地域でこんなに違うのか! 個性豊かなご当地おでん種大特集
文=白鳥紀久子

かに面、マフラー、すじ鉾…地域でこんなに違う! 個性豊かなご当地おでん種15選

全国のご当地おでん種カタログ

全国のJAF会員によるアンケートで教えていただいた、ご当地ならではのおでん種を一挙大特集! 東京「ちくわぶ」、静岡県「黒はんぺん」、富山県「かに面」など、他の地域では聞きなれないおでん種のほか、ご当地種の誕生の歴史や地域ならではの食べ方をご紹介します。

いつものおでんに「ちょいかけ」するだけでご当地の味が楽しめる!「ご当地ちょいかけ調味料5選」はこちらから!

※2025年1月現在の情報です。内容は変更になる可能性があります。

見た目も味も個性的! ご当地おでん種15選

北海道/さつま揚げなのになぜ「マフラー」?

堀川「マフラー」

堀川「マフラー」 5枚入 481円
堀川「マフラー」ウェブサイト

北海道のご当地おでん種と言えば「マフラー」です。横長の見た目から防寒着のマフラーを連想させるため、その名が付いたそう。魚のすり身に玉ねぎがたっぷり加わった、甘じょっぱい風味のさつま揚げです。

元々は小樽から稚内にかけての日本海側で地元の蒲鉾(かまぼこ)屋さんが作って販売していたんだとか。それを新潟県の蒲鉾メーカー堀川が引き継ぎ、北海道工場でのみ製造を始めたのが17年ほど前のこと。それから道内のスーパーで広く販売するようになったそうです。北海道の人でも「マフラー」のことを知らない人が意外と多いのは、始まりが地域限定商品だったからなんですね。

  • 「四角いさつま揚げのマフラー。食べ応えがあっておいしい」(北海道・60代)

青森県/串に刺して味噌だれで食べる「大角天」

丸髙 髙橋蒲鉾店「大角天」

丸髙 髙橋蒲鉾店「大角天」 55g 3枚入350円(参考価格)
丸髙 髙橋蒲鉾店ウェブサイト  

「大角天」は、青森でしか見かけない、さつま揚げを薄くしたような練り物。津軽地方ではさつま揚げを天ぷらと呼んでいたことから、大きく、四角く揚げた天ぷらということで「大角天」と名づけられたんだとか。極薄に仕上げる製造技術が特殊なため、県外には広がりにくかったんですね。

丸髙 髙橋蒲鉾店は、昭和27年創業の老舗蒲鉾店。3枚入りの大角天のほかに、5枚入りの真空パックもあり、お土産用にはこちらがおすすめです。

  • 「大角天です。薩摩揚げを薄く、大きく、四角く仕上げたものすごく薄い蒲鉾」(青森県・60代)

大角天はなぜできた?

大角天

戦後、冬に青函連絡船で行き交う人々の体を温めるために地元のおでん屋さんが生姜をすり込んだ味噌をおでんにかけて振る舞い、青森市内で広まった生姜味噌おでん。その際、ある屋台のおでん屋さんから早く煮えるように、などの理由から「薄い天ぷらにしてほしい」と依頼されたことが「大角天」誕生のきっかけだったとか。「大角天」は煮込んでも膨らまず、出汁も出るため、おでん以外にも煮物や炒め物などにも重宝されているそうです。

宮城県/震災後に誕生した大ヒット商品「牛タン入りつくね」

ヤマサコウショウ「牛タン入りつくね」

ヤマサコウショウ「牛タン入りつくね」 20本入 1,620円
ヤマサコウショウウェブサイト

2011年の東日本大震災後に誕生し、おでん種として人気になったのがヤマサコショウの「牛タン入りつくね」です。

ヤマサコウショウは宮城県石巻市の水産と畜産の製造加工会社。震災前はさつま揚げを製造していましたが、震災により工場製造が難しい状況に。そこで畜産のノウハウを生かして誕生したのが、国産の地鶏をベースに宮城県の名物である牛たんを使った贅沢な「牛タン入りつくね」です。加熱済みなのでそのままおでんに加えるだけで、牛たんと鶏肉の旨みが出汁に溶け出し、いつものおでんがワンランク上の味に早変わり!

  • 「牛タンつくね。おでんタネに良いですよ、普通に食べてもうまいけど」(青森県・50代)

東京都/関東以外は知らない人が多い「ちくわぶ」

川口屋「ちくわぶ」スタンダード1本120円

川口屋「ちくわぶ」 ※価格は川口屋ウェブサイト参照
川口屋ウェブサイト

ちくわぶは関東地域限定のおでん種。ちくわぶの歴史は古く、明治以前から食べられていたという説も。ちくわのような見た目ですが、小麦粉が原材料ですいとんや極太うどんのようなモチモチとした食感です。煮込むほど出汁を吸ってふやけて、ジューシーになります。

川口屋は、昭和7(1932)年に東京都赤羽で創業したちくわぶの専門店です。グルテンを添加せずに職人の技術のみで練り上げたちくわぶは、いくら煮ても煮崩れないと評判です。

  • 「ちくわぶは物心ついた頃からありましたが、全国的ではないようですね。モチモチした食感が好きで、家では子供たちと取り合いになります」(東京都・30代)

神奈川県/独特な食感にハマりそう!「すじ鉾(ぼこ)」

鈴廣かまぼこ「すじ鉾」 1本378円

鈴廣かまぼこ「すじ鉾」1本378円
鈴廣かまぼこウェブサイト

おでん種で「すじ」と言えば「牛すじ」が一般的ですが、千葉や神奈川など海が近い関東地域では、魚のすじや軟骨で作った蒸し蒲鉾を「すじ」と呼びます。通常のかまぼこを作るときは、すり身の食感をなめらかにするためにすじを取り除きますが、あえてすじを使うことで独特の食感に。

小田原の老舗蒲鉾店鈴廣の「すじ鉾」は、魚の身だけでなくすじや皮、軟骨も全部一緒にすり身にしています。魚の持ち味を丸ごと味わえるのが醍醐味で、旨みだけじゃなく、若干感じる魚の渋みや苦みが絶妙です。軟骨のコリコリした食感、すじのモチモチした弾力は一度食べるとハマること間違いなし。

  • 「すじかまぼこ(白身魚のすり身にサメの軟骨を加え棒状にしたもの)」(千葉県・50代)

静岡県/半月型で黒っぽい「黒はんぺん」

丸又「いわしはんぺん(黒はんぺん)」

丸又「いわしはんぺん(黒はんぺん)」 竹皮包み10枚入 700円
丸又ウェブサイト

静岡県のおでんを作るときに忘れちゃならないのが、黒はんぺん。はんぺんと言えば、白身魚のすり身を使ったふわふわした白はんぺんが全国的ですが、黒はんぺんは静岡近海で獲れるいわしやさばなどの青魚を使っているので黒っぽいのが特徴です。名前の由来の一つでもある半月型は、黒はんぺんの定番で白はんぺんよりもしっかりとした食感です。

黒はんぺん発祥の地として知られる焼津市で、創業79年の丸又の看板商品が「いわしはんぺん(黒はんぺん)」。焼津の小川港で水揚げされた真いわしが主原料で、骨ごとミンチにしているので、いわしの栄養と旨みを丸ごといただける優れものです。

愛知県/味噌煮込みおでんに欠かせない「赤棒」

ヤマサちくわ「赤棒」3本入

ヤマサちくわ「赤棒」 3本入 292円
ヤマサちくわウェブサイト

愛知県の味噌煮込みおでんに欠かせないのが「赤棒」。ピンク色の棒状のさつま揚げで、名古屋市や豊橋市などのいろいろなメーカーが販売しています。茶色一色になりがちな味噌煮込みおでんの貴重な赤みとして重宝されていて、味噌で煮込むと赤みが濃くなります。

ヤマサちくわは南に太平洋、西に三河湾を望む愛知県豊橋市で開業し、2027年で創業200年を迎える老舗ちくわ店。ヤマサちくわの「赤棒」は、冬限定販売で名古屋市周辺でしか販売していないレアな商品なので、見かけたら即買いしたい! 

  • 「あかぼう。この地方だけの物だとは知らなかった」(愛知県・50代)

滋賀県/辛そうに見えるけど辛くない「八幡赤こんにゃく」

乃利松食品 吉井商店「八幡赤こんにゃく」195円

乃利松食品 吉井商店「八幡赤こんにゃく」 195円
乃利松食品 吉井商店ウェブサイト

滋賀県ではこんにゃくは赤、が常識なのだそう。小中学校の給食のメニューとしてお馴染みで黒っぽいこんにゃくを見たことがない子供も。赤こんにゃくが赤いのは、三二酸化鉄という鉄分を混ぜ込んでいるため。鉄分が豊富でもっちりとした独特の食感が持ち味です。

明治24(1891)年創業の乃利松は、近江八幡市に店を構え、古い歴史と経験をもとに独自の製法で「八幡赤こんにゃく」を製造販売しています。赤いけれど辛みはまったくなく、きめ細かくやわらかい食感でこんにゃく特有のにおいもありません。おでんや煮物以外にも、田楽や刺し身にしてもおいしいこんにゃくです。

  • 「赤こんにゃく。普通のこんにゃくよりぷりぷりしてる」(滋賀県・50代)

赤こんにゃくはなぜできた?

赤こんにゃくイメージ

こんにゃくが赤い理由は、華やかなものを好んだ織田信長が関係している、など諸説あります。そのひとつに、近江八幡に春の訪れを告げるお祭り・左義長祭で信長が赤の長襦袢をまとって踊り狂ったことにあやかり、こんにゃくを赤く染めたとか。しかし、由来や起源を示す史料はなく、赤い理由はわからないままだとか。(撮影/近江八幡左義長保存会理事・條野健二さん)

鳥取県/やわらかくてやさしい味わい「豆腐ちくわ」

ちむら「豆腐ちくわ・蒸し」 1本292円 ちむらウェブサイト

ちむら「豆腐ちくわ・蒸し」 1本292円
ちむらウェブサイト

「とうふちくわ」は鳥取県特有のおでん種。木綿豆腐と魚のすり身を混ぜて蒸し上げた、やさしい味わいの蒸しちくわで、誕生は江戸時代にさかのぼります。当時は魚が贅沢品だったために質素倹約が推奨され、ちくわもすり身100%でなく、豆腐をつなぎに混ぜて作るようになったことが始まりだったとか。

慶応元(1865)年創業のちむらは、江戸時代から豆腐7、魚のすり身3の割合を守る老舗。倹約がいつしかおいしさの追求に発展し、使う魚も吟味するなどして豆腐のうまみを最大限に生かした「とうふちくわ」として愛されるように。おでんに加える前にまずはそのまま食べてみるとその味の真価がわかります。

  • 「豆腐ちくわはおでんの出汁にすごく合います。豆腐ちくわは木綿豆腐と日本海の鮮魚を材料にしているので優しい味で柔らかく、出汁を吸っておいしいです!」(鳥取県・40代)

福井県/福井県は油揚げの消費量日本一!「谷口屋の、おあげ」

谷口屋「谷口屋の、おあげ」1枚699円

谷口屋「谷口屋の、おあげ」 1枚699円
谷口屋ウェブサイト

福井県は、油揚げの消費量が日本一。しかも福井県で油揚げといえば分厚くて重みのある厚揚げを指します。福井県は浄土真宗の信仰が厚い地で、親鸞聖人の教えを請いながら精進料理を食べる習わしがありました。油揚げはお膳のメインとなるもので、より豪勢に見えるように福井の油揚げは大きく分厚く進化したようです。

福井県坂井市の谷口屋は大正14(1925)年に創業。厚さ3㎝で一辺14㎝という大きな油揚げが看板商品です。全国のスーパーなどで取り扱われているので見たことがある人も多いでしょう。北海道産菜種油で時間かけて揚げているので、外側はカリッと中はふんわり。おでんに加えると、汁をいっぱい含んでおいしいですよ。

富山県/金沢おでんのカニ面を家庭用にアレンジ「かに面」

富山県/梅かま「かに面」 5個入 3,024円

富山県/梅かま「かに面」 5個入 3,024円
梅かまウェブサイト

メスのズワイガニ(香箱ガニ)が有名な石川県では、カニの甲羅にカニの身やカニ味噌、内子や外子をのせた高級おでん種「カニ面」がおなじみ。こちらは家庭用ではなく、料亭や小料理屋さんでいただく特別なおでん種です。香箱ガニの漁の解禁は11月から12月。高値で取引されるので、おでん種になるのはほんの一部だけです。

このカニ面を家庭でも楽しめるように、富山の老舗蒲鉾店が作ったのがかまぼこの「かに面」です。ベニズワイガニの甲羅に、すけそうたらのすりみ、いかのすりみ、べにズワイガニの身、春雨などをつめたおでん種。25年前からあるロングセラー商品です。

  • 「金沢なのでかに面。11月から12月いっぱいまでしか食べられない希少価値の高いタネ。1シーズンに1回は食べておきたい」(石川県・60代)

岡山県/おでんにカステラ⁉「鮮魚カステラ」

中光商店「鮮魚カステラ」

中光商店「鮮魚カステラ」485円
中光商店ウェブサイト

岡山県のおでんには、卵と魚のすり身で作った「鮮魚カステラ」が欠かせません。甘くて卵の香りが口いっぱいに広がり、食感ははんぺんや玉子焼きのようにふんわりやわらかです。

中光商店は、瀬戸内海に面した牛窓に店を構える創業73年の創作蒲鉾店。こちらの「鮮カステラ」は平地飼いで育てた鶏の卵(アルムの卵)を使用し、職人たちがひとつひとつ手作りしています。

愛媛県/魚の栄養を丸ごと味わえる「じゃこ天ぷら」

愛媛県/八水蒲鉾「じゃこ天ぷら」 3枚入 159円

愛媛県/八水蒲鉾「じゃこ天ぷら」 3枚入 159円
八水蒲鉾ウェブサイト

愛媛県の海側の地域では、昔から魚の加工品作りが盛んでその代表的なものが「じゃこ天」です。魚のすり身の揚げ物を天ぷらと呼んでいたことと、底引き網でとれたいろいろな種類の魚(雑魚)で作られていたため、「ざこ天」が「じゃこ天」になったんだとか。

八水蒲鉾は昭和32(1957)年に愛媛県八幡浜市で創業。八幡浜港に水揚げされた新鮮なアジや太刀魚の身だけでなく皮や骨もすりつぶして揚げているので、飴色に近い香ばしい色合いが特徴です。おでんに加えると魚の旨みが溶け出して、さらにコク深い味わいに。

  • 「じゃこ天。カルシウムたっぷりです」(愛媛県・70代)

福岡県/発祥は博多。大人も子ども大好きな「餃子巻」

福岡県/平和蒲鉾「餃子巻」1個150円

平和蒲鉾「餃子巻」 1個 150円
平和蒲鉾インスタグラム

餃子巻とは餃子に魚のすり身を巻き付けて揚げたおでん種で、福岡のご当地おでん種として有名です。おでん屋のメニューとしてだけでなく、家庭のおでんにも欠かせない具材なんですよ。

福岡県博多の吉塚商店街にある平和蒲鉾店は、その場で揚げたての練り物(天ぷら)が購入できる店。60年前の創業時から餃子巻を作っていて、餃子巻の発祥の店と言われています。こちらの餃子巻は九州産黒豚を使った黒豚餃子が1個入っています。そのままマヨネーズ&七味を添えると最高の酒の肴に!

  • 「魚のすり身で包んだ餃子巻き。魚のすり身で包まれてるので、餃子が壊れることなくおでんのおいしいスープを吸ってさらにおいしくなります!」(福岡県・30代・女性)

沖縄県/じっくり煮込んでコラーゲンたっぷり「おでん種 てびち」

ホクガン「おでん種 てびち」

ホクガン「おでん種 てびち」5個入 2,000円(希望小売価格)
ホクガンウェブサイト

沖縄では季節を問わず一年中食べられているおでん。通常のおでんのように大根、こんにゃく、卵などのほかにてびち(豚足)を具材にしているのが特徴的です。豚の足を骨ごとじっくりやわらかくなるまで煮込んだてびちは、プリッとした口当たりでコラーゲンたっぷり。

1967年創業のホクガンは沖縄のアンマー(お母さん)の味を数多く扱う食品加工会社。こちらの「おでん種 てびち」は下茹で済みで味もついているので、そのままおでん鍋に加えて温めるだけで食べられます。いつものおでんにてびちのコクが加わりさらにおいしくなりますよ。

  • 「沖縄県のおでんの豚足(てびち)がトロトロでコラーゲンたっぷりではまります!」(茨城県・50代)

おでんという料理ひとつでも、その地に暮らしてみないとわからないご当地おでん種がいっぱい! ドライブでご当地の食材店を巡るのも楽しいですが、大きめのスーパーやデパートで取り扱っている商品もあるので、見かけたらぜひ買ってみてください。いつものおでんに加えるだけでもひと味もふた味も違った味が楽しめます。

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