文=瀬谷薫子 / イラスト=山田将志

調味料王国・愛知が誇る“飲める”みりん 「三州三河みりん」

愛知県津島市「りんねしゃ」店主・大島幸枝のおみやげ土産バナシ 1品目

今回のレコメンダー・大島さん自身も普段から使っているという、本格みりん。愛知の食文化を下支えするその調味料は、もともとは貴族の飲みものだったそう。お料理好き、発酵文化好きに特におすすめな土産バナシです。 旅の目的のひとつ、お土産。この連載では日本各地のローカルプレイヤーに、ここに来たら持ち帰るべし、というおすすめのお土産を聞きます。 今回のレコメンダーは、愛知県津島市で自然食品店「りんねしゃ」を営む大島幸枝さん。生まれ育った愛知の食に精通し、味はもちろんものづくりに共感するものだけを仕入れる食の目利きでもある彼女に、愛知独自の食文化が伝わるお土産4品を紹介していただきました。

今回のレコメンダー大島幸枝さん

おおしま・さちえ 愛知県津島市で自然食のお店「りんねしゃ」、三重県多気町で薬草カフェ「本草研究所RINNE」を運営。除虫菊を使った化学成分不使用の防虫線香「菊花せんこう」の製造販売や、食のイベント企画、マーケット企画など、愛知を拠点に幅広く活動する。

1品目
愛知県の豊かな発酵文化で育まれた、生粋の本みりん

角谷文治郎商店「三州三河みりん」(700ml/1,122円)

▲角谷文治郎商店「三州三河みりん」(700ml/1,122円)

「愛知は発酵文化が盛んで、しょうゆや味噌の蔵元がたくさんあります。みりんの蔵元も多いんですが、中でも私が推したいのはこのみりん。まずはひと口舐めてみてください。きっとびっくりします、本当においしいから。甘みも香りも全然違うんです。昔、高貴な人はこれをお正月のお屠蘇(とそ)として飲んでいたんですって。本当に飲みたくなるくらいおいしいですよね。

原材料がもち米、米麹、本格焼酎だけとシンプルなので、コクのある甘みは米由来のもの。砂糖や醸造アルコールを使った“みりん風調味料”とは別物で、これは生粋の『本みりん』です。

『米一升、みりん一升(みりん一升を作るには米一升が必要) 』という言葉があるように、本みりんを造るにはお米をたくさん使います。その分、材料費もかさむそう。それでも伝統的な製法にこだわり造り続ける心意気も好きですし、破格すぎるくらい良心的なお値段。本当に頭が下がります。

わが家でも普段からいろんな料理に使っていて、特に煮物を作るときには必ず入れます。照りを出すために最後に入れるだけじゃなく、最初と最後に一回ずつ入れるのがいいんですよ。具材を煮込む前にみりんを入れると、糖の力で食材に味が染み込みやすくなって、格段においしく仕上がります。

なので、最初にチョロリと少し入れ、最後にひとまわし加えるのがおすすめ。これだけで本当においしくできるから、料理上手になったみたいな気分になれます。

子供が小さいときは、煮切ってアルコールを飛ばしたものをシロップとして常備して、ホットケーキやプリンにかけていました。米だけの自然な甘さだから、安心して日々のおやつにも使えます。
愛知の味といえば、味噌カツや手羽先にはじまり甘じょっぱいものが多いと思うんですが、そのベースにあるのもやっぱりみりん。どの家庭にもある、愛知の味を作っているものですね。

お土産として渡すなら、料理好きな人。あとは発酵食品好きや、お酒好きにも。だから、意外と男性にも喜ばれるんです。味噌やしょうゆのお土産はわりとあるけど、みりんってちょっと珍しいですしね。

今は県外でもちょっといいスーパーで買えるようになってきたので、出張先で見つけたときは『これ、愛知のみりんなんだよ』ってついすすめたくなってしまいます。
どこでも手に入りやすくなりましたが、やっぱり一度は蔵見学もかねて、本家へ足を運んでみてほしいですね。周囲にも調味料の蔵元がいろいろとあるので、一日調味料巡りツアーなんていかがでしょう?」

角谷文治郎商店

https://mikawamirin.jp/

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