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この秋見たい! 絶景紅葉スポット…写真家・須藤英一氏が厳選! 【前編】

日本の美しい風景を求め、全国各地の道を走り尽くし撮影してきた写真家・須藤英一氏セレクト10選

須藤英一
2022.10.01
2022.10.01

天高く馬肥ゆる秋。ドライブやレジャーにも最適な時期がやってきました。四季のある日本だからこそ出会える風景を見に行きませんか? 今回の特集では、写真家として日本の隅々まで走り、見てきた須藤英一さんに「絶景紅葉スポット」を紹介していただきました。 【前編】としてご紹介するのは、北海道から関東エリアにある5スポット。

【北海道】三国(みくに)峠

黄金色の原生林が真っ赤に染まるその瞬間

朝日を浴びて真っ赤に染まる北海道の原生林

早朝の三国峠は、朝日を浴びて真っ赤に染まる。(撮影=10月上旬早朝)

北海道の真ん中にある大雪山国立公園。ここを南北に走る国道273号を層雲峡から帯広へと向かうと、その途中に道内の国道で最高所となる標高1,139mの三国峠がある。旧地名で石狩、十勝、北見の境界に位置することから「三国」の名がついたとされている。

北海道の紅葉は「大雪山系から始まる」といわれ、9月下旬から木々が黄色くなり始める。この三国峠から眺められる見渡す限りの原生林も、10月の上旬には紅葉のピークを迎え、あたり一面が黄金色に染まる。原生林の中には真っ赤な松見大橋があり、黄金色の紅葉との色彩のコントラストが美しいだけでなく、北海道ならではの壮大な景色が楽しめる。早朝は朝日が当たり、原生林の紅葉は真っ赤に見える。交通量も少ないので、静かな朝の空気の中で鳥の鳴き声だけが響き渡る、なんとも幻想的な情景に浸ることができる。

ココがイチオシ!

峠にはパーキングがあるので、ここに車を停(と)めると、紅葉した大海原のような樹海が目の前に広がる感動を味わえる。また、少し下った十勝三股では、国道沿いに白樺(しらかば)の美しい林が続き、走りながら紅葉した白樺を楽しめる。

【青森県】奥入瀬(おいらせ)渓流

渓流と紅葉が織りなす美のコラボレーション

美しい渓流と紅葉

散策路を歩くと、紅葉と渓流の美しさに感動する。(撮影=10月下旬午後)

青森、秋田の両県にまたがる十和田湖の子ノ口(ねのくち)から焼山(やけやま)まで、約14kmを流れる奥入瀬渓流。十和田八幡平(はちまんたい)国立公園を代表する景勝地のひとつで、渓流に沿ってブナやカエデなどの原生林が続き、その中を国道102号が走っている。途中には、銚子大滝のほか雲井の滝や阿修羅の流れなど、滝や清流、岩の見どころが数多く存在。水の流れと奇岩が織りなす美しい景色は、特別名勝や天然記念物として国の指定を受けている。

ここを走ると、道を包むように紅葉のトンネルが続き、訪れる人たちに感動を与えてくれる。さらに、日が差すと周りが黄色や赤でキラキラと輝き、自然と一体になる感覚を味わえる。ところどころに狭い道もあるが、渓流に沿っているため、ドライブしながらも十分に紅葉を満喫することができる。この国道102号は、南へ走れば十和田湖に出るが、この場所も奥入瀬と同じ頃に紅葉のピークを迎える。

ココがイチオシ!

渓流沿いには車道と遊歩道が整備されているので、車で走って紅葉を楽しんだら、今度は車を降りて、渓流を散策するのがおすすめ。間近で見る清流と紅葉のコラボは、紅葉の色だけでなく水の音や匂い、気温などを肌で感じることができる。

【秋田県】小安(おやす)峡

水彩画のようなどこまでも続く色とりどりの紅葉

赤・黄・緑の色とりどりの紅葉

栗駒山方面から小安峡へ向かうと、奥小安峡の紅葉を展望できる。(撮影=10月下旬午前)

東北地方のほぼ中央にある栗駒山は、岩手、宮城、秋田三県にまたがる紅葉の名所。中でも南麓にある、いわかがみ平がよく知られているが、車で行くなら一関から栗駒山へ向かう国道342号や、栗原市から向かう国道398号が紅葉ドライブとしておすすめ。湯沢から向かう国道398号も小安峡から先で紅葉が広がる。

小安峡は、皆瀬川の急流が長年にわたり深く浸食してできた渓谷で、温泉と紅葉の名所として知られている。熱湯と蒸気が激しく噴出している「大噴湯(だいふんとう)」も見どころのひとつ。この小安峡から国道398号で栗駒山へ向かうと、少しずつ標高が上がり視界が開けてくる。奥小安峡を越えたあたりでは、周辺の山々に広がる見事な紅葉が。山肌一面が赤やオレンジに染まり、まさに絶景。そのまま走れば花山峠を越えて宮城県に入るが、まだまだ紅葉が続いている。

ココがイチオシ!

標高の高いところから見下ろす紅葉もいいが、小安峡ではV字型渓谷に遊歩道が整備されているので、ゆっくりと散策するのがおすすめ。大地の息吹を感じさせるように、轟音(ごうおん)とともに白い湯煙を上げる「大噴湯」は圧巻。

【長野県~群馬県】志賀草津道路

さまざまな風景とさまざまな紅葉に出会える道

朝日を浴びてキラキラと輝く紅葉

草津温泉側から日が昇り、高原全体が赤く色づく。(撮影=10月上旬早朝)

群馬県の草津温泉から長野県の志賀高原を経て、渋・湯田中温泉郷へと至る国道292号は、志賀草津道路と呼ばれていて、標高2,000mを超える山々の間を縫うように走っている。スカイラインと呼ぶにふさわしく、次々に変化する周囲の景観は、訪れる人を飽きさせない。長野県側は渋・湯田中温泉郷側から入るが、志賀高原を中心に、点在する湖沼やナナカマド、ダケカンバなどの森、高原のカラマツなどの紅葉が楽しめる。また標高が上がると、周辺に見える志賀山、横手山、笠ヶ岳、焼額(やけびたい)山といった山々の紅葉も眺められる。

群馬県側は草津温泉から走っていくことになるが、高原風景の中に紅葉を感じられる。ところどころにあるパーキングに車を停めて見下ろすと、紅葉の向こうに草津温泉の湯煙が立ちのぼる。また、スキー場の近くにある「武具脱(ものぬぐ)の池」の周りは湿原になっているが、木道が整備されているので、紅葉を楽しむ散策ができる。そこからさらに車で走り、標高が上がると周りの景色は一変し、白根山の荒涼とした風景が広がる。

ココがイチオシ!

志賀高原には、木戸池から田ノ原湿原、三角池、長池と散策ルートがある。案内板に従って田ノ原湿原の小さな木道を歩いていくと、白樺に囲まれた紅葉が眺められ、一味違った秋の景色を堪能できる。

【山梨県】湖北ビューライン

日本の象徴ともいうべき趣ある紅葉の風景

富士山と紅葉

富士山と紅葉という日本的な眺め。(撮影=11月中旬午前)

世界遺産になった富士山のふもとにある河口湖は富士五湖と呼ばれる湖のひとつ。この河口湖の北岸を走る県道21号は「湖北ビューライン」の愛称があり、湖越しに富士山を眺められるレイクサイドドライブコースとなっている。河口湖大橋を南から渡って左へ曲がると、湖北ビューラインの始まり。ここから西湖へと続くルートは、湖畔に沿って走るため、富士山を望むスポットがたくさんあり、紅葉が重なると「富士山と紅葉」が同時に眺められる。この「富士山と紅葉」という構図は、写真撮影のポイントとしても有名なので、全国から多くの観光客が訪れる。

河口湖の湖畔では、紅葉シーズンにあわせていろいろなイベントが行われているが、なかでも、約60本の巨木もみじが並ぶ「もみじ回廊」は、ライトアップによって幻想的な景色が広がり、素晴らしい。しばらく走って河口湖を過ぎると、トンネルを抜け西湖に出るが、西湖から見る富士山は、河口湖からの見え方とまったく違って、これもまた一興。

ココがイチオシ!

湖北ビューラインの途中には、紅葉したもみじの木々が道路に覆いかぶさり、トンネルのようになる「もみじトンネル」がある。車を停めて散策すると、真っ赤なもみじの向こうに富士山が見えるポイントも。

ドライブマップ

① 三国峠 北海道河東郡上士幌町 国道273号 通称 糠平(ぬかびら)国道
② 奥入瀬渓流 青森県十和田市 国道102号
③ 小安峡 秋田県湯沢市 国道398号
④ 志賀草津道路 長野県~群馬県 国道292号
⑤ 湖北ビューライン 山梨県南都留郡富士河口湖町 県道21号

【後編】は、東海・近畿から九州エリアにある紅葉スポットを5つ紹介します。

本内容は、須藤氏が撮影したときの情報を基に編集しています。スポットの名称や、ライトアップの時期などは変更となっている場合もあります。また、天候等の事情で紅葉の見頃は変動しますので、お出かけ前に最新の情報をご確認ください。

須藤英一氏と書籍『新・日本百名道』の写真

『新・日本百名道』(大泉書店)

すどう・えいいち 1956年東京生まれ。アバコ撮影スタジオを経て1981年フリーカメラマンに。1985年から雑誌『アウトライダー』でツーリング写真の撮影を開始。以来、日本の道や風景をテーマにした写真を撮り続けている。『秋冬色の風景ドライブ―絶景の道を求めて』(2009年/JAF出版社)、『新・日本百名道』(2013年/大泉書店)など著書多数。

日本の絶景・Japan Beautiful Landscape


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