おみやげ土産バナシ

山形の “家庭の味”。月山の恵みでごはんが何杯でもいけちゃう「ふきのとう味噌」

山形県 写真家・志鎌康平のおみやげ土産バナシ 4品目

2023.10.29

文=瀬谷薫子 / イラスト=山田将志

2023.10.29

文=瀬谷薫子 / イラスト=山田将志

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1年点検を受けると、だれにでもチャンス

山々に囲まれた山形県は山菜の宝庫。春になり雪解けの地面から顔を出す山菜には、地元の人も特別な思い入れがあるようです。今回はそんな山菜の名品「ふきのとう味噌」が土産もの。日本百名山のひとつ、山形・月山の風景に思いを馳せながらぜひご覧ください。

旅の目的のひとつ、お土産。この連載では日本各地のローカルプレイヤーに、ここに来たら持ち帰るべし、というおすすめのお土産を聞きます。
今回のレコメンダーは、山形県を拠点に活動し、写真スタジオ兼アトリエ「月日坊」を営む写真家の志鎌康平さん。生まれ育った山形で、農家さんはじめ食の生産者ともつながりが深い彼に、山形の土地柄や文化が伝わるユニークなお土産4品を教えていただきました。

今回のレコメンダー志鎌康平さん

しかま・こうへい 1982年山形市生まれ。東北芸術工科大学卒業。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て独立し、志鎌康平写真事務所【六】設立。人物から料理そして風景まで、日本中世界中を駆け回りながら撮影を行っている。移動写真館「カメラ小屋」、写真スタジオ兼日本各地の作家や食のイベントを行うアトリエ「月日坊」を運営。

4品目
長い冬が終わり、春が来た喜びを噛み締める「ふきのとう味噌」

月山のふきのとう味噌  90g(700円)

▲月山のふきのとう味噌 90g(700円)

「山菜が豊富に採れる山形で、特に採りやすいのがふきのとう。

山奥へ行かなくても、春の初めには低地や川沿いなどあちこちに顔を出すので、近所を散歩しながら摘んで、ふきのとう味噌を作るのが毎年この時期の楽しみです。

地元では、どの家でも作るだろう家庭の味。自分の家で作ったふきのとう味噌を近所にお裾分けしたりもします。ちょっと甘めだったり塩気が強かったり、家庭ごとに味付けに個性が出て、面白いんです。

この『月山(がっさん)のふきのとう味噌』は、『十三時』というカフェを営む友人が作るもの。山形の中央に横たわる出羽三山の主峰『月山』の麓でとれた食材で作る食品や雑貨を販売しています。

このふきのとう味噌は、味噌よりもふきのとうの量が多いそう。山菜が豊富に採れる月山だからこその贅沢な味ですね。実際に食べてみても、ふきのとうの存在感がしっかりあって、ほろ苦く、甘みがほんのりしておいしいです。

まずはやっぱり、温かいごはんにのせてどうぞ。これだけで何杯でもいけてしまいます。それからお酒のつまみにも。冷奴にのせたり、クリームチーズにのっけるのもおいしいです。日本酒、ワインによく合います。


ふきのとうって、春一番にとれる作物なんです。

山形は冬の積雪量が日本一と言われていて、冬の暮らしはとても過酷。長く住んでいてもやはり『今年も来たぞ』と構えるような季節なんですね。そんな冬が明けて、雪が解け始めた山々に最初に顔を出すのがふきのとう。

だから足元にふきのとうを見つけたときは、ああ、冬が終わったなって嬉しくなる。ちょっとした宝物を見つけたような気分になります。春が来た喜びを噛み締めながらいただく、おいしい旬の味。僕にとっても毎年の楽しみですし、山形の気候や文化を象徴するような特別な味。そんなエピソードも併せて、人に贈りたくなります」

十三時

https://13ji.base.shop/

自然と共にある山形の物語を、お土産にのせて

「山形って果物やお米がおいしい県だというイメージはすでにあると思うんですが、実際はもっと奥深い。

車でしか行けないような奥地に、この地ならではの伝承野菜が根付いていたり、おいしいお酒が作られていたり、ユニークなローカルフードがあったり。知る人ぞ知るおいしいものの宝庫ですし、自然豊かな土地だからこその豊富な作物に恵まれた県なんです。

緑豊かで、いつも暮らしが山とともにあることや、冬は2mを超える雪が積もり、毎朝の雪かきに1時間以上かかることも。そんな厳しくて美しい自然との暮らしも、山形ならではの魅力だと思っています。そういう個性を、お土産の背景にある物語として併せて伝えていけたらなと。

今回おすすめのお土産を考えてみて、華やかさとは対局にある土臭いものばかりが出てくるな、と我ながら思いましたが(笑)それもまた山形らしさ。質実剛健な旨いものがそろった県なんです」


雪解けの地面から顔を出すふきのとうや、山の麓の牧場で作られたジャージーヨーグルト。志鎌さんのお土産話を聞いていると、まだ見ぬ山形の自然風景が目に浮かび、まるでそこに足を運んだようにワクワクした気持ちになりました。お土産とは、その土地の匂いを連れてきてくれるものなのかもしれません。

豊かな自然に触れるのもいいですし、麺もの文化にふれてローカルフード巡りをするのもまた一興。お土産を目的のひとつに、ぜひ一度ドライブに出かけてみてはいかがでしょうか?

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