旧新潟交通電車線のかぼちゃ電車車両
文・写真=一人旅研究会(栗原悠人)

レトロな廃線巡りへ。今も息づく「鄙(ひな)びた風景」と鉄道の記憶

北海道から島根まで。新緑に映えるレトロな廃駅5選

明治から昭和にかけて、物資や人々を運び、日本の風景の一部として網目状に広がった鉄道網。しかし、自動車の普及や人口減少という時代の波に押され、人々の夢や生活を運んだ鉄路は各地でひっそりとその役割を終えつつあります。
役目を終えたあとも、時が止まったかのように往時の姿をとどめる「廃駅」。そこには、かつて誰かが誰かを見送り出迎えた確かな記憶が刻まれています。今回は全国に点在する廃駅の中から、今もなお旅情を誘う、物語に満ちた5つの駅をご紹介します。

目次

ソロドライブをしたのは
栗原悠人さん(一人旅研究会)

愛車と栗原悠人氏

くりはら・ゆうと 旅情・郷愁探訪家。1995年生まれ。旅情と郷愁を求め、日本全国のひなび空間・退廃的空間・秘境・温泉などを巡る。撮影した写真や動画を一人旅研究会 ウェブサイトやX、YouTube等で紹介している。著書に『ノスタルジック写真集』(マール社)など。

1. 新潟県/旧新潟交通電車線 月潟(つきがた)駅…「かぼちゃ電車」が息づく、現役さながらの風景

旅に出たくなる

旅に出たくなる

青空とかぼちゃ電車

青空とかぼちゃ電車

木造の駅舎

木造の駅舎

旅に出たくなる

青空とかぼちゃ電車

木造の駅舎

旧新潟交通洗車線 月潟駅 /新潟県新潟市南区月潟2919

1999年に廃止された旧新潟交通電車線の月潟駅は、地域の足として愛された記憶を色濃くとどめています。保存会の手厚い維持活動により、駅舎や車両は現役さながらの美しさを保っています。
特に、2025年に塗り直された「かぼちゃ色」の車両は、青空とのコントラストが鮮やかで、見る者を一瞬で旅情へと誘うようでした。時折開催される走行会では体験乗車も行われており、鉄路が再び息を吹き返す瞬間を味わうことができます。

新潟県/旧新潟交通洗車線 月潟駅のマップ

2. 北海道/旧標津(しべつ)線 奥行臼(おくゆきうす)駅…40年近く道東に眠る、時の止まった停車場

ホーム上の電柱などは大きく傾いていた(現在は修復済み)

ホーム上の電柱などは大きく傾いていた(現在は修復済み)

廃線の向こうへ走る猫

廃線の向こうへ走る猫

駅前広場と駅舎

駅前広場と駅舎

時代を感じさせる駅務室

時代を感じる駅務室

駅務室に残された古いカレンダー

駅務室に残された古いカレンダー

ホーム上の電柱などは大きく傾いていた(現在は修復済み)

廃線の向こうへ走る猫

駅前広場と駅舎

時代を感じさせる駅務室

駅務室に残された古いカレンダー

旧標津線 奥行臼駅 /北海道野付郡別海町奥行16-27~30 Tel. 0153-75-0802(別海町郷土資料館)

1989年の廃線から長い歳月が流れた今も、別海町の広大な風景の中に駅舎や線路が静かに守られています。ホームに立てば今にも列車が現れそうな雰囲気ですが、傾いた木製の電柱や駅務室に残された1986年のカレンダーが、刻まれた時の長さを物語ります。

かつては大きく傾いていたホームの備品も2025年に修復され、往時の姿をより鮮明に感じられるようになりました。線路を辿るように歩けば、不意に現れた猫が茂みの奥へと消えていく……。そんな、物語の一幕のような静寂に出会える場所です。

北海道/旧標津線 奥行臼駅のマップ

3. 宮城県/旧くりはら田園鉄道 若柳駅…鉱山輸送の記憶を今に伝える木造駅舎

駅のホーム

駅のホーム

ホームに残されたベンチ

ホームに残されたベンチ

列車が置かれている

列車が置かれている

かつての鉱山跡にある細倉マインパークの看板

かつての鉱山跡にある細倉マインパークの看板

駅のホーム

ホームに残されたベンチ

列車が置かれている

かつての鉱山跡にある細倉マインパークの看板

旧くりはら田園鉄道 若柳駅(くりでんミュージアム) /宮城県栗原市若柳川北塚ノ根17−1

2007年に廃止された「くりはら田園鉄道」の若柳駅は、1921年の開業時から使われてきた風情ある駅舎が今も残ります。かつては細倉鉱山の鉱石輸送という大役を担っていましたが、閉山や自動車の普及とともに利用者が減少し、その歴史に幕を下ろしました。
現在はミュージアムとして整備され、手書きの駅名標や旧字体の広告が残る木製の長椅子、そしてホームで静かに眠るツートンカラーの車両が、かつてのにぎわいを伝えています。

宮城県/旧くりはら田園鉄道 若柳駅のマップ

4. 岐阜県/旧名鉄谷汲(たにぐみ)線 谷汲駅 …100年の歴史が眠る、郷愁の終着駅

ホームに残る2つの車両

ホームに残る2つの車両

1928年製造の車両

1928年製造の車両

車両内部

車両内部

運転席

運転席

駅の入り口

駅の入り口

ホームに残る2つの車両

1928年製造の車両

車両内部

運転席

駅の入り口

旧名鉄谷汲線 谷汲駅 /岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲徳積1412

2001年に廃止された名鉄谷汲線の終着駅、谷汲駅。ホームには大正・昭和を駆け抜けた2両の車両が大切に展示されています。なかでも1928年に製造された古い車両は、木の床や車体の鋲(びょう)に100年近い歴史の重みが刻まれており、多くの人々を運んだ往時の熱量を今に伝えます 。近年ではプロジェクションマッピングを用いた「星空列車」などのイベントも開催され、歴史ある駅舎に新たな光が灯されています。

岐阜県/旧名鉄谷汲線 谷汲駅のマップ

5. 島根県/旧JR三江(さんこう)線 石見(いわみ)川本駅…廃止後も形を変え、地域を支え続ける場所

青い瓦屋根が特徴的な駅舎

青い瓦屋根が特徴的な駅舎

駅舎内に信用金庫が入っている

駅舎内に信用金庫が入っている

改札口

改札口

臨時列車の掲示板。残念ながら、ここに列車番号が書かれることはもうない

臨時列車の掲示板。残念ながら、ここに列車番号が書かれることはもうない

国鉄時代の匂いを感じる駅名標

国鉄時代の匂いを感じる駅名標

青い瓦屋根が特徴的な駅舎

駅舎内に信用金庫が入っている

改札口

臨時列車の掲示板。残念ながら、ここに列車番号が書かれることはもうない

国鉄時代の匂いを感じる駅名標

旧JR三江線 石見川本駅(レールバイク) /島根県邑智郡川本町川本593-2 ※レールバイクは2026年4月26日以降一時運行中止

2018年に惜しまれつつ廃止された旧JR三江線の石見川本駅。今回ご紹介する路線の中で唯一、私が現役時に乗ったことのある路線です。かつては列車待ちの長い停車時間にホームへ降り立ち、写真を撮ることができたのどかな路線でした 。現在は、青い瓦屋根が特徴的な駅舎の中に地元の信用金庫が入り、駅前はバスの停留所として活用されています 。鉄路としての役目を終えたあとも、レールバイクの体験が行われるなど、この場所は別の形で地域の人々に必要とされ続けています。

島根県/旧JR三江線 石見川本駅のマップ

鉄路が消えても、そこに在り続ける記憶

路線が廃止されれば、かつて列車に揺られて訪れたあの町へ、鉄道で向かうことはもう叶いません 。ホームでいくら待とうとも、次の駅へと続く列車が二度と現れることはないのです 。廃止から月日が流れるごとに、そこに鉄道が走っていたという事実は、人々の記憶から少しずつこぼれ落ちていくのかもしれません 。しかし、かつてこの駅を必要とし、ここで誰かを待ち、あるいは旅立った人々は、確実に存在していました 。
駅としての本来の役目を全うし、今は静かにたたずむ古い駅舎たち。その変わらぬ姿を目の当たりにすると、思わず「長い間、お疲れさまでした」と、心の中で声をかけたくなります 。

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!