ドライブ中にこそアイデアがひらめく! 「フロー」な集中力が高まる〈Neil Young / Heart Of Gold〉
精神科医の名越康文さんが、とっておきのドライブソング4曲を紹介!
音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。 今月お届けする4曲の選曲を担当するのは、テレビ・ラジオ出演、文筆業、そして自身のバンド活動など多方面で活躍する精神科医の名越康文さんです。
2曲目
〈Neil Young / Heart Of Gold〉
「ゲート効果」と「うわの空」が無欲な状態を生み出す
僕は大学生の頃からミーハーなロック好きで、恥ずかしながらニール・ヤングを知ったのは4年ぐらい前、50代後半になってからでした。この曲の良さも最初はわからなかったんです。ポール・マッカートニーもニール・ヤングのことをリスペクトしてライブで共演していることも知っていましたけど、ピンとこなかった。ある日、もう一回チャレンジしようと思って聴き始めたら、この曲に出くわしたというわけです。
あまりにもこの曲がすごすぎて、逆に他のニール・ヤングの曲は聴けなくなったくらい(笑)。歌声、コード進行、ギターの使い方、ハーモニカの入り方、バンドの演奏、どれもごくシンプルなのに、すべてにおいて隔絶しているレベルの音楽ですよ。たとえばビートルズの「Yesterday」は万人にわかる美しさがあるけど、この曲の良さはまったく別物。「Heart Of Gold」にはタダでは済まされない静かな狂気がある。僕はTHE BARDIC BAND
というバンドをやっていて作詞作曲もしますけど、まかり間違ってこんな曲を作ることができたら、もう一生それしか歌わないと思います(笑)。
曲のアイデアがひらめくのは、部屋に入る、あるいは出るタイミングが多いです。ゲートをくぐることで異世界にゆく、いわゆる「ゲート効果」というもので、神社の鳥居から蕎麦屋の暖簾(のれん)に至るまで、気分を一新させてくれる効果がある。扉をくぐることは産道から出るイメージにもつながりますから、そこで生まれ直すというかリフレッシュして新しい発想が得られるのではないでしょうか。
運転中には歌詞を思いつくことが多いですね。僕は曲に比べて歌詞には時間がかかってしまうんですけど、運転中の振動のリズムだったり、風景がフッと変わる瞬間だったり、そういうものに触発されて歌詞が降ってくることがあります。これもある種の「ゲート効果」と言えるかもしれない。運転という作業をしながら別のことも考えるという、ある種の「うわの空」状態がいいのかもしれないですね。余計な力が入っていない、無欲な状態。密閉されていて安心もできる、大げさに言えば子宮のなかにも似ているかもしれない。心理学では「フロー」と呼ばれる、程よい集中が続く状態がドライブにはあるんじゃないでしょうか。
名越康文1曲目 精神科医の名越康文が分析、ドライブと相性がいい「ポール・マッカートニーが弾くウクレレ」〈Paul McCartney, Eric Clapton / Something〉
名越康文2曲目 ドライブ中にこそアイデアがひらめく! 「フロー」な集中力が高まる〈Neil Young / Heart Of Gold〉
名越康文3曲目 名越康文が選ぶ、運転中の振動と「バラバラこそのかっこよさ」が絶妙に合う曲〈Junior Wells / Messin' With The Kid〉
名越康文4曲目 名越康文が称える天才、矢野顕子が生み出す豊かな「ゆらぎ」〈矢野顕子+TIN PAN Part Ⅱ / ひとつだけ〉

名越康文
なこし・やすふみ 1960年奈良県生まれ。精神科医、ミュージシャン。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪精神医療センターにて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍中。「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話https://yakan-hiko.com/nakoshi.html」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)https://nakoshisemi.yakan-hiko.com/」配信中。
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