暖差が大きいため、花が美しく色づく環境が整っているという気候的な要因もあるが、中程度の山や丘陵地帯が多いことも桜の生育に適しているのではないかと言われている。そしてもう一つは、樹齢1000年を誇る「三春の滝桜」の子孫が全県下に増えたのも要因らしい。「うちの庭にも植えたい」と三春町の周囲に滝桜の子孫が増えていったらしく、300本以上の滝桜の子孫があると言われている。

三春滝桜

福島県田村郡三春町にある三春滝桜は、山梨県の山高神代桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜とともに日本三大桜の一つで国の天然記念物に指定されている。エドヒガン系紅枝垂桜で高さ約13m、幹周り約11mで、満開時には四方に伸びた枝から薄紅色の小さな花を無数に咲かせる。その様は流れ落ちる滝のように見えることから「滝桜」と呼ばれるようになったといわれている。見頃は例年4月上旬から中旬頃で、夜にはライトアップも行われる。

臥竜桜(岐阜県高山市)

岐阜県高山市の臥竜桜

臥竜桜(がりゅうざくら)は、岐阜県高山市一之宮町の飛騨一宮水無神社境内にある、樹齢約1100年のエドヒガンザクラで、1973年に国の天然記念物に指定された。昔は「大幢寺(だいどうじ)の大桜」と呼ばれていたが、龍が体をくねらせるように大枝が横に伸びた樹形を見て、大幢寺第20世の亀山道仙和尚により1931年に臥龍桜と名付けられた。現在、臥龍桜周辺は整備されて臥龍公園となっている。


樹種はエドヒガンザクラで、幹周り7.3m、枝張りは東西20m、南北30mあり高さは約20mとなっている。開花は例年4月中旬~下旬で、最盛期には幻想的な風景が広がる。近年、台風の被害などで樹勢が衰え、維持するために支柱が設置されたり、土壌改良が行われたりして地元の人々の手で大切に保護されている。また周辺には、飛騨国の一宮である水無神社や、歴史的な町並みが残る飛騨高山や飛騨古川など観光名所も多い。

駒つなぎの桜(長野県阿智村)

長野県阿智村の駒つなぎの桜

長野県下伊那郡の西部にある阿智村は星空の村として知られている。環境省が実施する全国星空継続観察(スターウォッチングネットワーク)において、星の観察に適した場所、第1位に選ばれたことから、日本一星空が奇麗な場所といわれるようになった。こんな阿智村に咲く一本桜が「駒つなぎの桜」と呼ばれる桜である。場所を大まかにいうと中央道恵那山トンネルの近くになる。

長野県阿智村の駒つなぎの桜

駒つなぎの桜は源義経が奥州に下る際、馬をつないだといわれている。樹齢約400年から500年のエドヒガンの古木で、旧東山道沿いの水田脇に植えられている。見頃は4月中旬から4月下旬ごろで、大きな扇を広げたような姿が見られる。周囲を山に囲まれた棚田の奥に立っていて、水を張った棚田に映り込む姿も楽しめる。夜にはライトアップされ、幻想的な桜を見ることができる。棚田の中にあるがゆえに桜の近くには駐車スペースが無いので、少し離れた駐車場から15分ほど歩くことになる。

わに塚のサクラ(山梨県韮崎市)

山梨県韮崎市のわに塚のサクラ

四方を山々に囲まれた自然豊かで、甲斐武田家発祥の地でもある山梨県韮崎市。ここに咲く「わに塚のサクラ」は樹齢約330年、樹高17メートル、幹周り3.6メートルのエドヒガンザクラである。韮崎市のシンボルとも言えるような1本桜で、水田地帯の中にポツンと立っている。名前の由来は、日本武尊の王子である武田王の墓という伝説から「王仁塚」とする説や、塚の形が鰐口に似ているので「鰐塚」とする説などがある。

山梨県韮崎市のわに塚のサクラ

のどかな田園の中の塚の上にあり、周りに遮るものがないため、晴れた日には富士山や八ヶ岳が一緒に見られる。そして、朝日が差し掛かる早朝や夕日が当たった桜は特に色鮮やかになり、魅力的な姿を見せてくれる。見頃は3月下旬から4月上旬で、満開の頃にはライトアップが行われ、昼とは一味違った幻想的な姿も楽しめる。テレビドラマをはじめ数多くのメディアにも起用されたため、全国的に知られるようになった。

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西日本の一本桜のイメージ

歴史が息づく名桜から、秘境に佇む千年桜まで——西日本の厳選一本桜5本をご紹介

須藤英一

1956年東京生まれ。アバコ撮影スタジオを経て1981年フリーカメラマンに。1985年から雑誌『アウトライダー』でツーリング写真の撮影を開始。以来、日本の道や風景をテーマにした写真を撮り続けている。『秋冬色の風景ドライブ―絶景の道を求めて』(2009年/JAF出版社)、『新・日本百名道』(2014年/大泉書店)など著書多数。 日本の絶景・Japan Beautiful Landscape

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