わたしのドライブミュージック

卒業目前。堀込高樹が友人との距離を感じた瞬間を思い出す曲〈ASKA / はじまりはいつも雨〉

KIRINJIの堀込高樹さんを形作ったドライブミュージックを4曲紹介!

堀込高樹
2024.03.12

聞き手・構成=張江浩司 / 編集=赤井大祐 / イラスト=若林 萌

2024.03.12

聞き手・構成=張江浩司 / 編集=赤井大祐 / イラスト=若林 萌

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

KIRINJI 堀込高樹さんによる2曲目は、1991年にリリースされ、ミリオンヒットを記録したASKAの「はじまりはいつも雨」。音楽の道を志し、次第に開く周囲との距離をなんとなく感じていたあの頃。学生から社会人への階段を上っていく当時の微妙な心情を語ります。

音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを4曲紹介します。

2. ASKA / はじまりはいつも

今だからこそわかるヒットメーカーASKAの実力

たしか1991年、大学4年生だったんですけど、就職活動にも身が入らなくて卒論だけ残して留年しようかと思ってたんです。その頃、高校時代のバンド仲間と時々会ったりして。田舎なんで、カラオケかビリヤードくらいしかやることなかったんですけど、なんかつまらないんですよ。僕は音楽を続けてたけど、彼らはみんなやめちゃってカラオケのほうが好きで、TUBEとか歌ってたっけな。そんな友人たちとの移動中の車の中で流れてたのがこの「はじまりはいつも雨」で、その集まりが本当に退屈で「もう早くウチに帰りたい」という気持ちと一緒に強烈に印象に残ってるんです。

当時は中古レコード屋でレア・グルーヴと呼ばれるような昔のソウルミュージックや映画のサントラを漁(あさ)るような毎日だったんで、いわゆるニューミュージック的なものに興味がなかったんですけど、改めて聴くとすごく良くできてるなと。自分が音楽を作るようになったからわかる、曲そのものもそうだし、演奏、録音、ミックスも含めて「なるほど」と思うような作りです。

今でこそ、大人になってもずっと音楽を聴いたりバンドをやったりする人も多いですけど、あの頃は違ったんですよね。自分はずっと音楽とか映画、小説に夢中なのに、彼らは現実に向き合ってるというか、「社労士の資格取ろうと思うんだ」みたいな話ばっかりで。あちらからすると「お前、いつまでやってんだよ?」ってことだと思うんですけど(笑)。

キリンジ(※1)を始めるずっと前だし、他に好きなこともないから、音楽以外はやりたくないと漠然と考えてる時期だったんですよ。視野が狭かったというか、見聞を広げようともしてなかった。WAVE(六本木や渋谷にあった当時最先端のレコードショップ)に毎日入り浸ってレコードばっかり買ってて、いつもお金がなかったから。あれはよくなかった(笑)。若いときは知らないことが多いから、どんな音楽も新鮮でした。今は意識して新しい音楽に触れるようにしてます。そうしないと、気づいたらティン・パン・アレー(※2)ばっかり聴いてるみたいなことになっちゃうんで。

※1:2013年以降は「KIRINJI」表記で活動
※2:1973年結成の細野晴臣や松任谷正隆らによる伝説的バンド

堀込高樹

ほりごめ・たかき
1996年実弟である堀込泰行と二人で「キリンジ」を結成。1998年メジャーデビュー。2013年堀込泰行がキリンジを脱退。同年に新メンバーを迎え6人編成バンド「KIRINJI」として再始動し、2021年からは堀込高樹のソロプロジェクトとして活動中。2023年9月にアルバム「Steppin' Out」を、新レーベル「syncokin」よりリリース。2024年5月25日に、メジャーデビュー25周年記念ライブ「KIRINJI 25th ANNIVERSARY LIVE」を東京・LINE CUBE SHIBUYAにて開催。
自身の作品のリリースやライブ活動のほか、さまざまなアーティストへの楽曲提供やドラマ・映画のBGM、テーマソング制作など、活動は多岐にわたる。音楽への深い造詣に裏打ちされたジャンルにとらわれない曲作り、アップデートし続けるサウンドプロダクション、ユニークな視点から繰り出される詞世界は、音楽ファンのみならず多くのミュージシャンや著名人からも支持を得続けている。

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